53.在りし日・後編
「あなた方の計画とは一体なんなのです??」
沖奈朔任隊長が改めて窺う。
これを受けた架浦聖徒は、
「さぁ? な。」
「関東司令官から聞かされていたのは〝新世界を創る〟って事だけだ。」
「それ以上は説明してくれなかったんで、詳しい内容は知らねぇや。」
「多分、仲間内の殆どが、オレと同じ状況だろうよ。」
そのように述べたのである。
「…………。」
暫し黙って考え込んだ沖奈が、
「先代の東京組第十三番隊を1人残らず殺害したのは〝核心に迫られたから〟といった理由で、間違いありませんね??」
別の質問を投げ掛けた。
「んー、……、十中八九そうだな。」
「さっきも言ったけど、オレとかは計画の全貌を伝えてもらっていねぇ。」
「で、だ。」
「ある日、主だった連中が集められたんだよ。」
「その当時、十三番隊に潜り込んでいたスパイが、関東司令官に情報をもたらしたとかでな。」
「なんでも、初代メンバーは“研究所の地下室”や“半妖の実態”と“関東司令官の企て”に辿り着きそうになっていたんだと…。」
「〝これらを完全に暴かれる前に十三番隊を消しておく〟って決めた関東司令官に指示されて、オレや、戸田、あぁー、“漠皁組の若頭”であったり……、数十人が乗り込んだつー訳さ。」
「関東司令官と一緒にな。」
「ま、そんときの戦いで、こっちも少なからず死者を出しちまったけどよ。」
「例えば、もともと十三番隊に潜伏していたヤツとか…。」
こう架浦が喋り終えたところで、
「あの頃の拠点を中心とした半径1㎞の範囲内に設置されていた全ての防犯カメラは、高圧電流のようなもので壊されていたそうですが……、それは誰かのスキルによるものでしょうか?」
沖奈が再び尋ねる。
それに対して、
「んあー、…………、悪ぃが、それに関しちゃノーコメントだ。」
「黙秘権?? みたいな?」
「まぁ、そんな感じで。」
「すまねぇけど、引き下がってもらいてぇ。」
架浦が苦笑いしながら返す。
「そうですか…。」
起立した沖奈は、
「いろいろと、ありがとうございました。」
「それでは、これにて。」
丁寧に会釈した。
この場を去ろうとした沖奈に、
「隊長。」
「関東司令官の拠点は、千葉、神奈川、新潟、石川、ここら辺りらしい。」
「更に細かい場所までは分からねぇけどな、オレには。」
架浦が告げる。
「どうして、それを??」
「良かったんですか? 僕に教えても。」
沖奈が目を丸くしたら、
「……、嫌いじゃなかったんだよ、今の十三番隊のこと。」
「いや、寧ろ、楽しかった。」
「何年かぶりにな。」
「その結果、情が湧いちまったみてぇだ。」
〝フ〟と口元を緩める架浦であった。
警察署から外にでた沖奈は、電話を掛けている。
先ほど架浦が述べた四県を、[総監]に伝えるために…。
▼
あれから10日が過ぎていた。
普段より早めに職務を切り上げた[東京組十三番隊]は、歌舞伎町に在る居酒屋の一室に赴いている。
なお、休みだった鐶倖々徠副隊長と筺健も合流している。
PM18:00となり、
「それでは、僭越ながら、乾杯の音頭を取らせていただきます。」
「一応、幹事ですので。」
周囲を見回したのは、黒髪ショートでボーイッシュな女性こと“富矩碼”だ。
そう。
ここには[十四番隊]の4名も訪れていた。
全員が、
「かんぱぁ~い!!」
と、グラスを合わせていくなかで、原城が嬉しそうに〝ニコニコ〟にしている。
それに比べて、やはり複雑そうにしているのは、隈本一帆だった……。
同じ頃――。
十三番隊の[事務室]にて。
隊服姿の男性3人と女性2人に、
「では、頼んだぞ。」
こう声をかけたのは“総監”である。
その両脇には“副総監”と“十四番隊の隊長”が控えていた。
5人組を代表して、
「一番隊の名に懸けましても。」
30代半ばの男性が、総監に答える。
「二時間ほどのパトロールに大袈裟ではないか??」
若干ながら眉を段違いにした総監に、
「いえ、普段とは異なる地域をパトロールしますので、一層に気を引き締めるべきかと思いまして…。」
このように告げる男性であった。
「ふむ。」
「成程な。」
「……、ま、何かあったら我々も動くので、あまり力み過ぎるなよ。」
「疲れるだけだぞ。」
総監に説かれ、
「はッ!」
5人が軽く頭を下げる。
「それでは行って参ります。」
そう述べた代表の男性を筆頭に、部屋から出ていく[第一番隊]だった。
彼らは、“飲み会”に参加している[第十三番隊]の代わりを務めてくれるらしい。
ちなみに[一番隊]には40名くらいが所属しているそうだ。
とにもかくにも。
「まさか、本当に、十三番隊と十四番隊のためにここまでしてあげるとは…。」
「他の隊が羨ましがるでしょうね。」
副総監に言われて、
「まぁ、それぞれ、“反社”や“敵の一部”を捕らえるのに貢献してくれたからな。」
「あと……、沖奈は、三上の居所に関して情報を掴んでくれた。」
「これぐらいやってあげても問題はあるまい。」
「なんだったら二百一番隊も優遇してやって構わん。」
穏やかに微笑んだ総監である。
「取り敢えず、座りませんか?」
ふと提案した[十四番隊の隊長]に、
「そうだな。」
「現状と今後について、ゆっくり話しておきたいこともあるし…。」
こう返す総監であった―。




