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濁った瞳

しれは、突然の出来事だった。

まるで地震のように嵐のように、何の前触れもなく始まった。




「なぇ。『ナナギ』を知らない?」

和やかに談笑しながら旅路を歩んでいた一行の目の前に、少年が現れた。

謎の質問と共に。

「え…と、どちら様で?」

突然のことに動揺を隠せず硬直したメンバーを代表して、クシナが少年に問い掛けた。

少年は目を細めて微笑む。

すらりとした長身に、赤いメッシュの入った茶色の髪。

緑と青のオッドアイ。

柔らかに整った顔立ちを除けば、その雰囲気も含めて何となく狼のようなイメージを持たせる。

鼓膜だけでなく、脳まで震わせるような深い声に覚えがある気がして、ナナギは少年をじっと見た。

頭の先からつま先まで見回し、記憶を巡る。

嫌な予感がした。

考えるのをよそうと思った時にはもう遅く、ナナギの脳内は思い当たる人物を探し当てていた。

「…っ」

ナナギは息を呑んだ。

まさか。

そんなはずはない。

でも…。

一瞬で顔を真っ青にして、ナナギは隣にいたリィーリアの腕にしがみ付いた。

「きゃっ。…どうしたの? ナー…」

名を呼びかけて、慌ててリィーリアは口をつぐむ。

この状況で、ナナギがナナギだとばれてはいけない。

さすがにそれくらいは分かる。

明らかに様子のおかしいナナギの身体を抱き寄せ、リィーリアはさりげなく後ろに下がった。

入れ代わりに、クリスがナナギ達の前に立つ。

「いきなり何だよ。名前も言わずに、それはちょーっと無礼なんじゃねーか?」

依然、にこにこしたままの少年を容赦なく睨みつける。

「やだな。そんなに警戒しないでよ。僕はシーカ」

「…どういう用件で、私達に声をかけたんです?」

シャオロンも警戒心を剥き出しだが、しかし口調は冷静なままだ。

「だから、『ナナギ』を探してるんだ。知らないかな? くるくるした真っ赤な髪に、金色の目をした女の子」

くるくると文字通り指を回して、少年ことシーカはまんまナナギを説明した。

「で、その少女とやらに貴方は何の用事があるのでしょう?」

「それを君に言う必要はある?」

「いいえ、ありませんよ。ただの興味、というものです」

にっこりと微笑んでシャオロンは首を振る。

胡散臭いまでの完璧な笑みに、シーカはゆるりと頬を緩ませた。

「いいね。そういう、何考えてるんだか分からない濁った瞳、大好きだよ」

「ほぅ。それは光栄で…」

「訂正なさい!」

張り詰めた空気を壊すように、リィーリアの高い声が響いた。

驚いて振り向いたシャオロンの瞳に、拳をきつく握ったリィーリアが映る。

ナナギがしがみ付いたままの腕を震わせ、リィーリアは怒りに頬を赤く染めている。

「なに? 急に」

「訂正しなさいと言ったのよ。今の言葉を撤回して…っ」

「どうしたのさ。そんなに怒って」

「シャオロンを侮辱することは許さなくてよ。貴方に何が分かるの。一目見ただけでシャオロンの何が分かると言うの!」

「リィーリア様」

牙を剥き出しに声を荒げるリィーリアに、シャオロンが名を呼ぶことで静止をかけた。

「気にしてませんから。大丈夫です」

「でも…」

「大丈夫です。ありがとうございます」

尚も引き下がろうとするリィーリアをやや強引に押さえて、シャオロンはシーカに向き直った。

リィーリアの剣幕にも全く動じていないようで、シーカを笑みを絶やしていない。

「申し訳ありませんが、私には心当たりがありませんね」

怖いくらいの笑みにも怯まず、シャオロンはそう微笑んだのだった。


うーん。

我ながら、このサブタイはどうなんだと思います。

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