36.急場
[漠皁組]の拠点へと足を運びつつ、
「ねぇねぇ、さっくんたいちょー。」
「十四番隊の副隊長とは、どーいう関係なのぉ?」
「昔っからの“仲良しさん”とか??」
〝くまりんの代わり〟とばかりに宮瑚留梨花が訊ねたら、
「あぁー。」
「僕は四十四番隊の出身でして…。」
「原城さんは、その時の先輩の一人ですよ。」
「殆ど喋ったことありませんでしたけれども。」
沖奈朔任隊長が穏やかに教えたのである。
この説明に、ひとまず〝ほっ〟とする隈本一帆だった。
道路の反対側からは、別の警察チームが歩いて来ている。
その集団のなかに隊服姿の人々がいる事に気付いて、
「“H.H.S.O”みたいだね。」
「何番隊かまでは知らないけど。」
意川敏矢が呟いた。
「総監によれば、今回は、それなりに動員しているみたいですからね。」
「なにせ、僕と隈本さんに危害が及びましたので、あのような事態が二度と起こらないように、“俟團組”に関するものを叩いておきたいみたいですよ。」
「このままでは“H.H.S.O”の沽券に関わりますので。」
こう語ったのは、勿論、沖奈であった……。
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[漠皁組]の本部は“和風の豪邸”である。
塀の南側に設けられている“木製の大きな門”は開かれていた。
敷地内の砂利を踏みしめながら、玄関へと進んでいたところ、待機していた黒スーツ達が「なんだテメェらは?!」「勝手に入ってきてんじゃねぇぞ!!」などと怒鳴りつつ、集まってきたのである。
約20人の彼らは、おそらく“下っ端”だろう。
立ち止まった宇山が、
「警察だ!」
“手帳”を差し出し、稲村が“令状”を提示した。
しかし、「それがどうした!?」「そんなもんでビビるとでも思ってんのか?!」といった具合に、連中は一歩も引こうとしない。
その最中、一人の男が屋敷内へと走って行ったのである。
ある一室の、床には“赤絨毯”が敷かれており、“重厚な長テーブル”と“高級な黒ソファ”が置かれていた。
腰掛けている幹部らが、何かしら話しをしているところに、
「会議中に失礼します!!」
「デカどもが“H.H.S.O”と一緒に乗り込んできやがりました!」
先ほどの男が報告したのである。
「まさか、定例会の情報が洩れていたのか??」
こう呟いたのは、スキンヘッドで、ガタイが良く、ブラウンストライプスーツの男性だった。
そんな40代後半ぐらいの幹部に、
「いや、偶然だろう。」
「しかし…、厄介ではあるな。」
このように述べたのは、50代半ば程の男である。
蛇柄のスーツを着用しており、髪はパンチパーマで、サングラスは黒い。
一人だけテーブルの正面に座っていることから、漠皁組の[親分]に違いなさそうだ。
薄グレーのサングラスを、右の中指で〝スチャッ〟と直した20代後半の男性が、
「俺が対応しましょうか?」
そう提案したのであった。
彼は、金髪ソフトモヒカンであり、白いスーツ&黒いワイシャツに、銀ネクタイ、といった格好である。
「能力者が相手なら、それが一番いいだろうな。」
「……、よし、任せた。」
親分が承諾したことによって、〝スッ〟と席を立つ“金髪モヒカン”だった…。
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屋外では、
「さっさと帰りやがれ!!」
反社どもと、
「おとなしく従え!」
刑事たちが、口論になっている。
下っ端らの背後より、
「おい。」
「道を開けろ。」
三人の配下を伴っている“モヒカン”が声をかけた。
振り返った黒スーツ達は、
「あ。」
「お若頭。」
「お疲れ様です。」
一斉に、お辞儀したのである。
「で??」
「捜査の内容は?」
こう質問した[若頭]に、
「漠皁組が〝危険薬物の製造販売を俟團組に命令していた〟との証言を得たので、いろいろと調べさせてもらうぞ。」
森川が伝えた。
それに対して、
「断ったら??」
若頭が尋ねたところ、
「公務執行妨害で逮捕だ。」
稲村が答えたのである。
「じゃあ、徹底抗戦だな。」
こう若頭が布告するなり、黒色ロン毛で紫スーツの男が、左腰に手を当てながら、前線に出て、
「発動。」
と、唱えるのと共に、右手を挙げたのであった。
それによって、警察と“H.H.S.O”が、眉間にシワを寄せつつ、両耳を手で塞ぐ。
「もしかして、超音波?」
こう推測したのは、原城である。
その間に、“黒色ロン毛”の右隣に並んだ“黒髪オールバックでグレースーツの男性”が、両の掌を広げて、
「発動!!」
最大幅10㎝×長さ20㎝くらいの“歪な石”を、扇状に50コ発射したのだった。
これらが直撃した刑事らが、
「ぐあッ!」
おもいっきり痛がる。
どうやら、膝を屈した者も少なくないようだ。
更には、“黒色ロン毛”の左側にて。
“茶髪ウルフカットの黒スーツ”が、右手で自分の首に触れ、
「発動。」
全身を銅に変化させたのである。
その男が、ダッシュして、宇山に勢いよく〝ガツンッ!!〟と膝蹴りを見舞ったのであった。
吹き飛ばされた宇山に、後ろの人々が巻き添えとなり、倒れてしまう。
「大丈夫ですか!?」
側に居た稲村が焦り、
「この酷い耳鳴りは、まだ終わらねぇのか??!」
森川がイラつく。
一帆たちも【超音波】に苦しんでいるなか、再び[石礫]を放つ“黒髪オールバック”だった―。




