57.静けさの後の嵐
[コンクリート製の倉庫]は全部で10棟あるようだ。
総監に小走りで駆け寄った“20代半ばくらいの女性隊員”が、〝ビシッ〟と止まって、
「各班、配置に付きました。」
このように報せる。
「うむ。」
「では、実行に移るとしよう。」
総監が述べたことによって、副総監が隊服のポケットから何かを取り出す。
それを掲げた副総監がスイッチを入れたところ“超高性能のレーザー”が放たれた。
このまま副総監が腕を〝くるくる〟と回して、夜の曇り空に“緑色のレーザー”で円を描く……。
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〝ポツポツ〟と雨が降りだすなか、各チームが倉庫へと向かっている。
なお、この場に集結している[H.H.S.O]の殆どは待機していた。
敵どもが倉庫から逃げて来たとき、すぐ捕らえられるようにしておくために。
それと、いつ現れるか分からない“妖魔”にも備えているみたいだ。
このため、船には隊員が数人ずつ残っている。
なお、野外の指揮を執るのは[現・関東司令官]だ。
彼は、もともと東京組の第一番隊で“隊長”を務めていたらしい。
30代前半といった印象で、“黒髪ショート”に“丸メガネ”といった格好である。
とかく。
“真ん中の倉庫”へと歩を進めたのは、[東京組 第十三番隊]だ。
その最後尾には“総監”と“副総監”が続いている。
“5”とナンバリングされている[鉄扉]を沖奈朔任隊長が左右に開いていった…。
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電気が灯っている内部へと隈本一帆たちが入る。
そこには、5人の男女と、なんらかの機材が、見受けられた。
「いささか外が騒がしいと思ったら、どうりで。」
余裕そうに喋った“スーツ姿の男”を、
「ここで何をしておる?」
「三上よ。」
総監が静かに睨み付ける。
「……、ま、もうすぐ設定が完了する事だし、教えても構わないか。」
独り言を口にした“三上・ディン・煌士”が、
「始めるんですよ。」
「“第三次妖魔大量発生”を。」
薄ら笑いを浮かべた。
これに対して、一帆らが〝は??〟と固まる。
「なんの目的で?」
驚きを隠せないまま声を搾り出した副総監に、
「“新世界”を創るため。」
三上が冷酷な表情で返す。
「意味が分かりませんが??」
「妖魔が大量に現れてしまったなら、あなた達も生存できる保障はないでしょう。」
「そんな大仰なものを創世するのは不可能なのでは?」
鐶倖々徠副隊長が眉間にシワを寄せたところ、
「ご心配ありがとう。」
「でも。」
「無用だよ。」
「日本だけでなく各国にも我々の同胞が潜んでいてね…、それぞれに仲間を増やしていき、組織を設立した。」
「いわゆる“秘密結社”というやつさ。」
「メンバーの多くは能力者なので、そう簡単に死にはしないだろう。」
三上が語っていった。
「どうにも要領を得ませんね。」
「結局のところ、本当の狙いは、なんなのです??」
軽く首を傾げた沖奈に、
「妖魔大量発生のどさくさに紛れて、首相や大統領などの要人らを抹殺する。」
「そうして、世の中を一度リセットするのさ。」
「我らの“ユートピア”を形成していくために!」
「力ある者たちが全てを支配するのだ!!」
「何もかもを正しい方向へと導くためになッ!」
そのように三上が告げる。
「くだらない。」
「ただのガキの妄想じゃん!!」
「そんなことのために、あーしを騙してたの?!」
「人を“捨て駒”にした落とし前つけてもらうかんね!!」
怒れる宮瑚留梨花を、
「久しぶりだな。」
「だが、すぐにお別れだ。」
「お前らの命は、ここで尽きるのだから。」
三上が嘲笑う。
「どれもこれも、やらせはせん!」
「逆に、一網打尽にしてくれるわぃ!!」
総監が宣言したところ、
「それは成功しませんよ。」
「我々が返り討ちにするので。」
〝ニヤリ〟と口元を緩める三上だった。
この流れで、奥の方より、
「終わったよ、プログラミング。」
「いつでも、いけるけど??」
男性の声が聞こえてきた。
どうやら、機材のキーボードを打ち込んでいたようだ。
彼の正面には、他の敵どもが立ち並んでいたので、誰も気付けなかったらしい。
いや、その男の事を、連中がバレないように隠していたのだろう。
〝すぅ――ッ〟と息を吸った三上が、振り向かないままで、
「やれ!」
そう指示する。
“研究者らしき男性”は、
「りょ~かいッ。」
このように答えるのと共に[エンターキー]を押した。
ほんの少しの間を置いて、〝ビィ――ッ!! ビィ――ッ!! ビィ――ッ!! ビィ――ッ!!〟という警報音が響き、
『もうすぐ“時空の歪”が発生し、妖魔が出現します。』
『いまだかつてない最大規模となりますので、近隣の方は避難してください。』
『予測される場所は――。』
といったアナウンスが世界中でなされていく。
そうした状況に、埠頭に居る[H.H.S.O]が唖然とする。
遠くで雷鳴が轟くなか、強まりゆく雨足であった―。




