表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/61

引き際と自分の力量

「なんか、音がしないか?」

歩くのを再開して、少し経った頃クシナがふと足を止めた。

釣られて後続の皆も立ち止まる。

「言われてみれば…」

「ん。微かだがするな」

「な、何の音がしてるの!?」

同調するシャオロンとクリスに、ナナギは小さく首をかしげた。

幽霊じゃありませんように幽霊じゃありませんように…。

心の声が見事にだだ漏れだ。

クリスにもそれが伝わったのか、彼はにやりと口角を上げる。

「さぁーな? ゾンビかな、ミイラかな~」

「ひいいぃぃっ!!!」

まだクリスの予測の段階だというのに、ナナギは顔を思い切り引きつらせた。

またそれを面白そうに眺めながら、クリスは声を上げる。

「ゴスロリ、ナナギからかうのやめろよな」

「お? なんだ正義の味方気取りか?」

「ちっげぇよ! 俺の手が痣だらけになるっつってんだ!」

確かに、ナナギが怯える度に繋いでいる手にめいっぱい力を込めていた。

だからと言って、所詮はナナギの力だ。

痛いとは思ってもさすがに痣までは出来ないだろう。

明らかな嘘に、クリスは目を細めた。

「ほー。…だとよ? ナナギ」

「う」

クリスの問いかけに、ナナギが決まり悪げに苦笑した。

それから隣のチサヤを見上げる。

「…離した方がいい?」

子犬のように縋るような瞳に、チサヤが少したじろぐ。

「べっ、別にもういい!」

ちくしょーゴスロリ、覚えてやがれ!

口パクで悪態をついてから、チサヤはふんっとそっぽを向いた。

「…緊張感の欠けらもないな」

ぼそっとクシナが呟く。

仰る通り。

「こんなのでいいのか?」

クシナはぶつぶつ悩んだ後、まぁいいかと気を取り直した。

徐々にこのお気楽メンバーに懐柔されつつある。

唯一の常識人である彼まで変人になってしまったら、果たしてこのパーティはどうなってしまうのだろうか…?

「よし。俺が様子を見てくるから、みんなはここで待っててくれ」

そんな一抹の不安を残しながらも、クシナはリーダーらしくそう言って、皆の顔を見回した。

「一人で大丈夫かしら?」

ふとリィーリアは心配そうに声を上げる。

「大丈夫だよ。これでも、一応冒険者一家だからね」

「そーそ。引き際と自分の力量は心得てんだよ」

安心させるように笑ったクシナの言葉にチサヤが続け、二人は顔を合わせてまた笑った。

「そう? なら…気を付けてね」

「リィーリア様にしては珍しく、気の利いたことをおっしゃいますね」

控えめに手を振ったリィーリアに、シャオロンが目を丸くする。

一体シャオロンの中でリィーリアはどういう存在なのだろうか。

「まあっ! シャオロンはまたそんな事言って!」

「事実ですから」

まさに悪びれないの図。

憤慨するリィーリアにシャオロンは飄々と言ってのけ、形のよい唇を三日月にした。

「あー…。じゃあチサヤ」

「なに?」

「行ってくるけど、何か怪しいものがあったら戻ってくるからそれまで動くなよ。あと、五分…いや三分経っても俺が帰ってこなかったら、こっちに来てくれるか?」

「はいはい。オーケーオーケー」

言わなくても分かってる、とばかりにチサヤは両手を顔の前で振った。

「そうか。じゃあ、また後で」

「気を付けてねーっ!」

ナナギの声に押されるように、クシナは身を翻して闇に消えていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