38.私の秘密(前半ブルーノお爺さん視点、後半アルフ視点)
『うっ!』
「大丈夫か?」
『ああ、なんとか。だがこれ以上は無理だぞ』
「分かっている。それじゃあ外にでしょう」
小さな森を、坊っちゃまが待っている場所へと歩き始める。
『おい、一応確認はするが、おそらく向こうの匂いもあそこへ続いているぞ。それと匂いが混ざった箇所があった。あそこで合流したんだろう』
「ということは、あの匂いの動きを考えると。まずモルー小屋からは全員で出て、あの道具小屋でおもちゃで遊んだ後、1匹は穴から外へ。それを追って、他の面々が窓から外へ。穴から出た者は一直線に森へ。他の者達は一直線で進んだ者を探しながら移動したために、あのようなギザギザ歩きになった」
『そして最後はあの泥の所で合流か』
「おそらくそうだろう」
『はぁ、匂いに負けて出てきてしまったが、この後探すのに、もう少しあそこを詳しく調べなければ』
「とりあえず最初は一緒に、向こうの匂いを辿ってあそこへ。その後は一応周りを確認したら、先に外へ出ていて良いぞ。その時坊っちゃまも外へ出るとおっしゃったら、共に外へ」
『最後まで一生懸命探すんじゃないか? さっきも鼻を摘みながらも、頑張って返事をしていたし。それにモルー達と約束していたからな。必ず見つけてくると』
「はぁ、それが問題だ。もし見つからなかったら? 見つかったとしても見せられない状態だったら。もしそのような状態ならば、まだ見つからない方がいい」
『いなくなって大体まる1日と少しか。ご飯を食べなくともまだ大丈夫な時間だな。まだ生きているだろう。上手くいけば救出できる。できる限りのことはするさ』
「ああ、頼む。私もできる限りのことを」
『それにしても、アルフは自分と同じように、お前が魔獣の言葉がなんとなく分かると知って、嬉しそうだったな。なにしろ今までは、魔獣達に何を言われても、全く分からないエドガーが側にいて、本当か? と。いつも分かってもらうのに時間がかかっていたからな。まぁ、言葉は仕方ないにしても、俺達が何とか伝えようと、動きで伝えていても気づかないが』
「はぁ、旦那様は昔から魔獣だけではなく。人にも鈍感だったからな」
『シャーナはなんとなく、魔獣達の気を汲んで動いてはくれているが、やはりアルフの言うことには、あら、そうなのね、で終わりだからな』
「普通の人間は、魔獣の言葉が分からないのは当たり前のこと。仕方がないのだが」
『だからアルフは嬉しかったんだろう。これでたくさん話しができると。まぁ、お前の場合は、なんとなく分かるんじゃなくて、普通に会話できるんだけどな』
「……坊っちゃまに言うんじゃないぞ。時期を見計らって、伝えるつもりなのだから」
『分かっているさ。だから他の魔獣達も、アルフにお前のことを話していないだろう。俺だってそうだ。だが、今から楽しみではあるな。しっかりとアルフと話しができる日が来ることを』
「その時になれば、しっかりと坊っちゃまを導かなければ」
『俺は契約してもらうのを、今から楽しみにしている。順番がいつになるか分からないし、してもらえるか分からないが』
「おそらくあの者達が最初に手を挙げ、契約をするだろうからな。お前はかなり後にあるのでは?」
『……今からもう少しアピールしておかなければ』
「さぁ、外へ出るぞ。これからも坊っちゃまが指示を出せるように、私達が坊っちゃまを導くぞ」
『ああ』
そろそろ向こうが見えてきた。坊っちゃまは私に言われた通り、しっかりと同じ場所で待ってくれている。と、私は不思議に思ったことを聞いてみることに。
「お前、名はあれでよかったのか? クタと。もっとカッコの良い名前があるだろう」
『ああ、クタで良いんだ。変わった名の方が、覚えていてもらえそうだからな。さっきも話していたようにライバルは多いから、少しでも目立たないと』
「ああ、それでクタなんて名前に」
『それに覚えやすいだろう?』
*********
少ししてブルーノおじいちゃんとクタさんが、ミニミニ森から出てきました。あ~あ、クタさんが凄い顔。目と目の間がしわしわ。それにおでこもしわしわに見えるし。とっても臭かったんだろうなぁ。くさ? くさー!?
僕、お帰りなさいって言う前に、くさー!! って言っちゃいました。ミニミニ森の近くにいるだけで臭いのに。もしもミニミニ森の匂いを辿って行った所にあれがあったら? たぶんあると思うけど。その近くに行って戻ってきたら、もっと臭くなるに決まってるよね。
『ピピピッ!?』
リアも臭い!? って。それから、ポケットでもダメだったって、ポケットの中でうんうん唸っていました。
「く、くしゃ、におい、あちゃ?」
「はい、向こうまで匂いは続いていましたよ。これからもう1つの匂いを確認しますが、どうしますか? やはりここで待っていますか?」
あっ、そうか。臭くて忘れてた。今ブルーノおじいちゃん達が、モルー達を連れてきていないってことは、みんなここに居なかったっていうことだよね。だって居たら救出してくれるもん。そうしたらもう1つの匂いは確認しなくて良いし。
う~ん、あれに近づく? 本当は嫌だけど、でもみんなのために頑張らないと。
「いきましゅ!!」
「では皆で行きましょう」
もう1の匂いの方へ移動して、ミニミニ森に入っていきます。うっ、やっぱり臭い。でも気にしない気にしない、頑張って入る、頑張って入る!
僕はもっとギュッと鼻を摘んで歩いていきます。でも口から匂いが入ってきて、やっぱり臭いんだ。
「リア、だじょぶ?」
『ピピ……』
話しかけないでって言われちゃいました。ごめんね。
ゆっくりゆっくりミニミニ森を進んでいきます。そうしたら少しして、向こうにあれが見えたんだ。あのね1箇所だけじゃないんだよ。小さいけどあっちにもこっちにもあって。それを踏まないように気をつけて歩かなくちゃいけなくて。
「坊ちゃん、着きましたよ」
踏まないように気をつけていたら、いつの間にか匂いの場所に着いていたみたい。下を見ていた僕は顔を上げます。そうしたら……。




