35.捜査で最初にやることは?
「さて、では坊っちゃま、何から始めましょうか?」
そうブルーノおじいちゃんが僕に聞いてきました。
「なにからはじめましょか!」
「ほほ、坊っちゃまがお決めになって良いのですよ」
ん? 僕が決める? でも大切なことは大人が決めるんでしょう?
「確かに大切なことは、ほとんどが大人が決めます。ですが、そればかりでないのですよ。その時その時で、決める人、皆に指示を出す人は変わるのです。指示とは坊っちゃまのお父上がされていることですよ。誰が何処を捜すのか、皆に話していたでしょう?」
「うん! あとねぇ、このどうぐをつかえって。ほかにもいつも、いろいろいってる!」
「それは考えて、指示を出すと言うことです。今ここには、坊っちゃまとブラックタイガー、キャリアバードと私がおります。そしてこの中のリーダー、考えて指示するのは、坊っちゃまなのです。ですからここからは皆、坊っちゃまの指示で動きます」
「ぼくかんがえる?」
「はい」
「しじする?」
「はい」
「うん! ぼくそれもがんばる!!」
わわわ!! 僕がリーダーで、僕が考えて指示を出すんだって!! こんなの初めてだよ。僕ちゃんとできるかな? 頑張らなくちゃ!!
「では、最初はないからいたしましょうか?」
う~ん、最初。1番最初にやることは何かなぁ?
『ガアウァ、ガウガアァァァ、ニャゴォ』
ん? 最初は穴の所の匂いを嗅いで、小屋の近くで同じ匂いがないか確かめる? そうブラックタイガーさんが言いました。
『ガウガァ、ガウゥゥゥ、ガアゥ』
あのね、みんな移動する前、パパがお話しをしている間。僕は気づいていなかったんだけど。毛を最初に発見したモルーが、しっかりとその毛を保存していて。その毛をダイアーウルフやブラックタイガーに嗅がせていたんだって。
みんなを探すには、みんなの匂いを見つけて、その匂いを辿って行きます。だから匂いが分からないと大変。
みんながすぐにサッと動けたのは、毛を持っていたモルーが、移動前にしっかりとみんなに、匂いを伝えていたおかげだったんだ。
それでね、みんなは居なくなっちゃったモルー達が、もう遠くまで行っちゃってるって考えていて、僕達が今いる場所は探さずに、すぐに別の場所へ移動しちゃったの。だから僕達は今いる場所をしっかりと探してから移動しようって。
そうだね。ここは誰も探していないもんね。もしもみんなみたいに遠くにいると思って、本当は近くにいたら、ずっと見つけられないままだもん。
「えとえと、じゃあぶりゃ……」
……ブラックがぶりゃっくになっちゃう。う~ん、これからずっと? パパもママもしっかりとしたお名前はダメって、でも他の魔獣さんみたいにニックネーム見たいのなら良いかなぁ?
ブラックタイガーさんも考えちゃダメ? これからモルー達を探している時に、ずっとお名前を言いにくいのはぁ。
「あの、おねがい、いですか?」
『ガアウ?』
「ぼく、おなまえいうのあんまり……。ちゃんとおなまえいえなくて」
ブラックタイガーにお名前のことを説明します。捜査を止めちゃってごめんなさい。でも、これから捜査する時に気になるのは。
僕の話しを聞いたブラックタイガーさん。少しだけ驚いたお顔をしたけど、すぐにニッコリになりました。
『ガウガァ!!』
それで良いよって言ってくれたの。たぶん。そうしたら僕の頭に乗っていた子キャリアバードが、ブラックタイガーさんの頭に降りてきて、私も!! って言ったんだ。私の名前も言いにくいかもしれないから、簡単なの考えて良いって。
「ありがと、ございます!!」
僕は先にブラックタイガーさんの名前を考えることに。それで名前が決まったら、ブラックタイガーさんは先に匂いを嗅ぎに穴の所へ。匂いを嗅いでいる間に、子キャリアバードの名前を考えます。
「う~ん、なにがいいですかぁ?」
ブラックタイガー、ブラさん? ガーさん? タイガさん? いろいろ名前を言ってみます。
そうしたらブラックタイガーさんがブラックのクと、タイガーのタで、クタが良いって。クタ? それで良いの? ブラックタイガーさんが良いならそれが良いに決まってるよ。
ブラックタイガーさん、ニックネームはクタに決定です!! クタさんは名前が決まると嬉しそうに、穴が空いている方へ歩いて行きました。すぐに子キャリアバードが僕の手のひらに乗ってきたよ。
次は子キャリアバードです。う~ん、何が良いかな。今のクタさんみたいに、何か好きな名前があればそれが良いよね。
『ピピッ!』
「リア?」
『ピピピッ!!』
子キャリアバードはリアが良いって。うん! リアに決定!!
「ほほ、決まりましたかな。では皆で移動しましょう」
穴は端っこに空いていたから、外からでも確認できます。そして穴の所へ行くと、穴の匂いを嗅いでいるクタさんと、小屋の中からクタさんを一生懸命見ているモルー達が。
「においある?」
『ガウアァ、ガニョオ、ガアウア』
さっき嗅がせて貰った毛と同じ匂いが穴からするって。それから周りからも同じ匂いがするみたいです。
「ええと、においがあったらぁ」
『ガウアァ、ガウアウ』
そか、次は少しずつ匂いを辿っていくんだよね。それから同じ場所ばっかりじゃなくて、他も確認しながら。前にパパが、同じところばかり探していて、他を探さないから間違えるのよ!! しっかり周りを見て!! ってママに怒られてたもん。
「においをかいで、すすんでいって、まわりかくにん!!」
『ピピ!!』
僕は手をグーにして上におー!! ってして。リアも片足を上げて、おー!! ってして、僕達は少し前に進み始めました。
「ほほ……。これからもお前が坊っちゃまのリードを」
『ガウガァ』
「クタさん!! ここはにおいがしますかぁ?」
『ガウッ!!』
今ブルーノお爺さんとクタさん、何かお話ししてた? あっ! モルー達が手を振ってる!! 僕はブンブン手を振り返します。待っていてね。絶対見つけるからね!!




