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13.立腹

[事務室]のドアを勢いよく〝ガチャッ!〟と開けた架浦聖徒(みつうらせいんと)が、

「宮瑚!!」

「テメぇ!」

エレベーターでの件を抗議しようとしたら、

「かなっちふくたいちょー!!」

「あーし、朝から、あのチャラ男と一緒にパトることになってんだけど、ほんっっっっと不愉快だから、別の人とチェンジさせてもらえない!?」

「今日、さっくんたいちょー休みだから、代わりに許可ちょうだい!」

宮瑚留梨花(みやこるりか)が怒りを露わにしつつ、資料のコピーを終えた鐶倖々徠(かなわささら)副隊長に申し出た。

状況を理解できない鐶が、

「え……??」

引き気味になったところ、

「なに? 喧嘩??」

「仲が良いねぇ。」

応接用のソファに腰掛けてゲームをプレイしていた意川敏矢(いかわとしや)が冗談半分で茶化したのである。

これに、

「違うから!!」

宮瑚と、

「そんなんじゃねぇよ!」

架浦が、ほぼ同時にツッコミ、

「おぉー、こっえぇ~。」

意川が肩を(すく)めておどけたタイミングで、

「ちぃーす。」

出社してきた緋島早梨衣(ひしまさりい)が、

「ん?」

「なんかあったのか??」

首を傾げた。

誰もが一瞬フリーズしていたら、それまでディスク席で静観していた筺健(かごまさる)が、

「いいんじゃないですか? 鐶副隊長。」

「このまま二人がギクシャクしていると、一日中、空気が悪くなって、我々も仕事に集中できないでしょうから。」

「宮瑚隊員の要望に応えてあげても差し支えないかと…。」

そう述べたのである。

「……、分かりました。」

「では、架浦さんや宮瑚さんと組む相手を“あみだくじ”で決めましょう。」

「公平に!」

このように提案する鐶であった…。



AM09:00ごろ。

鐶副隊長と宮瑚が、屋外を巡回している。

架浦は二日酔いで頭痛が酷いらしく、“午後の第二部”にしてもらったようだ。

ビルから北西へと歩きつつ、

「それで??」

「何が原因で衝突しているの?」

さりげなく鐶が尋ねた。

彼女にしてみれば、[関東司令官]の派閥である架浦と宮瑚が対立を深めれば、優位になれるので、隙を窺いたいのである。

「あーしは、皆と平和的な関係で、やっていきたいんだよ。」

「でも、ミッツ―は、それを認めようとはしてくれない。」

そう語る宮瑚に、

「なぜ??」

鐶が疑問を投げかける。

何かを察したのか、

「ん~、なんつーんだろ?」

「……、ミッツ―は〝馴れ合いになるのがイヤ〟みたいな??」

「ほら、こういう職種って、死んじゃう危険性が高いっしょ?」

「だから…、〝同じチームであっても、ある程度の距離を保っていないと、いざというときに冷静な判断がとれなくなる〟とか??」

「〝できるだけ情が湧かないようにしておく〟的な?」

「そんな感じなんだけどさぁ……、本人は全然やれていないんだよね、それ(・・)を。」

「ま、結局、あーしが言いたいのは、〝ミッツ―は口だけ野郎〟ってことだよ。」

喋り倒して誤魔化す宮瑚だった。

どこまでが彼女の本音なのかは知る術が無いなかで、

「むこうの意見も聞いてみない事には結論づけが難しいけど…、貴女が正しいのかもしれないわね。」

副隊長が納得する。

いや、〝味方になってあげているフリ〟なのかもしれない。

鐶にしてみても、内輪で死者を出さずに()を確保したいところである。

これを成功させるためには、他派閥の人間を懐柔してでも情報を掴み、誰が“スパイ”なのかを見極める必要があった。

彼女もまた[東京組第十三番隊]への想い入れが強くなっているのだから……。



PM16:00過ぎ。

金髪ハーフたる架浦は、色黒スキンヘッドかつクォーターの筺と共に、[本拠地]より南東に向かっている。

なお、午後の13時~15時までは、緋島&意川がパトロールしていた。

さて…。

「いい加減に仲直りしろよ、架浦隊員。」

「お前ら、ずぅ――っと、不貞腐(ふてくさ)れていて、正直やりづらいぞ。」

筺に指摘され、

「いや、俺は別に悪くないっすから。」

唇を軽く尖らせた架浦が、

「まぁ、宮瑚のヤツが謝ってきたら許してあげなくもないっすけど。」

そのように返したのである。

「お前……、やっぱり〝子ども(・・・)〟だな。」

「この半年で、分かっちゃいたが。」

眉間にシワを寄せた筺に、

「いやいやいやいや、オレは割と大人であって、アイツの方が〝ガキ〟なんすよ。」

架浦が若干すねつつ反論した。

「宮瑚隊員は未だ10代なんだから、ある程度は俺たちが譲ってあげるべきだろ。」

筺に諭されて、

「…、へぇーい。」

やや不服そうに答えた架浦が、

「筺さんて、ホント、しっかり者なのに、なんで十三番隊なんかに飛ばされちまったんです??」

それとなく訊いてみる。

「俺は、こういう風貌だし、コミュニケーションが苦手で、あまり他人と会話していなかったからな。」

「周りは怖がっていたのかもしれん。」

「あの頃の隊長や副隊長も、扱いづらかったんだろうよ、俺のことを。」

筺が経緯を説明したら、

「なんか以外っすね。」

「筺さん、親しみやすいのに。」

「お世辞とかじゃなく、本当に。」

架浦が真顔で告げた。

「そうか?」

ちょっとだけ〝ふぅ~む??〟と考え込んだ筺が、

「こっちに配属されてからというもの、緋島隊員と宮瑚隊員が良くも悪くも積極的にスキンシップを図ってくれたからな。」

「気が付けば、心を開いていたよ。」

「お前と意川隊員も俺にビビらず接してくれるし、沖奈(おきな)隊長に鐶副隊長は優しいしで、〝十三番隊になれて寧ろ良かった〟と、嘘偽りなく思っている。」

いささか照れくさそうに吐露(とろ)したところで、〝ビィ――ッ!! ビィ――ッ!! ビィ――ッ!!ビィ――ッ!!〟という警報音が鳴り響き、

『およそ5分後に“時空の(ひずみ)”が発生し、妖魔が出現します。』

『規模は小さめですが、近隣の方は念の為に避難してください。』

『予測される場所は――。』

“機械的な女性の声”での放送が行われたのである。

「少し遠いな……。」

「走るぞ! 架浦隊員!!」

筺に声を掛けられ、

「えぇ~?」

「また、このパターン??」

うんざりする架浦であった―。


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