49.何故あの魔獣達が!?(前半***視点、後半ぐーちゃん視点)
なるほど、ここまで離れて、ようやく半分の広さを確認できる、か。確かにかなりの広範囲だが、俺が聞いていた話し以上だ。まさかここまで広いとは。この中にどれだけの戦力が揃っていることか。しっかりと確認できれば楽だが、それも簡単にはな。
なにしろここを管理しているのは、フェイビアン・エドガーと、フェイビアン・シャーナだ。少しでもおかしなことがあれば、すぐに気づかれてします。
それにあの魔獣園には、色々と仕掛けがしてあるようだからな。ちょっとやそっとの対策では、それでも気づかれてしまうだろう。
他にも問題が。エドガー達も問題だが、魔獣園で働いている者達も問題だ。何しろ外から見れば、ただの魔獣を飼育しているだけのように見えるが、実はそうではない。皆かなりの力を持っており、もし奴らと戦うことになれば、俺1人では太刀打ちできないだろう。
まぁ、全部じゃなくとも、少しでもどんな魔獣がいるか、分かっただけ良い方か。あそこから何とか、魔獣達を奪う事ができれば。
しかしそろそろ俺も戻らなければ。彼の方への報告と、次の任務が待っている。だが、このまま何もしないで帰るのもな。せっかくここまで来て、ほんの1が月だったが、ここの事を調べていたんだ。最後くらい何かを仕掛けても良いだろう?
そうだな、人や魔獣達と敵対している魔獣をけしかけてみるか。それも弱い魔獣じゃあつまらない。どうせなら、まぁまぁくらいの魔獣の方が、奴らも楽しめるだろう。それに合う魔獣は何だ? 今俺がすぐに呼ぶ事ができ、そして、今の条件に合う魔獣……。
……はははっ、良い魔獣がいるじゃないか。実験で生み出してきた、あの魔獣達が。数匹奴らに消されても問題はない。よし、奴らにしよう。
誰にも見られぬよう、俺はすぐに森の中に入り、近くに誰もいない事も確認する。今顔を見られるわけにはいかない。何しろ俺には、まだまだやる事がいっぱいだからな。
「よし、ここならば良いだろう」
少し開けた場所まで移動して来て、全ての確認が終わると、俺は奴らを呼ぶ準備を始める。準備はすぐに終わり、あとは奴らを呼び命令をするだけだ。
「……出でこい」
呪文を唱え魔法が発動すると、目の前の地面に黒く光る円が浮かび上がり、更にその中から、ある魔獣が3匹出て来た。よし、問題はないようだな。黒い光りが消えると、一斉に魔獣達が鳴き声を上げる。
「煩いぞ、お前達。そう今から騒ぐな。これからお前達は、好きなだけ動けるんだからな。良いか、これから俺のいう通りに動くんだ」
俺は魔獣達に命令をする。あの魔獣園を襲うように。すぐに飛び立つ魔獣達。俺はそれが飛んでいくのを確認し、自分は帰る準備を始める。本当はどう対処するか見て行きたい所だが、本当に時間だ。これ以上遅れるわけにはいかない。
「まぁ、大した被害は出ないと思うが、少しでも楽しんでくれ」
俺は転移魔法を使い、その場から離れた。
*********
『ん?』
『どうした?』
『いや、何か変な感じがしたんだが』
『そうか? 俺はしなかったが』
他にも聞いてみるか。我は大きな声をあげ、他の魔獣達にも聞いてみた。グリが何も感じなかったように、我の気のせいだと言われれば、そうかもしれないが。
それでも、ここにはアルフがいるからな。少しでも気づいた事があれば、確認をしておかなければ。
すぐにたくさんの魔獣から返事が返ってきた。そう、我のように力のある魔獣達から。最初の答えたのはコケコだった。
『コケー!! コケコー!!』
そうか、やはり一瞬だったが、変な感じがしたか。
『ヒヒーンッ!!』
なるほど、あちらでも感じたか。
『グアァァァッ!!』
やはりそうか。続々と我の問いに答える魔獣達。皆やはり一瞬だったが、変な感じがしたようだ。全く、皆変な感じがしたというのに、グリが気づかないとは。弟として全くなせけない。
だが、それにしても、あの変な感覚はなんだ? 一瞬で消えてしまい、確認をする暇もなく。だが確認はできなかったが、どうにも良いものようには……。
そのことも聞こうと思い、また質問しようとした我に、別の魔獣から連絡が来た。どうも魔獣が迷子になったらしい。なんで迷子になんかと思いながら、誰が迷子になったのかと聞き返せば。迷子になったのはモルーだった。
何でまた、1番迷子になりやすい魔獣が、迷子になどなったんだ。絶対に広い場所を歩かせれば、迷子になるのは分かっていて、注意していただろう。モルー達が遊んでいる時は、必ず人間が多めの側にいたはずだ。
『ピピャアァァァ!!』
何? そうなのか? どうも迷子になったのはアルフと仲が良いモルー達らしく、アルフもモルーの捜索に参加しているというのだ。まったく、アルフに迷惑をかけるなど。
しかし、見つかるだろうか? なにしろ小さいし声は聞こえないしで、1度居なくなれば、探すのがかなり大変な者達だぞ。
もしも探しても見つからず、そのまま捜索が打ち切られれば。アルフと仲の良いモルー達だと言ったからな。アルフはかなり悲しむんじゃないか?
どうにか見つけられないだろうか? そうだな、この魔獣園から出て、隣の林と森に住んでいる魔獣達に。エドガー達も探しているが、そちらでも探してもらうか。全員で動けばもしかしたら。
そう考えていた時だった。それは突然、向こうの森から現れたのだ。
『兄貴!!』
『分かっている!! が、なぜ奴らがここに居る!!』
この辺りには生息していないはずの魔獣だ! 何故奴らがここに居る!! しかも奴らはこちらに向かってきているではないか!!
『気づいている者も多いいだろうが、他の魔獣達に伝えろ!! ワイバーンが現れたと!!』
すぐにそこら中の魔獣達が鳴き始めた。そしてそれに続き、他の魔獣達も鳴き始め。
我はすぐにアルフの位置を確認する。アルフは……、シマウのとことか。あそこにいるシマウのリーダーならば大丈夫だとは思うが。しかし万が一ということもある。我はすぐにシマウに伝える。もしもの時は我も攻撃すると。




