22.疑惑
▼▽▼▽
現在――。
「で??」
「そこから、どうなったの?」
宮瑚留梨花の質問に、
「私と、沖奈隊長は、別々の救急車で、異なる病院に運ばれたみたいでして…、それっきりでした。」
隈本一帆が答える。
「でも、結局は、ご縁があって、二人は再会したんだね。」
〝ふむ ふむ〟と首を縦に振った宮瑚が、
「過去のことは理解できたけど……、なんで“さっくんたいちょー”に恋心を抱いたわけ??」
新たに尋ねた。
俯いた一帆は、
「きっと、危険を顧みず自らを犠牲にしてでも人々を護ろうとする姿に惹かれたんだと、そう思います。」
頬を赤くしつつ、そのように告げたのである。
「あー、指を〝パッチン、パッチン〟させながらの人助け、ね。」
宮瑚が述べたところ、
「それなんですが…、三年前の沖奈隊長は、なんのアクションも取っていなかった気がするのです。」
「先日、この事を、ご本人に伺ったのですが、否定されてしまいました。」
一帆が、こう返した。
「ん??」
「そうなの?」
眉をひそめた宮瑚に、
「ええ。」
「どうやら、私が、他の方と記憶違いしていたみたいです。」
「あの時は、私も必死でしたので、ハッキリしない部分が多々ありますもので。」
一帆が説明する。
それを聞いて、
「へぇー。」
何やら考え込む宮瑚だった……。
▼
昼食を済ませた宮瑚は、ビルの屋上に訪れている。
その側には、架浦聖徒の姿があった。
「沖奈隊長は、そもそも〝アクションを起こさずに能力を発動できるタイプ〟ってことか。」
独り言かのように呟いた架浦に、
「そうかもしれないんだけど、“くまりん”はイマイチよく覚えていないみたいだから…、決め付けるは、よくないかも。」
「でも、仮に“さっくんたいちょー”が敵だとしたならば、皆を油断させるために、騙している可能性もあるよね。」
このように宮瑚が主張する。
「ま、確かにな。」
架浦が頷いたところ、
「だとしたら、“くまりん”が可愛そうだなぁ。」
「最悪、“さっくんたいちょー”と戦わないといけないかも、だし……。」
宮瑚が顔を曇らせた。
そのタイミングで、架浦のスマホが鳴ったのである。
「もしもし??」
「…………。」
「分かった。」
「そんじゃあ、エレベーターの所で合流しよう。」
電話を切った架浦が、
「意川からだった。」
「パトロールの時間だから、オレ、もう行くわ。」
「お前…、あんま深刻になり過ぎるなよ。」
「まだ、隊長がスパイだとは断定できねぇんだし。」
宮瑚に伝えた。
これを受け、
「……、ん。」
どこか暗い表情で、視線を落とす宮瑚であった。
▼
五日が経っている。
今日は、一帆と意川敏矢が休みだった。
PM15:05頃に、[事務室]のドアを誰かがノックしたのである。
「はい?」
「どうぞー。」
沖奈朔任隊長に促されて、
「失礼します。」
部屋に入ってきたのは、二人の警察であった。
一人は、俟團組のアジトに乗り込んだときに指揮した40代後半の刑事である。
もう一人は、30代前半くらいのようだ。
ちなみに、どちらも男性だった。
「どうしました??」
沖奈に訊かれ、
「例の件で、お話しが幾つかありましてね。」
担当責任者が答えたのである…。
応接テーブルを挟んで、東側のソファに警察たちが腰掛けていた。
西には沖奈が座っており、その背後に隊員らが立っている。
お茶を出した鐶倖々徠副隊長も、沖奈の後ろに回った。
「それで?」
「あれから進展はありましたか??」
沖奈の問いかけに、
「それが……、いささか困っておりまして。」
軽く眉間にシワを寄せた責任者が、
「連中は、あの日、何人かのグループになって、各方面へとバラバラに逃げたみたいなのですが…。」
「裏道を使ったり、途中で車を変えたようでして、町中の防犯カメラに写っていなかったりもするため追跡しきれず、どこに潜伏しているのかは未だ不明です。」
「ヤツラの親元である“漠皁組”も匿ってなどいないようで、正直、手詰まりになっています。」
「一方で、俟團組に情報を売った内通者がいないかも洗ったのですが、警察関係には存在していませんでした。」
〝ふぅ――ッ〟と息を吐き、
「そこで。」
「貴方がたを取り調べさせていただきたいので、署までご同行を願えませんか?」
こう述べたのである。
「つまり……、僕たちが怪しい、と?」
沖奈が目を細めたら、
「端的に言えば、そうなります。」
「いや、気を悪くさせてしまったのであれば、申し訳ない。」
「ただ、そちらと俟團組とが水面下で繋がっているかもしれませんので、念の為に、ご協力していただけませんかね??」
担当責任者が、そのように返したのであった。
「成程、了解しました。」
「ですが、こちらも仕事がありますので、全員が揃って赴くのは遠慮させてください。」
「いろいろ滞ってしまいますので。」
沖奈が意見したところ、
「それでは、まず、どなたが、お越しくださいますか?」
責任者が尋ねたのである。
それに対して、
「だったら、隊長だろう。」
「“俟團組のビル”に向かう際に、警察が連絡したのは、隊長だけだったからな。」
「そこからすぐにでも、ヤツラに情報を流せたんじゃねぇの??」
このように告げたのは、架浦だった。
「お前!」
「沖奈隊長を疑っているのか?!」
声を荒げた筺健は、今にも架浦を殴りかねなさそうだ。
そこに割って入った緋島早梨衣が、
「だったら、テメェにも、そういうことが出来た筈だよな?」
「あんとき、アタシとパトロールに行こうとしたら、先に、トイレに向かっただろ。」
「そこで俟團組に電話してたんじゃねぇか??」
こう指摘したら、
「まぁ、そうくるだろうな。」
「けどよ、緋島だって、その時に一人になっていたんだから、どこにでも連絡できただろう?」
架浦が反論したのである。
「あん!?」
「コイツっ」
と、キレそうになる緋島を、
「他にも!!」
即座に制した架浦が、
「副隊長にだって可能性はあるよな??」
「女子ロッカールームで、一人きりになった時間帯があるんだから。」
鐶に視線を送った。
これを、
「そうですね…。」
「そこに関しては、否めません。」
副隊長が認める。
「ミッツ―!」
「あんた、なに考えてんの?!」
「皆とケンカでもするつもり!??」
睨みつけてきた宮瑚に、
「いやいや、オレは、ただ、十三番隊の無実を証明したいだけだぜ?」
「だからこそ、敢えて、伝えたんだけど??」
肩をすくめる架浦であった―。




