49.死闘・急
〝タンッ!!〟という発砲音がするなり、
「うッ!」
[豹の獣人]が痛みに表情を歪め、二歩ほど退がった。
この[豹]は右脇腹から流血しているようだ。
それは、緋島早梨衣が、いつの間にか出現させていた[スコープ付きライフル]によるものだった。
「このッ!!」
睨む[獣人]を、緋島が再び射撃する。
今度は右太腿にヒットした[豹]が、膝を着く。
ここでタイムリミットを迎えたらしく、容姿が[人間の女性]になった。
ほぼ同時に、“ツンツン赤髪&半袖アロハ”といった男性も、自身のスキルが効果を失い、刃物になっていた両腕が元に戻る。
それによって、くっついていた左右の腕が、〝パッ〟と離れた。
「お?!」
「なんか知んねぇけど、ラッキー。」
〝ニィ〟と口元を緩めた“ツンツン赤髪”が「発」と新たに唱えようとするも、これより先に、
「発動!!」
意川敏矢が、両の掌を押し出す。
その能力にて、真上に飛ばされた“半袖アロハ”は、頭を天井にブツケた流れで、うつ伏せで床に落下し、体を打ち付ける。
「ぐ、うぅッ。」
低く呻いている“赤髪 = 鮫島”から少し離れた位置では、[漠皁組の若頭]が〝ふ〟と気づいて、ピストルから手を放した。
すると、自由が利くようになった“若頭 = 戸田”は、
「やっぱ、磁力か。」
[東京組第二百一番隊]の隊長である“八幸”のスキルについて確信を得たみたいだ。
左肩に右手を添えて、
「発動。」
自分を衣服ごと透明化させる戸田に、
「まずい!」
「また見えなくなった!!」
筺健に焦りが生じる。
すぐさま、左手で顎に触れた宮瑚留梨花が、
「発動!」
戸田が居るであろう方向へと[霧]を噴射した。
宮瑚は、もともと〝制限時間は5秒〟と言っていたが、実際は“30秒”らしい。
なにはともあれ。
「金ならあるッ!!」
「ドンペリ持ってこぉーい!」
「飲むぞぉお!!」
といった具合に、戸田は、【幻覚】に捉われた。
こうした状況で、“二百一番隊の男性”が、声のする方へと歩いていく。
その隊員は、身長が175㎝あたりで、黒髪をツイストパーマにしている。
いまだ何かしら騒いでいる戸田の側で〝ピタッ〟と止まった“ツイストパーマ”が、
「発動。」
右の拳で胸を〝トンッ〟と軽く叩いたところ、[狼の獣人]に変化したのであった。
この[狼]が、“右の回し蹴り”を〝ズバンッ!〟と見舞う。
「がはッ!!?」
キックの衝撃で飛ばされた戸田は、ディスクの一つに〝ドガンッ!〟と当たったらしく、
「ぐあッ、ううッ、ぐ、う~ッ。」
もがき苦しんでいるみたいだ。
そこへ、背丈168㎝くらいで、セミロングのストレートヘアをプラチナブロンド色に染めている女性が、近づいた。
戸田の背中であろう部位に、彼女が右手でタッチしながら、
「発動。」
能力を使ったところ、透明ではなくなったのである。
一方、鮫島は、第二百一番隊の男性2人に、後ろ手で確保されていた。
こちらにも“プラチナブロンドの女性”が足を運ぶ。
そうして、鮫島の右肩に触れると、改めてスキルを扱ったのである。
「彼女は〝対象者の能力を永久に封じ込める〟ことができます。」
八幸の説明に、[第十三番隊]が〝ほぉう〟と理解を示す。
〝まだ動けずにいる隈本一帆以外は〟だが…。
「隈本さんを助けたいところですが、迂闊に距離を詰めると架浦さんに邪魔されそうで、厄介ですね。」
困り顔となった沖奈朔任隊長に、ふらつきながら立ち上がった鐶倖々徠副隊長が、
「でしたら、こういうのは如何です?」
ある作戦を伝えていく。
架浦聖徒も起きたところで、
「――、成程、妙案ですね。」
副隊長の話しに頷いた沖奈が、
「では、いきますよ。」
宮瑚に視線を送った。
「りょーかい!!」
迷いなく宮瑚が応じるなり、
「発動。」
沖奈が前方へとスキルを用いる。
これによって、宮瑚の正面に【瞬間移動】させられる架浦だった。
「な??!」
まさか呼び寄せられるとは思っておらず驚いた架浦に、
「はつどぉーうッ!!」
宮瑚が[霧]を放つ。
その結果、
「へぇーい! お姉さんたちぃ~。」
「一緒に遊ばなぁ~い?」
ナンパを始めた架浦である。
「ミッツ―て、そればっかだね。」
「まじ、ワンパターンなんだけど……。」
宮瑚が呆れるなか、
「お願いします。」
沖奈に頼まれた“プラチナブロンドの隊員”が、架浦の能力も封印したのであった。
このようなタイミングで、根性で立った“妖艶な女性”が、
「発動!!」
[二足歩行の豹]へとチェンジする。
[豹]は、一帆を仕留めるべく、左手を払う体勢となった。
既にライフルが消えていた緋島が、
「やっべぇ!」
慌てるなか、[狼]が全力疾走したのである。
それが目に映った[豹]は、防御しようと、急ぎ構えた。
しかし、ガードの隙間から、[狼]が“右の拳”を振り上げる。
スピードに乗った[狼]の“アッパー”が、顎に〝ズガンッ!!〟とクリティカルヒットした[豹]は、気を失って、仰向けで倒れたのだった…。
架浦を含めた4人は、手錠を掛けられて、床に座らされている。
なお、[豹の獣人]もスキルを封じられたようだ。
「じゃあ、ミッツ―。」
「約束を果たしてもらうよ。」
〝ニコニコ〟しながら述べた宮瑚に、
「は?!」
「なんのことだ??」
意味が分からない架浦が首を傾げた。
「ええ~?」
「忘れたのぉー??」
「〝ボッコボコにする〟って言ったじゃぁ~ん。」
宮瑚が笑顔満面になったところで、
「おー、確かに、そうだったな。」
「アタシも交ざらせてもらうから、覚悟しろよ。」
緋島が〝ニヤァ~〟とする。
こうしたギャル&元ヤンに、
「えッ??」
「いや、ちょ、待っ。」
たじろぐばかりの“金髪ハーフ”であった―。




