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短編集

王妃断罪

作者: よぎそーと

「じゃあな」

 そう言って王は剣を振り下ろした。

 結婚生活20年になる王妃の首に。



 これが国内各地で血飛沫が舞う発端となる。

 全ては王妃が自らおこした疑惑によって。



 王妃は国内有数の貴族の出身である。

 首をはねれば当然実家が黙ってない。

 なので、先手を打って王は王妃の実家である侯爵家を襲撃。

 全てを皆殺しにした。



 もちろんこれだけでは終わらない。

 侯爵家に連なる者達も漏れなく殲滅していった。

 侯爵家の家族・使用人などはもとより。

 侯爵家傘下の貴族も。

 派閥の貴族も。

 商会・工房・地主といった有力者も。

 敵に回る可能性がある以上、放置は出来なかった。



 もちろん、王のこの決断を止める者もいた。

 同じ王族も、臣籍降下して公爵となった者達も。

 教義から恩情や穏便を求める宗教・教会も。

 だからこれらも処分した。

 立ち塞がる全てが敵だった。



 この為に長年準備をしてきていた。

 仲間を作り、配下を作り、組織を作ってきた。

 おかざりとなった王族ではいつ足下をすくわれるかわからない。

 だから、貴族に奪われていた力を取り戻すべく、密かに勢力を作り続けていた。

 そうして作った戦力で、敵対する全てを消滅させていった。



 全ては王妃の不倫のせいである。



 王妃には幼少より思い合っていた相手がいた。

 相手も王妃となる娘を思っていた。

 王もそれを知っていたので二人の事を応援していた。

 なろう事なら王妃とならず、思い合ってる相手と添い遂げられるようにと。

 可能な限りの協力はおしまなかった。



 当時はまだ侯爵令嬢だった王妃にこれといった感情がなかったからだ。

 恋や愛の対象として見られなかった。

 といって侯爵令嬢だった王妃が駄目な人間だったわけではない。

 容姿も才能も優れていた。

 性格や人格も悪いというものではなかった。

 たんに王の好みのタイプではなかった。

 だから恋愛対象として見ていなかった。



 例え好みの相手だとしてもだ。

 思い合ってる相手がいるのに、そこから奪うような事が出来るのか?

