003 ”こんな目”
活動報告にも書かせていただきましたが、次エピソードから毎週土曜日にまとめて更新、という形にさせていただきます。
(もう…痛くない?)
意識を戻したフェリアは、自身を苦しめていた苦痛から開放されたことに気づく。そして少しの間ぼーっとしていたフェリアは、足が自由に動かせることに疑念を抱いた。
(外された?”体を拘束する必要まではなくなった”みたいな?)
考えるのも無駄だなと、次は左手の薬指にはめられた指輪を見る。
(これ、どういうものなんだろう…...?どんな効果があるのか…...)
フェリアは指輪を外そうと試みる。しかし指輪は全く動かない。もっと強い力で外そうと試みるが、全く動かず指輪はそこにいる。
(これも指輪の効果なのかな?リサーチが使えないから何もわからないけど。…はぁ。それにしても嫌だな。)
スナート王国では、”左手の薬指にはめられている指輪”というのは結婚指輪のことである。彼女が嘆いているのはそのことだろう。
しかしそんなことを考えている暇はない。今すぐにでもここから出る方法を考えなくては。そう思考を変えた彼女。しかし、中々案は出てこない。それもそうだろう。フェリアが捕らえられている部屋にあるのは扉、ベッドとトイレぐらいのものであり、他には窓すらない。
フェリアはかすかな希望に縋りながら、ベッドから降りて扉に向かおうとする。しかしそこで、体に違和感を覚える。
(体が”重い”?あとなんか…ちょっと疲れてる。あの痛みのせいだと良いんだけど。)
そんなことを思いつつ、フェリアは扉の前に来る。まずはドアノブに手をかけ、普通に開けようとしてみる。しかし、ドアノブは全く動かない。
ドアノブには鍵穴がついていて、今まで見たことのない四角い形をしている。また、その扉はなにかの金属でできていて、とても力づくで開けられるようなものではない。
八方塞がりとなったフェリアはベッドに戻り、横になる。ベッドというには硬すぎるマットの上で、フェリアは現実から目を背けるために瞼を閉じた。
その状態で5分ほど経ったあと、部屋の前に足音が聞こえてきた。その足音の主は真っ直ぐフェリアのいる部屋に向かってきて、扉を開ける。そこにはフェリアと同い年くらいの白髪の少女と、レリアルがいた。
「こい」
とだけ言い、フェリアの手を掴んでどこかへ歩いていくレリアル。されるがままのフェリアはふと、自身と同じように手を掴まれている白髪の少女の左手を見る。するとそこには、フェリアに付けられているものと同じ、黒い宝石のついた指輪がはめられている。
(この子も私と同じように攫われたのかな)
そうフェリアが考えたとき。辺りの景色は殺風景な白い廊下から、実験室のような場所に変わっている。
部屋には並べられた2つのベッドと、その周りに”実験器具”が大量に置いてある。レリアルはその部屋にいた不健康そうな白衣の男に
「出番だぞ、ガイル」
と話しかけると、部屋に入ってきたところとは別の扉を開け、その奥にある部屋に入っていく。
それを見送った白衣の男”ガイル”は、2人をベッドに横にならせて固定したあと、鋭い小さな刃物を手に取った。フェリアは
「ヒッ」
と小さな悲鳴を上げ、体を強張らせる。フェリアはそのまま横を見て白髪の少女の様子を見たが、少女は声を上げない。代わりに肩がブルブルと震えている。
彼女の様子を見ているとき、フェリアは左手をガイルに掴まれた。そしてガイルは刃物を使い、フェリアの薬指の根本を切断し始める。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
フェリアは感じたことのない痛みによって泣き叫ぶ。
(いだいいいだいいいいだいいいいいあぁぁあぁぁぁぁあぁああああああああ!)
心のなかでも声でも叫んでいるフェリアの薬指は、切断された瞬間に再生している。
切断、再生、切断、再生、切断、再生。ベッドの左手が置いてある部分は血みどろになり、終わりなき痛みがフェリアを襲う。
「ぐぁあぁあああああああああああ!」
あまりの痛みにフェリアはズボンを濡らし、失神する。だがあまりの痛みにすぐ覚醒し、地獄がやってくる。3分間ほどガイルによる切断が続いたあと、一度手が止められる。そして、その魔の手はフェリアの横にいる白髪の少女へと向けられる。
白髪の少女も同じように左手の薬指を切断されるが、声が出せないのか一切声を上げない。代わりに大量に涙を流し、体をよじらせ、必死にもがいている。
少女もフェリアと同じように失禁してしまい、あまりの痛みに体を痙攣させる。脳が必死に痛みを感じさせないようにしているのだろうが、無意味だというように痛みは少女を襲う。またそれが3分間続いた後、ガイルは手を止める。
フェリアは少女への切断が始まる前にすでに意識を失っていて、少女も自身への切断が終わった後に意識を手放した。
次回はちょっと救いがあります。