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主と下僕

「シャオロン! どこにいるの!?」

薄暗い室内に、甲高い声が響き渡る。

声から察するに、まだ若い女なのだろう。

彼女はきょろきょろと辺りを見回し、目当ての人物を探した。

「ちょっと、シャオロン!?」

「そんなに叫ばなくても、十分に聞こえますから。無駄に体力使うのは止めた方がいいですよ」

更に声を張り上げた女の背後で、アルトの返事が返ってきた。

「しかし、困りましたね。まさか魔界が地上を乗っ取ろうとしているなんて」

大して困った素振りも見せずに、シャオロンと呼ばれた少年は淡々と言う。

薄暗闇でも分かるほどに、彼の黒髪は艶を持っている。

少々童顔な事を除けば、実に整った顔立ちをしていた。

「全くだわ。わたくしは魔城でのんびり暮らせるのなら、地上なんて要らなくてよ」

「魔界人が皆あんたみたいに平和ボケしてたら何の問題も無かったんですけどね」

「シャオロン、貴方今わたくしをあんた、とか呼んだわよね?」

ぴくりとこめかみを引きつらせて、女は扇を広げた。

そんな彼女に、シャオロンは面倒くさそうな顔をする。

「確かに言いましたけど、何か問題でも?」

全く悪びれる気配ゼロだ。

しかも無表情。

「問題ありまくりよ! あろうことか主をあんた呼ばわりなど言語・・・」

「尊敬に値しない人物であれば、多少の暴言は許されると思いますが?」

女の声を遮ってひょうひょうと言い放つシャオロン。

いい度胸してますね。

「何、さらりと言ってるの!?」

「真実を述べたまでです。そんなことよりも、リィーリア様。どうするんですか?」

主の怒りをそんなこと、の一言で片付けたシャオロンはまたも無表情で言った。

「うう・・・。わたくしは無駄な争いは好まないのよ」

「んなこと知ってます」

「あ、そう・・・」

半泣きなリィーリア。

シャオロンはとにかく辛口だ。

「で、魔物側につくのですか、人間側につくのですか?」

「人間側では、勇者をたてるというのだけど、それは本当かしら?」

「らしいですね。実力のほどは分かりかねますが」

リィーリアの質問に、彼はポケットのメモ帳を取り出し確認する。

「なら、わたくしは人間側につこうかしら。まぁ、勇者とやらがそれなりの力を持っているのなら」

くつりと、リィーリアは薔薇色の唇を三日月型に曲げた。

丁度差し込んだ月明かりに、リィーリアの姿が照らし出される。

ウェーブのかかった長い闇色の髪。

怖いくらい美しく整った顔立ち。

出るところは出て、引っ込む所は引っ込んでいる、完璧なスタイル。

それはまさしく、妖艶な美女だった。

そう、背中に生えた黒く大きな翼以外は。

「シャオロン、試す方法はあるかしら?」

「・・・いくらでもありますが」

「そう。じゃあ試してみましょうか」

「はい。かしこまりました」

こうべを垂れて、シャオロンは深く敬礼をしてみせる。

そこに、先ほどまでの毒舌な少年の姿は無い。

「なら・・・・・・・ぁ」

「どうしました?」

「えーと、その・・・」

言いにくそうに、リィーリアはきょろきょろと辺りを見回した。

「シャオロンは、それで平気かしら? その、わたくしについて、魔物側を裏切ってしまったら、余計に・・・」

「構いませんよ、そんなこと」

リィーリアの言葉を遮り、シャオロンはあっけらかんと言い放った。

彼女が驚くくらいに、あっけらかんと。

まだ何か言いたげなリィーリアの瞳から目を逸らして、ふっと笑う。

「私は、リィーリア様のことをお守りするために存在するんです。リィーリア様がいいと言うならば、他人なんかの目など気になりませんよ」

別に、その声色には恋愛感情が混じっているとは思えなかった。

だが、二人の関係の強さを思わせる言葉だった。

主と、下僕。

それは、ある意味恋人なんかよりもずっと強い絆を持っているのかもしれない。

双方心から信頼し合えているのなら。

「シャオロン・・・」

「貴方の脳みそは只でさえ容量が少ないんですから、余計なことは考えずに、大事なことだけ考えていてください」

ちょっと感動してしまったリィーリアに、シャオロンはおまけとばかりに、毒舌を放った。

勿論、威力は絶大だ。

「シャオロンッ!!!」

さっきまでの、少しいい雰囲気はどこへやら。

「全く、半魔なんかに負けては示しがつきませんよ? 力でも、頭でも」

「だまらっしゃい! もう、さっさと試してきなさい!」

癇癪を起こしながら叫んだリィーリアにもう一度笑みを向けて、シャオロンは窓から翼をはためかせ飛び立った。

そう、灰色の翼をはためかせ。

こんにちは。

椎名です。

今回は、予告したとおり、場面変わって魔界でのお話です。

はい、予測がつくとおり、この二人はこれからもけっこうちょくちょく登場します。

もしかすると仲間になるかもしれないし。

敵対するかもしれません。


次話は、場面戻って、パーティの続きです。

メンバーはどんな人たちなのかを、書きたいと思います!


もし感想いただけたら、嬉しいです。

では。

              瑞夏

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