ゆーれーじょー
「あう~。まだ頭痛い…」
こめかみを押さえながら呟いたナナギに、隣のチサヤも頷く。
「つーか、俺記憶ねぇんだけど」
「あたしも…」
どよーん、と暗雲立ちこめる表情で二人は同時にため息をついた。
覚えてはいないが、なんかいやな予感がする。
そんな感じだ。
「俺、朝起きたら目が真っ赤に腫れてたんだけどなんでだろう?」
悩ましげに首をかしげるクシナ。
泣いたからです。
それは泣いたからです。
「クリスとレイはぴんぴんしてるよね」
「ん? はっ。お前とオレを一緒にするな」
ナナギの言葉ににやりとするクリス。
どうやら本当に強いらしく、次の朝も元気いっぱいだった。
見た目子供なのに…。
むぅ、と眉をひそめたナナギの思いを汲み取ったのか、クリスは鼻を鳴らした。
「オレは生憎、お前みたく頭の中までガキじゃないんでな」
「まで…って、それじゃあたしが見た目も頭もお子様みたいじゃないの!」
「違うっけ?」
「もうっ!」
失礼しちゃう、と頬を膨らませてナナギは憤慨する。
それを可笑しそうに眺めながら、クリスは横を歩くレイに言葉を投げた。
「おい、次はどこに行くんだ?」
「さぁ? そういう事はクシナに聞いたほうがいいと思うよ」
「そうか」
にっこりと首をかしげたレイにサンキュ、と片手を上げクリスは後ろを振り向く。
「クシナ! 次の目的地どこだ?」
クリスの声に、まだ悩んでいたクシナが顔を上げた。
「え? あー…」
まだ決めかねていなかったのか、クシナは二三度考え込むように頭を捻り、それから少し笑った。
「この先に、幽霊城があるって聞いたことあるんだ。周辺を通る人が不気味がってるから、様子見でもどうだ?」
「「ゆーれーじょー…」」
何故か、二つの声が重なる。
「ん?」
「く、クシナ…その幽霊城って…」
「本当に幽霊出んのか?」
「多分。何人か襲われたりもしてるらしい」
クシナの言葉に、ナナギとチサヤの顔が分かりやすく青ざめていく。
「ちっ、ちなみにどういうお城…だったりするの?」
「詳しくは知らないが、昔栄えていた王族の城らしい。だが、ある時家臣の裏切りにあったらしくな、しかもそいつが少しいかれた野郎で、王、女王、姫、そしてその姫と愛し合っていた町の男を残酷に殺したらしい」
「へぇ。町の男?」
興味があるのか、クリスはクシナの傍に近寄った。
「ああ。こっそりとだがな。丁度その日も逢瀬の約束をしていて、城に姫を迎えに来ていたらしい。それで…」
表情を曇らせ、クシナは苦しそうに瞳を伏せる。
人情に厚い彼だ。
話しているうちに感情移入してしまったのだろう。
「ど、どうしても行かなきゃ駄目?」
ナナギが控えめに口を挟んだ。
体どころか、茜色の髪の先まで震えている。
よっぽど苦手らしい。
「な、なんだよナナギ。お前怖いのか?」
「チサヤこそ、顔っ青いよ?」
「こ、これは元からだ!」
そんなわけないだろうよ。
青人なんて聞いたことない。
苦しい言い訳を並べ立てながらも、チサヤはやっぱり青ざめている。
「…んじゃ、ま幽霊城に行くとしますか」
クリスの宣言に、二人が猛反発したのは言うまでもない。
こんにちは。
椎名です。
今話から新章突入!(?)
~幽霊城編~となっております。
前回はほとんどナナギ以外活躍できなかったので、今回はオールキャストでいこうと思います!
では。
瑞夏




