27.往日・後編
「〝真相は闇に葬られた〟という訳ですか。」
そう伺った隈本一帆に、
「まぁ、そうなりますが…。」
「ただ、“H.H.S.Oの上層部”は、ある憶測を立てています。」
沖奈朔任隊長が伝えていく。
「もともと、半妖たちが、何処でどのような生活を過ごしているのかは、15年前から不明となっています。」
「しかし、およそ六ヶ月前に、初代の“東京組第十三番隊”が惨殺されたことによって、確信を得たそうです。」
「それが、先程あった〝半妖は世界中の国家機関を隠れ蓑にしている〟との話しになります。」
「前の十三番隊は、半妖の潜伏先や、なんらかの計画を掴んだので、抹消されてしまったのではないかと、そう、総監たちは考えるようになったとの事です。」
ここまで聞いた一帆は、〝はぁ〟とイマイチ理解できずにいるみたいだ。
「つまり……、〝半妖などの件を秘かに調べていた初代がたの動きを把握していた者らでないかぎり、襲撃など起こせる訳がない〟ということですよ。」
沖奈の説明に、
「あ!!」
〝ピンッ!〟ときた一帆が、
「要は、“H.H.S.O”の内部に半妖らがいるからこそ、逆に、初代がたの任務を知りえて、犯行に及んだという事ですね。」
そのような答えを導きだしたのである。
しかし、次の瞬間には、
「ですが、半妖たちは、何故、先代の皆さんを殺害せねばならなかったのでしょうか??」
といった疑問が浮かんだのだった。
「さぁ、それは全くもって分かりません。」
いささか困り顔になった沖奈隊長が、
「この真実を突き止めるために、僕たちは十三番隊に送り込まれたんですよ。」
「二代目として。」
こう続けたのである。
「成程、です。」
頷いた一帆ではあったものの、
「それが、どうして、みなさんが“スパイ”であり〝やがては殺し合わないといけいかもしれない〟のですか?」
腑に落ちず、新たに尋ねたのであった。
「まず…、僕たちは、歌舞伎町界隈の妖魔対策として、急遽、異動させられました。」
「なにせ、先代の十三番隊が全滅しましたからね。」
「他の隊員が代わりに治めていかないと、この地域の被害は甚大なものとなっていきかねませんので。」
「そこで、総監、副総監、関東司令官が、相談して、二代目メンバー及び、隊長と、副隊長を、決めました。」
「選ばれたのは、もともと所属していた隊で、一人だけ浮いていたり、トラブルメーカーだった存在です。」
「なので、周りでは〝左遷された〟と噂されています。」
「ま、否定は出来ませんけどね。」
苦笑いした沖奈が、
「ただ……。」
真顔となり、
「僕や、筺さんと、緋島さんは、総監による密命を帯びています。」
「これは、副総監派と関東司令官派も同じでしょうが…、主な任務は〝先代がたが殺されてしまった理由を探ること〟です。」
「それだけであれば問題ないのですが……、もし、“H.H.S.O”に複数の半妖が潜んでいるのなら、〝現在の十三番隊にも紛れているだろう〟と推察されているのです。」
「そんな敵の目的としては、僕らを監視するなかで、事件の詳細に辿り着こうものなら即座に仕留める、といったものでしょう。」
「また、本人の正体がバレた際にも、手を下そうとするに違いありません。」
そう述べたのである。
これを受けて、厳しい表情となった一帆が、
「残り四人の誰か…、もしくは、全員が該当しますね。」
そのように分析した。
「ええ、そうなります。」
沖奈は、一応に肯定しながらも、
「反面、仮に総監こそが黒幕だった場合は〝僕らの派閥が最も疑わしい〟という事です。」
別の可能性も示唆したのである。
「そんな……。」
言葉に詰まった一帆ではあったが、勇気を振り絞って、
「沖奈隊長は、半妖なのですか??」
と、訊ねたのだった。
「そうだとしたならば、簡単には認めませんよ。」
「ただね、隈本さん。」
「敵と味方は、慎重に見極めてください。」
「じゃないと、死に直結しかねませんので。」
〝ニッコリ〟する沖奈に、いつもどおり〝キュン♡ キュン♡〟してしまった一帆は、
(ズルい。)
誤魔化された感に困惑したのである。
暫しの沈黙が流れ、
「そういえば…。」
〝フ〟と思い出した一帆が、
「この間、三年前のことを、うっかり、宮瑚さんに喋ってしまいました。」
「〝沖奈隊長はアクションを起こさずに能力を発動していた気がする〟と。」
足を止めるなり、
「すみません!!」
「うろ覚えでしかなかったというのに、安易に口走ってしまって。」
深々と頭を下げた。
もしも宮瑚留梨花が半妖だったなら、一帆は、隊長の情報を渡してしまった事になるからだ。
或いは、架浦聖徒こそが敵であったり、関東司令官が主犯なのであれば、知られるのは危険かもしれない。
しかし、架浦には、宮瑚を通じて、既に伝わってしまっている。
「あー、そんなことがあったんですかぁ。」
「いいですよ、気になさらなくても。」
「結局は、隈本さんの記憶違いだったわけですし……。」
「本を正せば、早いうちに、そちらに内情を教えていなかった僕が悪いんですから。」
「さ、顔を上げてください。」
こう告げた隊長に従い、一帆が姿勢を戻す。
優しく微笑む沖奈が視界に入り、一帆の“トキメキ”が加速する。
「では、巡回を続けましょう。」
ゆっくり歩きだす隊長の横に、そっと一帆が並ぶ。
「今日はまた一段と風が心地いいですねぇ。」
穏やかな様子の沖奈とは対照的に、一帆は複雑そうだ。
仲間であろうはずの同僚たちの中に裏切り者がいて、それが自分の“想い人”かもしれないのだから、無理もない。
沖奈はもとより、現・十三番隊の誰とも、血みどろの戦いにならないよう、願わざるを得ない一帆であった―。




