表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/118

37.匂いはミニミニ森へ

 リアが戻ってくるまでに、クタさんの匂いの確認が終わりました。小屋の中を隅から隅まで匂いを嗅いで、2回確認したんだよ。そうしたらおもちゃの箱とその周り、それから入ってきた隙間以外に、新しい匂いを発見しました。


「こっちぃ?」


『ギャウニャウ』


 クタさんが歩いて行ったのは、みんなが入った隙間がある方と反対側。そこに木が腐って空いた、10円玉くらいの穴があって、そこを前足で指しました。でもその後すぐに、上の窓も前足で指したんだ。


「ん? どっち? このあなじゃない?」


『ガウアァ』


「どっちも?」


 どういう事? 僕が考えていると、ブルーノおじいちゃんが穴と窓を確認。確認しながら、魔獣は基本的にこの小屋には来ないけど、一応魔獣園にある全部の小屋を確認しないとダメだな、とか。魔獣小屋の方も隅から隅まで確認しなければ、とか。色々ブツブツ言っていました。


「ブルーノおじいちゃん、どうしてにおいが2つなのかなぁ?」


「そうですね。1度外へ行ってみましょう」


 みんなでぞろぞろ小屋の中から出たら、隙間じゃなくて穴の方へ移動。それでクタさんに匂いの確認をしてもらったら、なんと今度は、モルー達の匂いの線が2本あったんだ。10円玉の穴から1本と窓から1本。


 だからまず10円玉の穴の匂いを辿っていくことに。匂いを嗅ぎながら周りも確認。どんどん歩いていきます。モルーの小屋から荷物をしまってある小屋までよりも、もっともっと歩いたよ。それでついた場所は、木と草がいっぱい生えている所でした。


 あのね魔獣園には、森みたいに大きくないけど、背の低い木や草を花を植えて、小さな小さな森みたいになってる場所があるんだ。えとねぇ、小さな畑と同じくらいの小さな森なの。低い木がなかったら、僕が止まらずに走れちゃうくらい、小さな森だよ。


 この森は、小さい魔獣さん達用の小さな森なんだ。あのねぇ、タートと一緒。本当は森に住んでいる小さな魔獣さん達は、小さな小屋に住んでいて。そこには草や花を少しだけ植えています。でも木は……。

 いくら低い木でも小さな小屋に木を植えちゃったら、小屋が狭くなっちゃうし、動きづらくなっちゃうでしょう?


 でもタート達が泥を付けないといけないみたいに、木や花や草を使わないといけない魔獣さん達がいて。そういう魔獣さん達のために、小さなミニミニの森を作ってあるんだ。

 木に体を擦り付けたり、木に登って日向ぼっこをしたり色々だよ。このミニミニの森、みんな大好きなんだ。僕も遊べるから好き。


 そのミニミニの森に、10円玉の穴から匂いは続いていました。


「く、くちゃあ。ここにぃ、ほんちょ、いおいぃ?」


『ガ、ガウアァ』


「これは……。離れてもう1つの匂いを辿ってみましょう」


 鼻を摘んだまま僕は、急いでミニミニ森から離れます。ふう、臭かった。あの匂い、あれの匂い? 


 僕達が小屋に戻ると、ちょうどリアが戻ってきました。急に目の前に現れたんだよ。それでブルーノおじいちゃんが手を出すと、その手の上にクルクル巻いてある紙を落としたリア。その後僕の頭に乗ってきたんだけど。


『ピピピッ!?』


 くさっ!! だって。少し匂いが付いちゃったみたい。ごめんね、でも仕方ないの。どうしてもあそこ行かなくちゃいけなかったから。

 僕の頭の上はダメだと思ったのかな? クタさんとブルーノおじいちゃんの頭にも乗ったリア。でも全員臭かったみたい。全員臭いなら、僕の頭が良いって、僕の所へ戻ってきたよ。


 リアの匂いチェックが終わって、クタさんがもう1つ、窓の匂いの確認を始めます。臭い匂いのせいで、さっきよりも匂いを確認しにくいみたい。でもしっかりと匂いを嗅いでくれました。


 それでね、ちょっと今までと違うことがあって。今まではピンッと真っ直ぐな匂いの線だったんだけど。今度はジグザクの匂いの線だったんだ。斜め右に進んで、少し進むと左斜めに進んで。それを何回も繰り返していました。


 そしてそのジグザクの匂いの線を辿って行くと、またあのミニミニ森に着いたんだ。僕は鼻を摘みます。リアも翼でお顔をおさえて、臭いってやってるってクタさんが。クタさんも鼻を前足で何回も拭いていました。


「クタ、匂いはこの森の中に?」


『ガ、ガウアァ』


「中に入れそうか?」


『……ガルゥ』


「そうか。坊っちゃまとリアはここで待っていてください。私とクタで中へ……」


「ぼくも、いく」


「ですが中へ入れば、もっと臭くなりますよ」


「だいじょぶ、ぼく、がんばりゅ。ちゃんとしゃがしゅ!」


 鼻を摘んでいるからうまく話せません。でもちゃんと僕も探さないと。だってモルー達と約束したんだもん。絶対に探すって。

 それにお兄ちゃんモルーもちーちゃんも、他の迷子モルーも、今泣いてるかも。僕も迷子になったら泣いちゃう。だから探してあげないと、臭いのは我慢する!!


「分かりました。ですがダメだと思った時は、今いる場所に戻ってきて待っていてくださいね。何処にも行ってはダメですよ」


「うん!!」


 だって勝手に何処にも行かない、パパとお約束だもんね。僕が行くならリアも行くって。でもリアは少しでも匂いがしないように、僕の洋服のポケットに完全に入っちゃいました。


「とは言いましたが、最初坊っちゃまはここでお待ちを。先に向こうの匂いから確認して。その後、こちらの匂いを辿る時、一緒に中へ」


「うん!」


 ブルーノおじいちゃんとクタさんが、ミニミニ森に入って行きます。ミニミニ森の木の高さは、ブルーノおじいちゃんの背より、ちょっと高いくらい。ね、低い木でしょう? 

 でもしっかりとした木だから、枝もしっかりと伸びていて、葉っぱもいっぱい。ミニミニ森の中に入ると、ブルーノおじいちゃんとクタさんが見えなくなりました。


「リア、くしゃいねぇ」


『ピピ』


「なんでこんにゃ、くしゃくなっちゃうにょかにゃ~」


『ピピ』


「でも、がんばってさがしゅ」


『ピピ』


「もしかして、ありぇに、はいっちゃったかにゃあ」


『……』


 僕の話に全部うんで答えていたリア。最後はないも言わなくなっちゃいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