 当時王子だった王には出来なかった。



 それなのにだ。

 宮廷・貴族の勢力争い。

 連綿と続く血のつながり。

 これらを考えた結果、侯爵令嬢が王妃候補となってしまった。



 さすがにそれはどうなのだろうと思い、王は反対した。

 だが、周りがそれを押しとどめた。



「家同士のつながりなのです」

「王侯貴族の婚姻に気持ちや心が入る余地はありません」

「全ては家の、ひいては国の為なのです」

 誰もが侯爵令嬢とその相手の事は知っていた。

 それをくんで王が反対してる事も。

 その全てをねじ伏せていった。



 あろうことか、当事者の侯爵令嬢とその想い人も王を止めた。

「全てのは家のため」

「ひいては国のため」

 そう言って王の行動を止めた。



 それでも王は何とかしようとしたが。

 多勢に無勢、どうにもならなかった。



 かくて当時は王太子だった王は、侯爵令嬢と婚約。

 時を見て結婚。

 侯爵令嬢は王太子妃となった。

 そして、先代王の死、王位の継承と共に王妃となった。



 ここで終わっていれば、王侯貴族という上流社会の悲劇で終わっていたかもしれない。

 思い合っていた相手がいても、結ばれるとは限らないという悲恋だ。



 しかし、これで終わらなかった。

 王太子妃となった侯爵令嬢は、その後も思い人と会合を持つ。

 それが妃としての公務上ならば問題は無い。

 しかし、私事の場においてまでとなると話はかわってくる。



 さすがに苦言を呈さざるをえなくなる。

 既婚女性が他の男と会うのは褒められたものではない。

 王とて気持ちは分かるが、王太子妃となれば控えねばならない事もある。



 しかし、これがなぜか止められた。

「もともと馴染みの仲です」

「止めるのはどうかと」

「男ならば度量を示さねば」

「王たる器が問われます」

 それらしい言い訳をぶつけられ、当然の苦言をかき消される。



 バカな話である。

 王太子妃ともなれば、下手に他の男と出会う事も禁じられる。

 いや、地位や立場に関わらずだ。

 一般的な貴族でも、それこそ一般庶民であっても、あまり褒められたものではない。

 王族王家ならばなおさらだ。



 全ては王家の血筋を残すため。

 わずかであっても、他の種の可能性を臭わせる事すら許されない。



 だというのにだ。

 王太子だった王に賛同するどころか。

 他の男に会いにいく王太子妃を擁護する声ばかり。



 思えばこの時だったのかもしれない。

 王が周囲に愛想をつかしたのは。



 それから王太子妃は妊娠。

 ほどなく出産。

 王子を産んだ。



 その後も王太子妃は妊娠し、合わせて4人の子供を産む。

 王子がもう一人。

 姫が二人。

 子供を産むという事だけ見れば、立派に役目を果たしたといえるだろう。



 だが、果たしてこれが王の子供なのか?

 頻繁に出かける王太子妃となった侯爵令嬢である。

 はたして王太子だった王の子供を産んだのか?

 出先で出会ってる誰かの子ではないのか?

 この疑惑はどうしてもつきまとった。



 もちろん、王太子だった王も侯爵令嬢だった王太子妃と交わった。

 ただ、それはお出かけから帰ってきてからの時だけ。

 それ以外の、王城にいる時はなんやかんや理由をつけて相手するのを拒んでいた。



 こうなると疑惑が大きくなる。

 既に種を腹に仕込んでから王と交わったのではないか?

 そうでないとどうして言い切れる?



 確かめようにも確かめられないのが辛い。

 これが現代日本なら、遺伝子鑑定も出来ただろう。

 血液鑑定だけで判明したかもしれない。

 だが、王がいるのは中世的な世界。

 科学もそこまで発展してるわけではない。

 魔術はあるが、これで血のつながりの鑑定が出来るというわけでもない。



「どうしようもねえな」

 前世がどれだけ便利だったのか。

 それを王太子だった頃の王は思ったものだ。



 この王、異世界転生者である。

 前世ではさほど恵まれない人生だった。

 記憶をもったまま転生し、それが王子という事でこの世界では少しは幸せになれると思ったが。

 残念ながらそうはいかなかった。



「なんで前世みたいな事になるんだか」

 前世における不幸。

 様々にあるが、その一つが女房の不倫・托卵である。

 結婚した相手が別の男と交わり、子供を宿してきた。

 無理矢理行った遺伝子鑑定で発覚。

 そのまま離婚、女房と別の誰かの子供を放り出した。



 生まれ変わってもそんな因果が続くとは。

 さすがに王はため息をこぼした。

 何度も何度も。



 当然ながら容赦なく断罪するつもりだった。

 自分の気持ちを踏みにじり。

 他人の子供を押しつける。

 こんな極悪非道の所業を許すつもりはない。



 まして、結婚するときは家や国を理由に気持ちを踏みにじり。

 結婚してからは、かつての縁を理由に、家や国を踏みにじる。

 こんなふざけた事を認めてる連中など生かしておけない。



 有力貴族も、王族も。

 教会も有力者も。

 自分の都合しか考えてない。

 この全てを根絶やしにしなければならない。

 でないと、国の屋台骨が崩れてしまう。



 幸い、王は自分の手足となる者達を作っていた。

 王がお飾りとなり、貴族が好き勝手やってる国だ。

 邪魔だと思われれば暗殺されかねない。

 それを避けるために、王は自分の手勢を作っていった。

 身を守るために、敵を切り伏せるために。



 それらが形になるまで時間がかかった。

 子供の頃から作り始めたが、まともな勢力となったのは王位について何年もしてからだ。

 これまでにも経験をつませるために小さな作戦を行ってきたが。

 まともな大規模攻勢をかけるのは、王妃断首の時になる。



 その最初の段階として王宮で事を起こし。

 不穏な疑いのある貴族を抹殺。

 その中で王妃も捕らえた。

 王子・姫も一緒に。



「これはどういう事────」

 問い質す王妃の声は、王の蹴りによって閉ざされた。

 腹にめり込んだつま先は、王妃の声と呼吸を止める。



「どうもこうも無いだろ」

 剣を鞘から抜いた王はよろめいた王妃の足を突き刺す。

 両足を突き刺された王妃は逃げる事も出来なくなる。

 続いて、床についた手も。



「今まで他の男と逢い引きを重ねて。

 誰が父親かもわからぬ子を押しつけて。

 それが王妃のする事か!」

 糾弾の声と共に剣を二度三度と振り下ろす。

 王妃の体に切り傷がつけられる。



「誤解です!」

 言い訳をする王妃。

 だが、王の手は止まらない。

「だからなんだ」

 王からすれば全く理由にもなってなかった。



「誤解されるような事をするのが悪い」

 身の潔白を晴らすには、疑われるような事を慎まねばならない。

 でないと、あらぬ疑いがかけられる。

 しかし、王妃はそんな事まったく省みる事もなかった。

「疑惑のあるお前は首をはねる。

 これがしきたりだ」



 全ては家のため、国のためである。

 家も国も血筋を伝えていく事で後世につなげていく。

 その必要がないなら、他国に侵略されてもかまわない事になる。

 自分の子供ではなく、別の国の人間を入れても良いのだから。

 それに血を引く我が子が受け継がないなら、なんで苦労して家や国を保たねばならないのか?



