50.アフター
それぞれ、担架に固定された” 鐶倖々徠副隊長”と“第二百一番隊の男性”が、救急隊員によって外へと運ばれる。
この後ろに、他のメンバーが続いていた。
架浦聖徒達は、警察に伴われている。
なお、架浦は、ギャル&元ヤンによって、ボディを何発か蹴られていた。
ただ、周りの隊員が早々に止めたので、傷は浅めである。
宮瑚留梨花と、緋島早梨衣は、いささか不満が残ったようだ……。
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建物の外にて。
別行動だった二百一番隊の隊員らが、浮かぬ顔となっていた。
隊長である八幸に気づき、ロングの茶髪をポニーテールにしている30代前半の女性が、
「木平が裏切りました。」
「と言うよりは…、そもそも“スパイ”だった模様です。」
「佐鄲さんが救急車に居ますので、詳しくは、あちらに。」
険しい表情で伝えたのである。
彼女は、妖魔討伐に赴いていた隊員だ。
その女性に促された事によって、地下で戦っていた面子が、“佐鄲”の所へと歩く。
ただし、鐶は、異なる救急車に乗せられていった。
架浦などは個別にパトカーへと連れて行かれている……。
車内の椅子に腰かけているのは、30代半ばで“七三ポマード”の【念力】を扱う男性であった。
素肌の上半身には包帯が幾重にも巻かれているので、応急処置を施してもらったのだろう。
肩には、隊服のジャケットを羽織っていた。
この隊員に、
「佐鄲…。」
「木平が敵だったそうだが?」
八幸が訊ねる。
それに対して、
「ええ。」
「突然、背後よりスキルを使われたうえに、拳銃で撃たれてしまいました。」
「その発砲音が屋外にまで聞こえたそうでして、数名の警察が、4体のアンドロイドと共に、現場へと駆けつけてくれました。」
「木平の能力はアンドロイドには効かないため、取り押さえられましたが……、酸素を薄くされたことによる呼吸困難と、射撃での負傷によって、二名が亡くなっています。」
悲しげに報告する佐鄲だった。
〝ふぅ――ッ〟と息を吐いて、
「そうか…。」
「ご苦労だったな。」
「まずは治療してもらえ。」
「負傷している隊員は、あの病院に搬送してもらえるんだろ??」
こう質問した八幸に、
「はい。」
「警察が先ほど連絡してくれて、あそこの院長先生が承諾してくださったので、自分以外は既に出発しています。」
佐鄲が状況を教える。
「分かった。」
「院長に挨拶するために、私も向かおう。」
「では、あとでな。」
そのように八幸が述べたところ、静かに会釈する佐鄲であった。
鐶と佐鄲が別々に乗っている救急車が、順次、道路へと出てゆく。
二台を見送って、
「僕たちも行きましょうか、病院に。」
沖奈朔任隊長が声をかけたら、
「いや、アタシら、車の運転できないんすけど。」
緋島が困惑したのである。
彼女はバイクの免許しか持っていないので。
更に、宮瑚と、隈本一帆は、どれも取得していなかった。
これらを思い出した沖奈が、
「あぁー、……。」
筺健を窺う。
隊長の考えを察したらしい筺は、
「鐶副隊長のは軽なので、自分には少なからず窮屈でしょうが…、ま、善処してみます。」
そう喋ったのである。
これらの会話が聞こえていた八幸が、
「皆さんが構わなければ、私が運転しましょうか?」
ふと提案した。
「よろしいんですか??」
沖奈が確認したら、
「ええ。」
「私は、ここに、部下の車で連れて来てもらいましたので。」
「彼女も病院まで赴くため、我々の拠点に帰る際には、また乗せてもらいます。」
そのように説明した八幸が、“ロング茶髪ポニーテールの女性”に視線を向けたのである。
“彼女”が頷いた事により、
「それでは、お言葉に甘えさせていただいて……。」
「こちらは鐶さんから預かっていた“キー”です。」
“自動車の鍵”を八幸に渡した流れで、
「すみませんが、よろしくお願いします。」
お辞儀する沖奈だった…。
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走行中の車内で。
包まれていた沈黙を破るかのように、助手席の一帆が、
「あの隊員の方のスキルって、凄いですよね。」
「〝対象者の能力を永久に封じ込める〟だなんて。」
こう口を開いたのである。
すると、
「あーしも思った!」
「〝もはや最強じゃね?〟ってさぁ~。」
一帆の真後ろで、そのように宮瑚が述べた。
「……、いえ、そうでもありませんよ。」
「彼女のスキルは、相手に触れなければ扱えませんし…。」
「一日5回あたりの発動が限界ですので、それを超えて使い続けると、本人は、最悪、命を落としかねません。」
八幸が伝えたところ、
「それでも、貴重な存在には違いないっしょ。」
バックミラー越しに、緋島が意見したのである。
これを受けて、
「まぁ、そうですね。」
穏やかに微笑む八幸であった……。
沖奈が運転している自動車にて。
後部座席の右側に座っている筺が、
「残すは〝関東司令官の行方と、未だ各隊に潜んでいるであろうスパイどもの炙り出し〟といったところでしょうが…、なかなか難しそうな感じがしますね。」
眉間にシワを寄せる。
「確かに、それらは、厳しめでしょうね。」
「それと……、まだ“未解決の謎”があります。」
沖奈の返しに、筺が〝はて??〟と首を傾げた。
そんな彼の左隣で、
「隊長や、岩田とかいう刑事の、偽者ですね?」
意川敏矢が尋ねる。
「その通りです。」
肯定した沖奈は、
「〝背格好が似ている人々に整形を施させた〟という可能性もありますが…。」
「十中八九〝なんらかの能力〟でしょうね、きっと。」
自身の記憶を探るかのように、目を細めたのだった―。




