70.魔獣園の中を駆け巡った衝撃的な出来事(前半グーちゃんと親分コケコ視点、後半隣の森の魔獣視点)
その日の夜、衝撃的な情報が、魔獣園の中を駆け巡った。それはもちろん我らの元へも届き。
『兄貴!!』
『分かっている!! まさか先に奴が動くとは!!』
『ドタバタがあった後で、ちょっと気が緩んでいたか』
『我もアルフと共に、魔獣園の中を歩いたことで、気を抜いてしまっていた。そこを突かれてしまった!!』
『これは他の魔獣達も、続々と動き出すんじゃないか?』
『ああ。もちろんそうだろう。とりあえず、どんな状況で今回の話しが進んだか、しっかりと確認をし、この後の対策を取らなくては。おい、今回の状況を知る者を呼べ! まずはミーからだ! 奴の1番の親友だからな。だが、もう他に取られている可能性もある。ミーがダメならば、誰でもいからどんどん呼べ!!』
『分かった!! まったく、これからどうなるのか』
『アルフの両親の考えも気になる。きっとブルーノから、我らのことは伝えられたはずだからな。が、今は今回の状況を知ることの方が先だ!』
まったく、ウササめ。我を出し抜くなど。しかし起こったことが事実ならば、できる限り、すぐに動かなければ。
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『親分、大変です!!』
『煩い!! 我にも聞こえたわ!! くそっ、ウササめ!!』
『親分!!』
『そっちも聞こえた!! 奴ではないが、お前達もすぐに、今回の事態について知っている者を呼べ!!』
『『『はいっ!!』』』
皆が各方面を見て、すぐに今回の事態を知っている者はいないか、声をかけ始める。これ以上遅れをとってたまるか。他の魔獣達が動き出す前に、我も動かなければ。
しかし、今回はぜんぜん情報が回ってこなかったな。いつもならば、こういった事はすぐに、我らに伝えられるはずなのだが。それだけウササが上手く動いたということか?
だがそれにしたって。ここまで決まるのが早すぎる。アルフの親は、どうして許可を出してしまったのか。まったくこれだから魔獣の、我々の気持ちが分からない者は!
ここからどれだけ早く動くかが鍵になってくる。それには今回起こったことを、しっかりと知った上で動かなければ。
今回のことで、契約するん時の順番が、完璧に決まったわけではない。とりあえずの約束がされただけだ。順番が決まっていないうちに、まずは我も約束だけは取り付けなければ。
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(隣の森)
『皆準備はできたか?』
『はい!!』
『採り過ぎていないだろうな。全てを採って渡すのはダメだ。アルフは大変と言いながら、それでも魔獣達のためと言って、頑張ってくれているのだからな』
『10ずつ用意しました!!』
『いつも25くらいずつ採って行くからな。この数でちょうど良いんじゃないか』
『そうだな。それくらいで良いだろう。次に、アルフにとって、危険な物は排除したか? それとこっちに関しても、排除しすぎてはいないだろうな? 父親と母親が、アルフに危険を教えるために、少しは残しておかなければ』
『毒草の群生地帯があったわ。アルフが入る場所ではないけれど、一応排除しておいたわよ。他に種が飛んでも困るしね』
『ああ、助かる。毒草が生えていたのか?』
『ええ。ここでは見ないはずの毒草がね。これについては後でゆっくりと話すわ』
『ああ、そうしてくれ。見ないはずの毒草、これは問題だ』
俺はこの森を収めているペガサスだ。この森で暮らし始めてどれだけ経ったか。俺は今、森の魔獣達を集めて、明日の確認をしている。魔獣園にいた小鳥から連絡が来たんだ。明日、ここへアルフが来ると。
そのため俺達は、アルフが快適に過ごせるよう、俺が指示を出し、皆に動いてもらっていたのだが。
俺は今回アルフに、出来る限りのことをしてやりやと思っている。まぁ、アルフが森へ来る時も、いつもこんな感じなのだが。今回はいつも以上に力を入れているのだ。
それは何故か。この前のワイバーンのことが関係している。あの時、我々の森に突如現れたワイバーン。もちろん俺達はすぐに動こうとした。ワイバーンがアルフの元へ行ったら大変だからな。
しかし俺達はワイバーン達を止める事ができず。俺達の知っているワイバーンと違う動きをした奴らは、俺達が止める間もなく、魔獣園へと向かってしまい。何とかアルフも家族も無事だったが。まったく森を治める者として情けない。
そのため今回アルフが来ると分かり、もちろんあのワイバーンのことを、許してもらおうとは思っていない。が、少しでもアルフが森を楽しんでくれればと。すぐに俺達は行動に移した。
アルフ達はマツボックとカーキを採りに来るらしい。その他の木の実も。だから少しそれの手伝いとして、マツボックとカーキを10個ずつ。そして少々の木の実も集めた。
全て集めてしまうと。大変でも何だかんだ、採るのを楽しんでいるアルフが、がっかりしてしまうかもしれないからな。だから少々集めただけにとどめたのだ。
それとアリフにとって、危険な物も排除した。怪我や病気、状態異常になるといけないからだ。がこちらも、両親がアリフに危険を教えるため、少しそのまま残してある。
だが、彼女が毒草の群生地を見つけ排除したらしい。アルフが帰ったら、しっかりとその場を調べなければ。それが森中に広まったら、アルフにとっても危険だが、俺達にとっても危険になってしまう。
『ねぇ、明日はあの子達どうするかしら』
『はぁ、あいつらか。あいつらはいつも通りだろう。魔獣園にいるウササに負けるな、とな』
『暴走しないと良いけれど』
『それは他の魔獣も同じだろう』
『あの子達は特にでしょう? それでアリフが困るようなことが、あっちゃいけないわ』
『それはもちろんだが、お前はどうするんだ?』
『私? もちろんアピールするに決まっているでしょう? あなただってそうなんだから』
『向こうで暮らしていない分、俺達の方が不利だからな。アルフが来てくれた時に、出来るだけアピールしないといけないだろう』
『負けないわよ』
『こっちもな』
そんな会話をしていたが、まさか向こうであんな事が起こっていたとは。まったく、そういう大事なことこそ、しっかりと伝えにこなければいけないだろうに!!