 それを王妃である元侯爵令嬢は怠った。

 ならば、断罪されるのが当然である。

 そうさせなかった今までがおかしいのだ。

 王が提示した苦言を退けた王侯貴族に宗教・有力者が悪いのだ。



「安心しろ、お前一人じゃない」

 そう言って王は、側近に振り向く。

 そばに控えていた者達は、手にした箱を持って王妃の前に出る。

 そして、箱の中身を王妃の前に放り出した。



「ひっ!」

 悲鳴があがる。

 その王妃の前に転がったもの。

 それは実家の侯爵・侯爵の妻、その子供達に孫。

 つまりは王妃の実家の家族の首だった。



 更に。

 続いて前に出た者達が同じように箱をもってくる。

 その中身が王妃の前に放り出される。

「これは……」

 馴染みのある者達だった。

 王妃の思い人、その家族である。



 思い人の親に兄弟。

 そして。

 思い人の妻にその子供達。

 いずれも馴染みのある者達だった。



「逢い引きの手伝いをしていたそうだな」

 王が調べた事実を告げる。

「妻の身でありながら、夫の不貞をゆるし。

 それどころか王妃との逢い引きを手伝う。

 よくぞまあ、こんな事が出来たものだ」

 王としてはあきれ果てるしかない。



 この世界の倫理や道徳からしても。

 前世の倫理道徳に照らし合わせても。

 不倫や不貞が許されるわけがない。



 それを当事者だけでやっていただけではなく。

 配偶者まで協力していたというのだから救いがたい。



「自白剤や魔術を用いて聞き出した。

 なぜ協力をしたのか」

 理由がどうであれ、処断は免れない。

 また、聞けなくても処分は遂行した。

 それでも興味があったので調べられるだけ調べた。

「呆れるな。

 思いあう二人を助けたかったというからな」

 それが王妃の思い人の妻や家族が不倫に協力した理由である。



「だったら、結婚なぞしなければ良かったのだ。

 俺はお前らの事を応援していたのだからな。

 それを覆しておいて。

 挙げ句、結婚をしたら可哀相だと不倫をそそのかす。

 お前らは何を考えてるんだ?」

 王にはそうなる思考回路が理解できなかった。

 そして、これはどれだけ聞き出しても解明出来ない謎だった。



「まあ良い」

 わだかまりはある。

 解消しきれない思いもある。

 だが、それに一区切りだけでもつけるべく、王は剣を振り上げる。

「それも終わりだ」



 剣が振り下ろされた。

 その下にいた王子が斬り殺された。

 急所は外れている。

 だが、決して助からない場所への攻撃だ。

 時間をかけてゆっくりと死ぬ事になる。



 治療が間に合えば命は助かるかもしれない。

 だが、助けるものがここにはいない。

 切られた王子……といわれてる、誰の子供か分からない童子はゆっくりと確実に死ぬしかない。



 他の子供も同じだ。

 いずれも王妃が産んだ子供。

 しかし、王の子供か分からない者ども。

 そんなものを王子や姫として扱うわけにはいかない。

 今まではともかく、これからは。



 剣がひらめく。

 王子もどきと、姫もどき。

 それらが死んでいく。

 これにて王妃の血筋は途絶える事になった。

 もっとも、王の知らないところで妊娠・出産していたらこの限りではないが。



「いやあああああああ!」

 王妃の口から悲鳴があがる。

 種がどうであれ、いずれも彼女が産んだ子供だ。

 親として母として、肉親の情があるのは当然。

「なんで、なんで、なんで!」

 見苦しく騒ぎ立てる。



 その姿が実に鬱陶しく、王はつま先で王妃の顎を蹴り上げた。

 手足を傷つけられ、まともに立てない王妃の頭は丁度良い位置にあった。

 面白いくらいに王妃の頭は跳ね上がった。

「軽いな」

 蹴り上げた王妃の頭への感想が漏れる。



「父……上」

 かすかな声が王を呼ぶ。

 倒れ伏した王子からだ。

 王はそんな王子の頭も蹴り飛ばす。

「誰が父だ」

 噴飯物の呼び方だ。

「お前が誰の子なのかなぞ、分かるものか」

 少なくとも王は自分の子だとは思えなかった。



 可能性はある。

 我が子であるかもしれない。

 だが、断定は出来ない。

 誰の子かを確定する情報がないのだ。



 それ以上に、他の誰かの子供である可能性を残しておくわけにはいかない。

 王家としての血を残さねば、王家は続かない。

 他の誰かの子供であれば、それだけで王位の正当性や正統性を失う。

 王家が王家たる所以はただ一つ、血筋だけなのだから。



 王家に限った事ではない。

 身分問わず、どんな家族も血のつながりで成り立っている。

 そうでないなら、企業や会社のような集団でしかない。

 そんなものが家族と言えるのか?



 今、自ら流した血の中で悶える子供達。

 これらは王の血をひくのかどうかも分からない。

 ならば、そんな疑惑のある存在を残すわけにはいかない。

 生かしておけば、どんな災いとなって王家や国を脅かすか分からないのだから。


 もし、ここで子供達を生かしておいたら。

 どこかに幽閉するだけに留めたら。

 そうしたら、王家の人間として担ぎあげる者も出て来る。



 あるいは、後世にて火種になるかもしれない。

 ここで生かして王位を継ごうものなら、「あれは王家の血を引いてない」と糾弾される。

 少なくとも材料にはなる。

 少なくとも王位継承においてもめる材料には十分になる。

 この国の貴族や宗教、有力者ならやる。

 今まで王の意見をことごとく潰して来た連中なのだから。



 そんな脅威の原因になる子が死んでいく。

 子供だからと許すわけにはいかない。

 存在そのものが脅威になるのだから。

 殺す以外に方法は無い。



 子供に罪は無いという。

 馬鹿げた戯言だ。

 生きてるだけで脅威になる。

 そんなもの、生かしておく理由はない。

 子供だからというのは、許しの理由にはならない。



 もし罪があるなら、それはこんな事態を招いた王妃にある。

 その周囲の連中にある。

 そして、罪の成果である元侯爵令嬢の子供自身にもある。

 逃れられるわけがない。



 だいたい、子供だからと見逃す理由がどこにある?

