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愛しています

「ロマンチックだね~…」

「えらく情熱的なことで」

「…歯が浮く。よくあんなこと言えるよな」

「言おうと思えば、案外言えるものですよ」

感動的なワンシーンを繰り広げる二人から少し離れて、ぼそぼそと話す四人組。

やはり年頃の少女だけあって、そういうものに憧れはあるのか、ナナギは顔を赤らめながらもソフィア達を見つめている。

「へー? よし、じゃあ言ってみろよ」

先ほどのシャオロンの発言を聞き逃さず、クリスがにやにやとした笑みを浮かべた。

「…構いませんが、私は幼女に愛を囁く趣味はありませんよ」

「ぶはっ。そりゃそーだ。頭にロの付く変態野郎でもなきゃなー」

「ええ。しかも貴方中見男ですしね」

「んじゃ、ナナギに言えよ。それなら問題ないだろ?」

「まあ、そうですね」

特に動じることなく、いつもの無表情で頷くと、シャオロンはナナギに向いた。

「えっ! 何であたし!? リィーリアさんでいいじゃん!」

「あんな年増は論外ですよ。準備はいいですか?」

「いいですか、ってちょっと待ってよ~!」

淡々としたシャオロン相手に騒いでいると、自分ひとり気にしすぎているように思えてくる。

いや、実際にただの演技なんだけどさ。

そう、これは演技演技演技…。

「…分かった。ドンと来い!」

半ば自分に言い聞かせるようにして覚悟を決めると、ナナギは顔を上げた。

「ではそうします。ナナギ」

「は、はいっ!」

手を握られて、声が裏返った。

至近距離で見つめられ、早くもナナギは覚悟が折れそうになる。

思わず顔が引けそうになるナナギの頬を、反対の手で撫で、シャオロンはいまだかつてないくらい柔らかく微笑んだ。

これだけ見ると、かなり甘酸っぱい赤面シーンなのだが、少し視界を広げてみると胡坐をかいて可笑しそうに笑いを噛み殺しているクリスがいるので、何かもうそれだけで雰囲気ぶち壊しである。

しかも、軽く空気と化しているチサヤが胡散臭そうなものを見るように、顔をしかめている。

しかしそんなことは塵とも気にせずに、シャオロンは続ける。

「愛しています。貴女が傍にいてくだされば、私は他には何も望みません。今、貴女をここから連れ去り、私だけのものに出来たらどんなによいのでしょう。それが出来ないのならば、せめてこの瞬間だけでも、私のものでいてください…」

「へ。えと、その」

「すっげー! シャオロンかっけー! 惚れる!」

「幼女に惚れられても…」

「いや、冗談だっつの」

かあぁ、と顔を真っ赤にしてどもるナナギを差し置いて、クリスはげらげらと笑い出した。

「今の台詞即興か?」

「いえ。以前読んだ本からお借りしました」

「て、照れるね~。演技って分かってても恥ずかしいよ」

「寒い。やっぱ俺は絶対言えねぇ」

有り得ねぇ、と腕をさすりながらチサヤは繰り返す。

そんなチサヤに、ナナギは不思議そうに首を傾げた。

「じゃあ、チサヤは好きな人にどうやって告白するのさ?」

「はぁ? んなの、別にそんなこっぱずかしいこと言わなくても、十分出来るだろ」

「そうかなぁ…。ちょっと言ってみてよ」

「絶対ヤダ」

断固拒否。

とばかりにチサヤはきっぱりはっきり断言し、ついでに首も横に振った。

途端、ナナギは不満そうに唇を尖らせる。

「えー! 聞いてみたいのに~。あ、別にあたしに向かって言えってことじゃないよ? クリスにでいいんだよ」

「もっとやだよ、馬鹿!」

「オレを巻き込むなっつーの。オレだって嫌だよ」

「大体なぁ…」

ふい、とチサヤは視線を逸らす。

面白がって、わざと背けた顔を覗き込んでくるクリスに、思い切り顔をしかめてから、チサヤは続ける。

しかしクリスもわざわざ逃げているというのに追いかけてくるとは、大概いい性格をしている。

「そういうのは、好きなやつの前でだけ言えばいいんだよ。べらべら言いまくるもんでもねぇだろ」

「お。いっちょ前にかっこいいこと言っちゃって」

「茶化すなよ! 折角いいこと言ったのに!」

にやにやといつもの意地の悪い笑みを浮かべるクリスに、チサヤは眉を吊り上げる。

そんな二人を背に、シャオロンは一人小さくため息混じりに呟いた。

「躊躇なく言った私の立場はどうなるんでしょうね…」


予告通り、くだらない会話。

このパートはいらなかった気がしないでもない…。

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