41.臭い泥の匂いを追って、そ、そんなぁ!?
『ガアウァ、ガウニャ』
「そうだな。では坊っちゃま、次はどうしましょうか? クタはこのまま匂いを辿って行こうと言っていますが」
匂いがとれた僕達。次にやる事を決めないと。うん、せっかく芋虫さんにお兄ちゃんモルー達が進んだ方向を聞いて、それに匂いもしっかりしているから、このままどんどん匂いを辿って行った方が良いよね。
「クタさん、においおねがいします!!」
『ガニョ!!』
すぐにクタさんが匂いを嗅いでくれて、お兄ちゃんモルー達の捜査再開です。お兄ちゃんモルー達の匂いと臭い泥の匂いで、さっきまでよりも匂いがしっかりだって。一応周りも確認するけど、僕達はさっきよりもどんどん進んで行きます。
それでね、僕クタさんの後をついて行きながら、ブルーノおじいちゃんに聞いてみました。何でお兄ちゃんモルー達は、ミニミニ森に入って来た方じゃなくて、反対側に進んじゃったの? って。
だって入って来た方に戻れば、道具の小屋に戻れたでしょう? そのままお家の小屋にも帰れたかも。
「ああ、それでしたら。モルーはきた方向を忘れてしまうのですよ」
忘れる? ブルーノおじいちゃんがモルーのお話しをしてくれます。それでね、僕、モルーはよく迷子になるって知っていたけど、モルーがこんなに忘れん坊だったって知りませんでした。
モルー達は、モルー達のお家くらい狭い場所なら、迷う場所がないし、どんなに移動しても、端っこから端っこまでがよく見えて、歩く場所もそんなにないから、絶対に迷うことはありません。
時々僕と遊ぶ、ちょっと広い場所も。僕は見えなくなるほど遠くにはいけないから、みんな僕を見て戻って来たり、パパ達を見て戻って来たり。他に移動する時は、柵をぐるぐる同じ方向に歩くだけだから、迷子になりません。
でもそれ以上長く移動する時は、みんな1列に並んで、前のモルーのおしっぽを噛んで、そのまま列をバラバラにしないで、まっすぐに歩いて行くんだよ。そうすれば、みんな別の方向へ行かないから、迷子にならにでしょう?
ただ、柵の中みたいに1周して、元の位置に戻れれば良いんだけど。ずっと歩けちゃう場所で、しかも周りがよく分かっていない場所だと。どんどんまっすぐ歩いちゃって、止まらなくなっちゃうんだって。
あんまり進みすぎたら、後ろに戻れば良いのに、それができなくて。そのまま自分達がどこを歩いているか、完璧に分からなくなって、迷子になっちゃうみたい。
だから自然で暮らしているモルー達のお家は、辺にいっぱいあるんだけど、迷子になって帰って来られなくなって、空のお家がいっぱいなんだって。
そしてもしも途中で止まって、一応帰ろうと思っても。自分達がどっちから歩いて来たか、ぜんぜん覚えていないから、それでまた別の方向へ歩いて行っちゃって、またまた迷子に。
だからお兄ちゃんモルー達も、どっちの方向から、あの臭い泥の場所まで来たか忘れちゃって、反対の方向に歩いて行っちゃったんじゃないかって。
「ぜんぜん、わからない?」
「そうですね。前にモルーの小屋や、いつも坊っちゃまと遊ぶ柵の中ではなく、外を歩かせてみたのですが、歩かせた全員が迷子になりかけました。私達がいなければ、迷子になっていたでしょう。それに、魔獣達がそのような事を言っていましたから」
「みんなまいご……」
『ガウアウ、ガニョウ』
「ふぉ!? モルーじゃなくて、マイモー!?」
あのね今クタさんは、魔獣さん達がモルー達の事を、なんて呼んでいるか教えてくれたんだけど。迷子の『まい』と、モルーの『モ』と『ー』で、マイモーって呼んでいるって。モルーじゃなくてマイモー。あんまり嬉しくないお名前。
みんなに迷子にならないように、誰かが歩き方を教えてあげたらダメかな? 歩き方を教える……。どうやって教えるか分からないけど。
マイモーのお話しを聞きながら進んだ僕達。今までで1番長く歩いています。他の魔獣さん達の柵の前や小屋の前を通ると、みんながどうしたのって聞いてくるから、お兄ちゃんモルー達のお話しを、クタさんがささっとしてくれて。それからモルーが通らなかったか聞いて。
でも誰も、お兄ちゃんモルー達を見ていませんでした。臭いとは思っていたけど。
そうしてかななり歩いて、僕達はこの前遊んだ、シマウの小屋がある近くまで歩いて来ました。でもね、その時突然クタさんが止まって、それから周りをウロウロ。そのあとボソッと。
『ガニョウ……』
匂いが消えたって言ったんだ。何で? だって今まで凄く臭かったから、どんどん歩いて来られたでしょう? どうして急に匂いが消えちゃったの!? 僕はちょっと慌てちゃうます。
「坊っちゃま、落ち着いてください。今色々確認をしますから。本当に匂いが消えたのか?」
『ガウア!! ガウアウ、ガニャア!!』
今のは、本当だ!! 本当にこの場所で、完璧に匂いが消えてしまっているんだ!! って言ったんだよ。
「においない、どうしよう!!」
「周りを確認してみましょう。それから……」
ブルーノおじいちゃんがお話しをしている時でした。僕達は今、サイに似ている魔獣さん、サーイさんの小屋の前に居たんだけど。サーイさん達が柵ギリギリまでみんなで寄って来て、僕達に話しかけてきました。
『グオォォォ、グオォォォ?』
今のは、どうしたんだ、そんなに慌てて? って言ったんだよ。すぐにクタさんがサーイさん達に、臭い匂いの事を話してくれます。そうしたらサーイさんが。
『グォ、グオォォ、グオォォォ』
『ガウアッ!?』
え? え? お掃除? 今ねサーイさんは、昨日の夕方、あんまり臭かったから、何とか仕事をしている人に臭いって事を伝えて。あの特別な水を使って、この辺を綺麗に掃除してもらった。今は前よりもサッパリだぞ。そう言ったんだよ。
「まさか、こんな時に」
『ガウアウ、ガウニャ……』
クタさんが、いつもは訴えても、なかなか理解してくれないのに。どうしてこんな時ばかり、こちらの言っていることが伝わるんだって。
特別なお水、お掃除、匂いはサッパリ。サッパリ……。大変!?