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45.策応・後編

二台の自動車が、縦列で、道路を走行している。


前の車を運転しているのは、沖奈朔任(おきなさくと)隊長だ。

後部座席には筺健(かごまさる)意川敏矢(いかわとしや)が腰掛けている。

筺が、

架浦(みつうら)の件、驚いただろう?」

右隣の意川に訊ねたところ、

「んー、……。」

「ま、副隊長は、そうでしたね。」

「副総監からの電話を受けたとき、ビックリしていました。」

このように答えたのだった。

ふと違和感が生じたらしい沖奈が、

「もしかして、意川さんは気づいていたのですか??」

「〝スパイは架浦さんだ〟と…。」

バックミラー越しに窺う。

「あ、いや、なんとなく(・・・・・)、ですけど。」

「〝きっと、そうなんじゃないかなぁ~?〟て。」

「ただ、確信が無かったので、黙っていました。」

「すみません。」

お辞儀した意川に、

「いえ、謝る必要はありませんよ。」

「それよりも。」

「いつ頃から怪しいと思っていたのです??」

再び沖奈が質問する。

「以前、あの人は、〝どこかの居酒屋のマスターから漠皁組(まくそうぐみ)について教えてもらった事がある〟て言ってたじゃないですか。」

「でも……、数日後には〝新たに情報を得ようとしたけど、お店が改装中で無理だった〟と述べていました。」

「それが、なんか、嘘くさかったんで。」

意川が説明したら、自身の腕を組んだ筺が〝んん~?〟と首を傾げた。

「つまり…。」

「〝架浦さんは、漠皁組に関して知っていたものの、迂闊に尻尾を出しかけてしまい、どうにか取り繕った〟と、そう分析していたのですね。」

合点がいった様子の沖奈に、

「はい。」

「ですが、まぁ、ボクは、副総監でさえ疑っていたので、誰にも相談しませんでした。」

意川が伝える。

「なんでだ??」

「実質上のトップだろ、お前の派閥にとっては。」

(いぶか)しそうにしたのは、筺であった。

「だとしても、用心しておくべきでしょう?」

「こっちを〝ただの捨て駒〟として扱っているだけかもしれないので。」

「人間、何を考えているのか分かりませんからね。」

本音を吐露(とろ)した意川に、筺が〝ふむ〟と頷き、

「話しを戻させてもらうが……。」

「架浦も警察で無実だと判明したよな。」

「〝提出したスマホにも不審な点は見つからなかった〟と。」

「だとしたら、アイツは漠皁組と繋がっていなかったんじゃないのか??」

眉間にシワを寄せる。

それに対して、

「幾つかのことが推理できますね。」

「例えば、関東司令官を経由して、組長に情報を与えるとか。」

「或いは、架浦さんがスマホを二つ所持しており、警察に渡したのは“プライベート用”だった、みたいな。」

「他にも何かしらの方法があるでしょう。」

沖奈が語り、

「成程です。」

納得する筺だった…。


もう一台の自動車は、鐶倖々徠(かなわささら)副隊長がハンドルを握っていた。

後部座席には緋島早梨衣(ひしまさりい)隈本一帆(くまもとかずほ)が見受けられる。

重苦しい沈黙が漂うなか、

「やはり、宮瑚さんも“()”なのでしょうか?」

一帆が口を開いた。

「さぁ??」

「どうだろうな?」

「人を騙せるほど器用なタイプじゃなさそうだけど……。」

左隣の緋島が目を細めたところで、

「一理あるわね。」

「でも…。」

「楽観視してはダメよ。」

「もしかしたら彼女とも戦わないといけなくなるのかもしれないのだから。」

「きちんと覚悟を決めておきましょう。」

こう鐶が告げたのである。

「……、そうですよね。」

一帆は、頭では理解しながらも、まだ心が定まらずにいるようであった。



PM15:50過ぎ――。

六名が到着したのは[元・研究所]である。

駐車場には、パトカーを含めて、いろいろな車が停まっていた。

また、人間に限らずアンドロイドの警察も数多く待機している。

どうやら、敷地の周辺を完全に包囲したらしい。

一帆たちが車を降りたところ、隊服(・・)姿の二十人ほどが近づいてきた。

そのグループが、少し離れた位置で足を止める。

集団の先頭に居る“30代半ばらしき女性”が、

「東京組第二百一番隊の八幸(やさき)です。」

綺麗に一礼した。

背丈は170㎝くらいだろう。

スマートな体型である。

黒髪ショートで、ボーイッシュかつインテリな印象だった。

帽子とマントを装着していることからして、“隊長”に違いなさそうだ。

こうした女性に、

「あ、どうも。」

「十三番隊の沖奈です。」

「此の度は、ご協力いただき、ありがとうございます。」

彼もまた、会釈する。

「総監より〝沖奈隊長の指示に従うように〟と命じられておりますので、なんなりと申し付けてください。」

「ただし。」

「いつ妖魔が現れるか不明のため、何人かはそちらに対応させていただけると、ありがたいです。」

きっぱりとした態度の八幸に、

「ええ、勿論です。」

「まずは、相談しましょう。」

沖奈が優しく返す。

なお、[第二百一番隊]が派遣されたのは、沖奈が総監に頼んで打っておいた〝もう一つの手〟によるものであった…。



数分が経ち、隊長同士の話し合いが済んだ頃に、一台の“黒い自動車”が入ってきたのである。

おそらくは“覆面パトカー”だろう。

そのドアを開け、外に出てきたのは、宮瑚留梨花(みやこるりか)だった。

これを視界に捉えるなり、

「宮瑚さん!」

一帆が走りだす。

鐶と緋島も、続いて、駆け寄る。

「大丈夫でしたか?!」

心配する一帆に、

「あぁー、うん。」

「割と平気、でもない、かな??」

宮瑚は戸惑いを隠せないでいた。

男性陣三名が歩いて側まで来た流れで、

「ここに赴いたという事は、貴女は〝スパイではない〟と証明されたからでしょう?」

「だとすれば、改めて歓迎しますよ。」

「お帰りなさい、宮瑚さん。」

沖奈が微笑んだ。

それによって、

「……、うっ、ううっ、うぅ~っ。」

「さっくんたいちょぉー。」

悔しさと安堵が入り交じったかのように涙をボロボロと溢す宮瑚であった―。




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