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大鳳が伝えた物

大鳳が伝えた物


1933年3月。三陸地震に伴う津波により、多くの被害が出ていた。


被災後、本州最東端の地に打ち上げられている大きな船が発見される。

大破した空母と思しき船であった。


穴だらけであり、とても浮かぶ力は無いと思われた。

それが津波に乗って流れ着き打ち上げられたのである。


船首には菊の紋章があり、海軍の艦艇が津波に巻き込まれたと思われた。

海軍に通報したところ、被災した空母は存在しない事が判明した。


津波による被害復旧は進めつつも、海軍が中心となり謎の空母の調査が始まった。

打ち上げられた空母は、内部で爆発が起きた痕跡があり、まだ新しいものと思われた。


艦内は海水に塗れていた事から一度沈没した事は間違いなく、沈没していた艦が津波で打ち上げられた事になる。


調査の結果、俄かには信じられないが未来の戦争中に大破して、現代のこの場所に打ち上げられたという結果が出てきた。

艦内で見付かった文章や文字から判読し、この空母の名前が大鳳であり、日本とアメリカは未来で戦争をしており、1944年6月のマリアナ沖での記録が最後で、おそらくはそこが最後の戦場だったと推測された。


乗員の遺体も残されていたため、丁重に回収され手厚く葬られた。

遺品も回収され個人が特定できる物もあったが、現在存命中であるため当人に通達される事はなかった。


世界的な不況と、それに伴う日本陸軍の大陸への進出。日本は欧米から非難を受けており、アメリカと戦争にいたる懸念材料はいくつもあるように思われた。

アメリカの国力は強大であり、まともに戦って勝てる相手とは思えなかったが、海軍にとっては仮想敵国であり、研究はされ続けていた。

漸減邀撃作戦がそれであり、この空母もその一環で造られたのではと予想された。


海軍は大鳳の船体解析を行い、今後の空母建造の参考にする事にした。

また、艦の内外にあった装備や搭載物も解析された。

電波装置や着艦制動装置に水中探信儀が主な調査対象だった。


打ち上げられている大鳳は不安定な状態であり、本格的調査を行うためにも艦を水平にし周囲を補強する事が決定した。

大掛かりな工事になり、海軍関係の人員が大量に投入された。

それに伴い、被災した地域の復興も進む事になった。


大鳳は情報秘匿のため隠蔽され、外部から見えないように配慮されながら補強工事が進んだ。

最終的には大鳳は全体を建物に覆われ、調査解体作業が行いやすい環境が造られた。


電波装置は電波探信儀とわかり、研究が進む事になった。


機銃弾が見付かり、20mmと13.2mm弾が解析対象となり、今後の航空機は防弾が強化され、20mmや13.2mmでないと対抗できない時代になると推測された。


着艦制動装置は重量がある航空機を着艦させる物と判り、11年後の航空機は昇降機の大きさからも大型になり重量が増す事が予想された。


厚く装甲化された飛行甲板は、高性能化した航空機による爆撃に対応するための物と予想された。しかし反面、格納庫が狭くなり、搭載機数が減ってしまうという欠点も判った。


水中探信儀は現在の物より高性能だと判明し、参考にされた。


兵装も残っており、10cmの高角砲が研究された。


艦橋と一体化した煙突や船体構造も参考になり、今後に活かされる事になった。


大鳳の沈没原因もわかり、被雷によるガソリン漏れとそれに引火しての爆発と判明。換気装置や機能しなかった爆圧を逃がす装置など改善点も見付かった。

本来使われるべき金属が代替品になっている事から、資源が不足している状況で建造された事が判り、戦況が悪化していたと予想された。


大鳳がもたらしたものは多く、新機軸の空母1隻を建造したに等しく、さらに標的艦のような試験も行えたといえた。

日本は大鳳により、11年先の状況を知りえ、技術を得る事ができたのだった。


数年に渡る徹底的な解析や調査が終了した後は、解体が行われた。

解体で出た鋼材は鋳潰され再利用される事になるが、後に建造される大鳳に主に生かされる事になった。費用対効果は悪かったが、大鳳がもたらしたものを考えると、大鳳を復活させたいという気持ちが優先された。

新たに建造される大鳳は、改善点が活かされ改大鳳型ともいうべき装甲空母となる予定だった。



支那事変が起き、欧州で再び戦争が始まり、仏印進駐が行われアメリカの対日感情が決定的に悪化。


そんな中、1940年10月に大鳳は起工していた。

竣工予定は1943年12月であった。

お読みいただきありがとうございます。


大鳳物に挑戦しましたw


誤字修正しました。着艦フック→着艦制動装置


感想でいただいた、装甲空母という新しい空母がまず注目されるはずというご指摘をいただき、改稿しました。主に↓を追記しました。

厚く装甲化された飛行甲板は、高性能化した航空機による爆撃に対応するための物と予想された。しかし反面、格納庫が狭くなり、搭載機数が減ってしまうという欠点も判った。

ご指摘ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
文章も読みやすく、これからが楽しみです。 ゆっくりと読ませてもらいます。
エレベーターのサイズは?零式艦上戦闘機の翼端折り畳みは避けて欲しいカタパルトは?
それ以前に装甲空母という新しい空母だから、まずはそこが注目されるはず。 格納庫にゼロ戦や彗星は残っていなかったのだろうか?
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