36.匂いは一直線? 小屋へ続く匂い
クタさんに匂いの続いている場所と、周りの匂いを嗅いでもらう僕達。クタさんは僕達よりも少し先に進んで、それから戻ってくると、少し待っていてくれって。それで周りの匂いを確認んしたんだけど。
確認が終わって戻ってきたクタさんは、行き先が分かったって。もう分かったの!? 凄い凄い!!
『ガウアァ、ガウゥゥゥ、ガアウァ』
「ん? まっすぐ? ちょっともまがらずに、まっすぐ? だからわかりやすい?」
今クタさんは、ただただ真っ直ぐに匂いが続いていて、1回も曲がったりせずに、匂いはある場所へ続いているって。うんとねぇ、曲がらないだけじゃないんだよ、匂いが1本線だって言ったんだ。たぶん
「モルーは全部で8匹だが、その者達の匂いも混ざっているか? 匂いが途中で別れたということは?」
『ガウアァ、ガウゥゥゥ』
「そうかそうか。混ざっていて1本線か」
あれ? ブルーノおじいちゃん、今のクタさんの言葉分かったの? 今のはねぇ、線に他の者の匂いも混ざっているって。それでその混ざった匂いが、1本線って言ったんだよ。
でも、僕はまだ何も言っていませんでした。だけどブルーノおじいちゃんは、混ざっていて1本線って言ったの。
「ブルーノおじいちゃん」
「何ですかな?」
「おじいちゃんも、みんなのおはなしわかるの?」
「ほほ、坊っちゃまと一緒ですよ。この魔獣園で働いている者の中で、私が1番長く働いていますからね。坊っちゃまのように、魔獣達が何を言っているのか、今どう思っているのかが分かるのです」
「おなじねぇ!!」
ブルーノおじいちゃん、僕と同じだって!! 僕は嬉しくて拍手しちゃいます。でもね。
「ですがこのことは旦那様にも、奥様にも、他の者達にも、内緒でお願いします」
「どして?」
みんなとお話しできたら楽しいのに。
「私はここで働いていますからね。もしも話しがなんとなく分かると知られたら、皆に頼りにされてしまい、仕事が増えてしまうでしょう。私はもうお爺さんですからね。ゆっくりと仕事がしたいのですよ」
そか、お仕事いっぱいじゃ大変だもんね。パパが知ったら、いっぱいお願いするかも。それはダメダメ。
「ですが、そうですね。坊っちゃまと2人の時は、一緒に話をしましょう。そうしたら、楽しい話しができるはずですよ」
「うん!!」
ブルーノおじいちゃんとお約束の指切りをしました。それからすぐに匂いの話し。
僕はいつも小屋の中や、もう少し広い場所でしか、モルー達と遊んだことがなくて知らなかったんだけど。モルーは広い場所を長く歩く時は、みんな1列に並んで歩くんだって。
前のモルーのしっぽを噛んで、どんどん繋がっていって、それで全員で真っ直ぐに歩くの。甘噛で痛くないから、問題ないんだって。
だからモルー達が歩いた後の匂いは、バラバラじゃなくてまっすぐ一直線、1本線になるんだよ。その1本の匂いが、穴から一直前に伸びていて、ある場所へ続いていました。
「では、クタ、案内を頼みますよ」
『ガアウァ!!』
クタさんは少しだけ戻って、もう1度匂いを確認しながら、どんどんまっすく進んでいきます。僕達はクタさんの後ろをついて行って。着いた場所は、モルー達の遊び道具や、色々な道具がしまってある小さな小屋でした。
うんとね、モルーの小屋は見えるけど、形は分かるだけ。中は見えないくらい離れている所にある小屋だよ。
『ガウワァ』
「このなかに、においがつづいてる?」
『ガニョウ』
「あれ? どこにいくの?」
今まで真っ直ぐに歩いてきたクタさんが、こっちに進むぞって、小屋のドアから離れました。それでクタさんは小屋の横へと曲がって、少し進むと止まったんだ。
『ガウアウ』
ここを見てみろ、って言いながら、前足で小屋の下の方を指します。そこをよく見たら、ちっちゃな隙間がありました。
「なるほど、ここから入ったようですね。我々は入れませんから、ドアから入りましょう」
すぐにドアの前に戻った僕達。ブルーノおじいちゃんが小屋のドアを開けてくれます。今は朝だから外は明るいのに、小屋の中はちょっと薄暗いよ。
「匂いは何処へ続いている?」
『ガウア』
クタさんが匂いを嗅いだ後、また前足である方向を指します。そこにはモルー達のおもちゃ箱が置いてありました。
僕は急いでおもちゃ箱に走って、おもちゃ箱の中や周りを調たよ。だってみんなが遊んでいるのかと思ったから。それから小屋から出られなくなっちゃって、泣いているかもって。
「モルーおにいちゃ、ちーちゃ!」
でも、どこにもお兄ちゃんモルー達はいませんでした。僕はちょっとだけしょんぼりです。だけどよく見たら、箱にしまってあるはずのおもちゃが何個か、箱の外に落ちていました。
「ガウアウ、グルルルル、ガウアウ」
おもちゃ箱の周りから、いっぱい匂いがするって。たぶんみんながここに居たのは間違いない。おもちゃで遊んでいたんだろうって。じゃあ、今みんなは何処にいるの?
クタさんがまた、匂いを調べ始めます。その間にリアがお仕事です。パパ達の所にお手紙を届けるの。この小屋にみんながいましたって。リアが手紙を届けると、今度はパパ達の所にいるキャリアバードが、次の人達に手紙を届けるんだ。
リアはパパからの手紙を受け取って、僕達の所へ帰ってきます。順番は決まっているみたい。でもパパが指示を出しているから、パパの所に最初に届くって、ブルーノおじいちゃんが。
『ピピピッ!!』
「リア、がんばって!!」
リアは今、あたし頑張る!! って言ったんだ。まだ練習中だけど頑張るって。
「これで良いでしょう。飛びやすいように、なるべく小さく丸めたぞ。しっかりと届けなさい」
『ピピピッ!!』
「いってらっしゃい!!」
リアが行ってきます!! って言って飛び立ちました。飛び立つ? 一瞬で目の前から消えたと思ったら、ドアの所でバシッ!! と音が聞こえて。ボトッと何かが落ちました。
「リア!?」
『ピピピ……』
僕は急いでリアの所に。リアは失敗失敗、次は大丈夫って、ちょっと困り顔で笑いながらもう1回、行ってきます、って言ってまた消えました。
「まったく、行くことだけ考えて、前を確認しないからぶつかる。後で色々と注意しなければ」




