24話
「泥棒王ってなんかカッコイイ二つ名だよね? カルト君」
トールがカルトの背後から質問を投げかける。今は森の中。節くれだった木々の間を淡々と進んでいくトール達三人。足元に生えた青い野花に黄色い蝶が留まり蜜を吸いながら羽休めしている。
トール達の目的地は人気の無いスムール洞窟。カルトは足を止めた。カルトに続くトールとスミレもストップする。
「トール、泥棒にかわりはないぞ……モンスターだな」
カルトが樹冠を見上げるとトール達もそれに従った。木々の枝を伝いモンスターが現れた。
名前はムカーデ。何十本もの足を持ち鋭利な牙で小動物を仕留める。長さ二メートル程の凶暴なモンスターだ。ムカーデは歯をカチカチ鳴らしながらトール達を威嚇しているようだ。
木をガサガサと揺らしながらカルトに猛スピードで接近し口を開き四本の牙で噛み付い――
「フッ、甘いな」
カルトはニヒルな笑みを浮かべムカーデを見つめる。彼の瞳は真っ黒く染まっている。白い部分は全くない。カルトの得意とする呪文『闇目』だった。
その呪文はその黒い瞳で見つめた相手の視力を一分間奪う。
「さすがカルト君!」
とスミレが嬉しそうにカルトを褒める。彼女の頬は微かにピンク色に変わっている。




