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前編

全3話で勢いだけで書いています。

どうぞ宜しくお願いします。



「こちら銀河金融組合! 対象の宇宙船『流星号』、完全に包囲した! 大人しくエンジンを切って投降しろ!」


鼓膜を突き破りそうな大音量の通信が、船のブリッジに鳴り響いていた。

メインモニターに映し出されているのは、どくろマークがペイントされた物騒な重武装の宇宙船、およそ二十隻。


銀河金融組合なんて大層な名前を名乗ってはいるが、要するにただの宇宙海賊だ。

俺たちのような貧乏な運び屋に法外な利子を押し付け、払えなければ船ごと解体して売り飛ばす悪党どもである。


「終わった……俺の宇宙船ライフ、わずか三年で強制終了だ……」


俺、アレンは操縦桿に突っ伏して頭を抱えた。

借金の返済日は明日だったはずなのに、奴ら、容赦なく前倒しで取り立てに来やがったのだ。

しかもこんな、逃げ場のない小惑星帯のど真ん中で。


「アレン、どうしたの? そんなに震えて。寒いの?」


絶望する俺の背中に、ふわりと柔らかい感触が押し付けられた。

艶やかな銀髪を揺らしながら首を傾げているのは、ステラ。

絶世の美少女にして、銀河で最も恐れられる戦闘種族の家出王女様だ。


「寒いんじゃない、怖いんだよ! 外を見ろ、レーザー砲の照準が全部こっちに向いてるんだぞ!」


「外? ああ、あの鉄くずのおもちゃみたいな船のこと?」


ステラはモニターをチラリと見て、フフッと可愛らしく笑った。


「心配しないで、アレン。あんなの、私がデコピン一発で全部宇宙の塵にしてあげる。アレンをいじめる悪い奴らは、一人残らず細胞レベルで消滅させなきゃね!」


「やめろ馬鹿! お前がデコピンしたら、反動でこの宙域の星まで吹き飛ぶだろうが! ここは穏便に話し合いで……」


「ご主人様、本日のダージリンティーでございます。糖分を摂取して、心を落ち着かせてくださいませ」


俺の悲鳴を遮るように、優雅な足取りで現れたのはアイリスだった。

フリルのついた完璧なメイド服に身を包み、お盆に乗せたティーカップを差し出してくる。


「あ、ああ、ありがとうアイリス。でも今はお茶なんて飲んでる場合じゃ……」


「お気になさらず。お茶が冷める前に、外の『粗大ゴミ』は私が処分しておきますわ。ちょうど、新型のマイクロ・ブラックホール発生器のテストをしたかったところなのです」


アイリスはニッコリと微笑みながら、物騒すぎる単語を口にした。

メイドの姿をしているが、こいつの中身は古代の星間殲滅兵器だ。

ブラックホールなんて作られたら、海賊どころか俺たちも事象の地平線の彼方へサヨウナラである。


「掃除のノリでブラックホールを作るな! 俺の船はゴミ収集車じゃないんだぞ!」


「ふはははは! アレン、そんな貧弱な肉体で怯えるのは今日で終わりにしろ!」


今度はブリッジの奥から、白衣を着た長耳の美女が高笑いと共に飛び出してきた。

天才科学者にして、重度の筋肉至上主義者であるエルルだ。


エルルの右手には、怪しく発光する緑色の液体が入った、巨大な注射器が握られている。


「この私が徹夜で開発した『超絶マッスル・ブースター改』を打てば、宇宙空間でも生身で活動できるようになる! さあ、これを尻に打って、お前の拳で直接あの船を叩き割ってくるのだ!」


「なんで俺が宇宙空間で素手で戦わなきゃいけないんだよ! 絶対に嫌だ、その緑色の液体は絶対に血管に入れたくない!」


逃げ回る俺を、エルルが注射器を構えて追いかけ回す。

外には凶悪な借金取り、船内には常識の通じないヤバい奴ら。

俺の胃壁はすでに限界を突破し、キリキリと悲鳴を上げていた。


「へへっ、船長! いい知らせと悪い知らせがあるぜ!」


エンジンルームのハッチが開き、オイルまみれの作業着を着た小柄な男、ザックが顔を出した。

こいつは優秀なメカニックだが、同時に重度の爆発マニアだ。


「悪い知らせはなんだ! 早く言え!」


「敵の親玉の船から、極太のプラズマ砲が発射されそうだ! あと十秒でこっちに直撃するぜ!」


「最悪じゃねえか! じゃあ、いい知らせは!?」


「俺が昨日、この船のエンジンに『自爆スイッチ』を取り付けといたことだ! 今すぐ俺がこの赤いボタンを押せば、敵を巻き込んで超ド派手に大爆発できるぜ! ヒャッハー!!」


「それのどこがいい知らせなんだよ! 押すな、絶対にそのボタンを押すなよ!?」


『警告。敵艦より高エネルギー反応。攻撃が来ます』


船のAIが無機質な声で告げる。

モニター越しに、敵艦の主砲が眩い光を放つのが見えた。


「アレン、危ない!」

「ご主人様、お下がりください」

「ええい、仕方ない! 私が出る!」

「よーし、ポチッとな!」


「お前ら、勝手なことするなァァァァァッ!!」


俺の魂の絶叫が、ブリッジに空しく響き渡った。

その足元で、愛猫のノワールだけが「ニャー」と欠伸をしている。

敵の放つ閃光を見つめるノワールの口から、ダラリと涎が垂れていたことに、俺はまったく気づいていなかった。


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