厳しすぎる鬼上司と飲んだ翌朝、俺に甘々になっていたんだが!?
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目を覚ますと、見知らぬ天井が目に入った。
……いや、見知らぬどころか、どう見てもホテルの天井だ。
全身に妙な疲労感が残っている。何より、腕に感じる柔らかい感触が――
「……っ!!」
慌てて横を見ると、そこには裸の橘玲奈がいた。
会社のマドンナ的存在にして、俺の直属の上司。
仕事のミスをするたびに、きつい叱責を浴びせてくる、恐ろしい人。
その彼女が今、俺の腕枕で寝息を立てている。
「なんで……なんでこうなった……!」
頭を抱えた瞬間、昨夜の記憶が鮮明に蘇る。
昨日は、会社の飲み会だった。
営業成績の打ち上げと称して開かれた飲み会だったが、俺は素直に楽しめる気分ではなかった。
なぜなら、その日の昼間にまたミスをやらかし、玲奈にこっぴどく叱られたばかりだったからだ。
「佐々木くん、いい加減にして。何度同じミスをすれば気が済むの?」
「す、すみません……」
「謝れば済む問題じゃないわよ。次やったら、ただじゃおかないわよ」
その鋭い目線に、俺は思わず肩をすくめた。
――正直、怖い。橘さんは有能で美しいけれど、俺にとっては恐怖の象徴みたいな人だった。
だからこそ、その日の飲み会ではつい酒に手が伸びた。
悔しさと惨めさを振り払いたくて、普段なら飲まない量をどんどん煽っていった。
そして気づけば――彼女と二人きりでホテルにいた。
「橘さん……ここは?」
ふらふらの頭で、向かいの橘さんを見る。彼女もいつもより顔が赤い。
「まったく、佐々木くんはほんと……見ていられないわね……」
「す、すみません……」
「そうやってすぐ謝る……いい加減にしなさいよね」
彼女は呆れたようにため息をついたが、その頬はどこか熱を帯びていた。
「それにしても……佐々木くん、意外といい体してるのね……」
ふいに、彼女の指先が俺の腕をなぞる。その仕草が妙に艶めかしく感じられて、心臓が跳ねた。
「え……?」
「だって、スーツの上からでもがっしりしてるなって思ってたのよ。まさか、こんなにムキムキだったなんて……」
彼女は、酔った勢いのせいか、ぽつりぽつりと心の内を吐き出していく。その視線は妙に熱を帯びていて、まるで俺を品定めするようだった。
「ま、待ってください橘さん。俺たち、上司と部下で……」
「そんなの関係ないわよ……ねえ、悠真……」
不意に下の名前を呼ばれた瞬間、彼女の柔らかな体が俺に密着する。
「お酒のせい……だけじゃないかも」
彼女の指先が、俺の胸筋をそっと撫でる。その感触にぞくりと背筋が震えた。
「……っ!」
このままじゃまずい――そう思ったのに、彼女の熱っぽい吐息が耳元にかかると、頭の中がじんと痺れるような感覚に包まれた。
「ねえ……キス、してもいい?」
上司にそんなことを聞かれるなんて、ありえない。
けれど、俺の理性はもう限界だった。
次の瞬間、俺は彼女をベッドへ押し倒していた――。
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「う、うそだろ……」
回想を終え、俺は現実に戻る。隣の彼女を見ると、むくりと起き上がった。
しまった――! 俺は即座に布団をかき寄せ、彼女に背を向けた。
「あ……おはよう、悠真」
思わず土下座しようとした俺の肩を、彼女がするりと抱きしめた。
「お、おれ、ほんとに申し訳なくて……」
「何が?」
「えっ?」
怒られるかと思ったのに、彼女は機嫌よさそうに俺を見つめている。
「私は気にしてないわ。むしろ……すごくよかったし」
「は……?」
彼女は妙に色っぽい表情で俺の胸筋を撫でた。
「前から思ってたのよね……悠真、スーツの上からでもすごい身体してるなって」
「え……?」
「昨日、脱がせてびっくりしちゃった。あっちの方もとっても大きくて……すっごく私好み♡」
にっこり微笑む彼女を見て、俺の思考が止まる。
「ちょ、ちょっと待ってください! それってつまり――」
「……悠真」
玲奈さんは俺の名前を甘く囁き、シーツを引き寄せた。
「責任、取ってもらうわよ?」
それから数日後。
俺と玲奈さんは付き合うことになっていた。
最初は困惑しかなかったけれど、彼女の押しの強さに流される形で、いつの間にか恋人関係が成立していた。
「佐々木! 何してるのよ、早く資料をまとめなさい!」
「は、はいっ!」
会社では相変わらず怒られてばかりだったが――
その夜。
「悠真……ねえ、気持ちいい……?」
仕事が終わると、俺は彼女に甘々に迫られる。
仕事では鬼上司、夜は甘えん坊の彼女。
そんなギャップに振り回されつつも、悪くないなと思う自分がいるのだった。