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呪われ少女  作者: medai
第1章 運命を呪う少女
3/8

002 絶望の始まり

 フェリア・スコットという人間は、俗に言う”天才”である。


 13歳のとき、師匠であるセリス・ホワイトに一般的な魔術を全て伝授された後、冒険者になった。


 その後、2年でCランクという快挙を達成している。Cランクというのは、一般的な冒険者が一生を費やしてやっと到達するランクであり、2年というのは異常な短さだ。


 そんなこともあって、ギルドの中ではかなり名前が知られている。当然、貴族がギルドを通さない依頼をする際にも、必ずと言っていいほど候補に上がってくる人間だ。


 レリアル・フォードも、彼女に目をつけていた人物の中の1人であった。しかし、彼が目をつけていたのは実力ではなく、()()()としての価値である。


 彼が行っている実験というのは、”呪いの指輪”を人間にはめさせ、どんな効力があるのかを試させる、というものである。現時点では、”攻撃されなければ襲ってこないはずの魔物が襲ってくる””痛覚が増す””攻撃・体力・防御力が通常の2分の1になる”ということが分かっている。


 しっかりと磨かれた革靴を履き、貴族の中で流行している赤いコートを着た、貴族にしては痩せ型の男。東領領主である"レリアル・フォード"は、自身のサラサラな金色の長髪を靡かせながら別邸の玄関へコツコツと歩いていく。


 大きな門の前で担架のようなものに乗せられている、左肩から大量の血を流している少女。その少女の短く切り揃えられた明るい茶髪に触れながら、レリアルは言う。


「よくやった。あれだけギルドで持ち上げられているんだ、魔力もかなりのものだろう。リサーチ!ふん、睨んだ通りだな。」


 聖魔術”リサーチ”は誰でも使える簡単な魔術であるため、魔術の鍛錬を積んでいないレリアルでも使うことができる。



フェリア・スコット

体力:1336 

攻撃力:1753

防御力:2257

魔力:8121



 Cランク冒険者のステータス値の合計平均が10000ほどであることを考えると、セリアの魔力はかなりのものである。あまり戦闘で攻撃を喰らっていないことから体力の低さが目立つが、今までの実験体では考えられない数値だ。レリアルは気にしない。

 

 レリアルが今まで実験体として使っていた人間は、奴隷や子供など、ステータスの低い者ばかりであった。強い実験体のサンプルが欲しいということで、最近有名になってきていたフェリアに目をつけたのだ。


 別邸の地下にある、酷く無機質で小さな白い部屋にフェリアを運び入れ、部屋の端にぽつんと置いてあるベッドに下ろす。そこにフェリアの足を括り付けたあと、隣にいるえらく不健康に見える白衣の男にレリアルは浮ついた声で話しかける。


「治しておけよ、指輪は左手に嵌めるからな。」


 無言で頷いた白衣の男は杖を取り出し、魔力を込めていく。聖魔法"ヒール"を何度も重ねがけすると、フェリアの左肩から腕が形作られ、右肩についた傷も治っていく。


「よし、実験は明日だからな。()()しておけ。」


と、満足気な表情で言うレリアルは、そのまま部屋を後にする。フェリアにヒールをかけていた白衣の男も、フェリアの白い首に何やら怪しい黒い宝石の付いたリングをかけ、部屋を出る。








(ん…ここはどこ?たしか、戦闘になったあと倒れて…となると、レリアルに捕まった、ってことなのかな。でも左腕がある。治された?何のために?)


(あれ、動けない!うぁ、足が括り付けられてる。でも魔術を使えばこんなもの簡単に!)


(…?おかしい、魔力は正しい形なのになんで!って、首になんか付いてる?これで魔力を放出出来ないようにしてるのかな。)


 コツ、コツ、コツと足音が聞こえてくる。


(誰か入ってくる。どうしよう、逃げられない。)


 カチャッとドアが開けられると、そこには金髪の男、レリアル・フォードが立っていた。


「目が覚めたのか、フェリア・スコット。お前は今日からここで実験体となってもらう。」


 低く無機質な声で、レリアルは話しかけてくる。レリアルはそのままフェリアに近づき右手でフェリアの左手に触れ、黒い宝石の付いた指輪を()()()嵌めようとする。


 状況が理解出来ていないフェリアだったが、レリアルの手に握られている物がとてつもなくおぞましい物だと言うことは、直感で理解した。


(上半身は縛られてない。動かせる。魔術が使えなくても()()なら!)


「ハァァァ!」


 フェリアの右手は拳の形へと変化し、レリアルの右手首に向かって放たれた。ポスっと音がなり、フェリアの拳は軽々とレリアルの左手に止められる。それを見てレリアルの口は嫌らしくU字に曲がっていく。


 魔術師と言えども、Cランク冒険者である彼女の攻撃力はなかなかの物だ。ただの貴族であるレリアルに止められるはずは無かった。()()()()()()()()()()


「なんで!?」


 フェリアは思わず声を上げる。そして、脳内に1つの考えが浮かぶ。


(もしかして、この首輪は魔力を放出させないだけじゃなくて、ステータスも下げる?こんなもの作れるはずがない。だってその2つは全く別の形の魔力を使うから、同時にエンチャントできるはずがない!)


 そうフェリアが動揺した瞬間、レリアルに左手を強い力で握られる。その強い力とは裏腹に、まるでプロポーズのような体勢で、レリアルは薬指に指輪を嵌めてくる。その瞬間、


「うがぁぁぁぁぁぁ!」


フェリアは叫ぶ。


「実験で死ぬ命ではあるがな、楽しませてもらうぞ。ハハッ!」


レリアルはそう言い放ち、フェリアが叫ぶのをニヤニヤしながら眺めている。


「アァァァァァァァァ!」


自分の内側から大切なものが抜けていく感覚。


「づぁぁぁ!」


全ての内蔵を直接揉まれるような感覚の次に、1つ1つの骨が砕けていく感覚に襲われる。


「カヒューッ、カヒューッ」


 と、声を出す余裕すらなくなってきたフェリア。あまりの痛みに体を動かそうとするが、手は掴まれ、足は拘束されている。見た目はなにも変わっていないはずなのに、フェリアの中の”何か”が変わっている。


 様々な感情がフェリアの中で渦巻く。


(なんで?)(どうしてこんな目に)(たすけて)(苦しい)(こんな痛いぐらいだったら死なせて)


そう思ったあと、フェリアはまた意識を失った。






 


まだプロローグです。

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