 それこそ非道な考え方だ。



 そもそも、許しほど邪悪なものはない。

「ごめんなさい」で悪事を許すというのだから。

 ならば、悪事を働いた方が利益になる。

 善行を行う必要がなくなる。



 だから王は決して赦さなかった。

 今後の禍根を断ち切るために。

 少なくとも、問題の一つは消すために。



 そして、最後に残った問題。

 王妃である元侯爵令嬢。

 これを断罪する時がきた。



「くたばれ、バカが」

 そう言って剣を振り下ろす。

 王妃の頭が胴体から切り離された。

 転がる王妃の頭。

 その目はまだ動いてる。



 首を切っても僅かな時間は生きられるという。

 今の王妃はまさにそんな状態だった。

 その王妃に向かって最期の言葉がかけられた。

「じゃあな」

 憎悪と怒りと侮蔑。

 邪悪に向ける正当な感情の全てをこめて、王は別れの言葉を口にした。



 大きなため息を吐く。

 長く続いた問題はこれで一区切りがついた。

 もちろん、これで全てが終わったわけではない。

 国内にはまだまだ問題が残ってる。

 それらも片付けねばならない。



 だが、今ここにある問題は片付いた。

 王都にある問題も、別働隊が片付けてる頃だ。



 この不倫に加担していた者達だけではない。

 王の苦言を退けてきたクズども。

 王族に貴族、宗教に有力者。

 様々なものが今ごろ血祭りにあげられている。

 まだ王都だけだが、問題の多くは切り捨てられている。

 その報告を、王は血まみれの部屋で聞いていく。



 まずは王都から。

 居城の膝元から掃除を開始していく。

 他に手を付けるにせよ、まず周囲の問題を片付けておかねばならない。



 それから国内全域に手を広げていく。

 問題は王妃だけではない。

 他にも山積みになってる。

 この全てを切り捨てねば、国は乱れるばかりだ。



 これが国の弱体化につながるのも覚悟の上である。

 一時的にせよ、国内から有力者が消えるのだ。

 当然、統治体制に問題は出て来る。

 そこを周辺国がついてくる可能性はある。



 だが、かまわなかった。

 問題をかかえたままでは、外の敵に対抗も出来ない。

 内憂外患のうち、まずは内側の憂いを取り除く。

 外からの問題にはそれから対処すれば良い。



 それに。

 王は別に国を保つ気がなかった。



 自分を虐げた国。

 自分を苦しめた国。

 それになんの未練もなかった。

 潰れるならいっそ清々する。



 滅亡しないように努力はする。

 だが、滅亡してもかまわないので、ほどほどにだけ頑張る。

 そんなつもりでいた。



「まったく」

 こうなったのも、全ては首をはねられた元侯爵令嬢のせいである。

 王妃と呼ぶのも反吐がでる。

 それを見て王は、前世で見聞きした言葉を思いだす。

「悪役令嬢だな、本当に」



 悪役令嬢。

 自分の利益や都合だけをかなえる悪女。

 王妃は、元侯爵令嬢はまさに悪だった。

 決して赦してはいけない、断罪しなければならない悪だった。



 悪とは生活を脅かすものをいう。

 それは殺人や傷害であったり。

 破壊や強奪・窃盗であったり。

 強迫や侮辱であったり。

 なんであれ、人々を損なうものだ。

 損失をもたらすものだ。



 実際、国を損なうところだった。

 断ち切らねばどうなっていたのかと思う。

 最低でもこれだけは出来て良かったと思った。



 ただ、ここから国が傾かないように。

 傾くにしても、持ち直せるように努力はしていかねばならない。

「面倒な事をしやがって」

 そうなる原因を作った元侯爵令嬢に。

 外道というしかない悪役令嬢を見下ろす。

 首と胴体が泣き別れになった死体。

 王にはそれが生ゴミでしかない汚物にしか見えなかった。



 王と手勢による国の立て直しはここから始まる。

 国内の各勢力を破壊し、内憂を取り除く。

 その隙を突いて攻めこんできた外患である周辺国にも立ち向かう。

 長く苦しい戦いとなっていく。

 攻めこまれて奪われた領土もいくつもあった。

 それを取り返し、さらに敵国にも侵略をして、王は国の領地を拡大する事に成功した。



 そして王家であるが。

 その後、王子をもうける事で王家は存続。

 継承者の無きをもっての国家消滅を防いだ。



 ただ、王妃や側室などはいない。

 王妃の事件があって、妃という存在は廃止されている。



 血を継ぐ子供は、飼育小屋と言われるような小部屋に幽閉。

 王が子を儲けるために交わるだけの女が放り込まれるようになる。

 確実に自分の子供だと分かるように、他の誰とも接触しないような隔離。

 そんな女とだけ王は交わり、子をなしていった。



 王だけではない。

 国内全体でこのような状況が続く。

 全ては王妃だった元侯爵令嬢の事件が原因だ。

 その結果、女は隔離・幽閉されていった。



 恋だ愛だと騒いで行われた事。

 それは、恋や愛を消滅させる事になった。



 家のため、国のためと言いながら。

 家や国を崩壊させていこうとした。



 何かのため。

 これは何かを消滅させるのかもしれない。

 人生を振り返って王はそんな事を考えた。



「恋愛なんてもんに振り回されてたまるか」

 転生後も決して安まることの無かった王は、常にこんな愚痴をこぼしていたという。

 二つの人生で得た貴重な教訓でもある。

 そこまで思い至る者はいなかったが。

 だが、決して無視できない重みを感じる者は多かった。

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