元気をわけて
『………で?』
「あ、あれ?」
威勢よくあげた掛け声に反し、目の前のクリスは白けた表情でナナギを見ている。
もちろん、姿は半透明のままだ。
「おかしいなー…。出来たと思ったんだけどなー」
決まり悪げに頭を掻くナナギに、クリスは呆れ顔だ。
『ばーか。そんな簡単に出来るかよ』
「いや。ま、待って! ちょっともう一回…」
そう言って、ナナギは再度クリスのリボンを握り締めた。
「てやーっ!」
「ナナギ…。少しいいですか?」
かれこれ十分は経っただろうか。
無駄に意気込んでは失敗して、クリスに馬鹿にされる、といったパターンを繰り返していたナナギに、シャオロンが控えめに声をかけた。
「なに~?」
うっすら涙を浮かべナナギは振り返り、悔しそうに眉をひそめる。
横ではクリスが、ほら見ろとでも言うようにナナギを見下ろしていた。
「一体何がしたいのかは分かりかねますが、魔力を受け渡したいのでしたら、こうするのですよ」
ゆっくりとシャオロンは立ち上がり、ナナギの手に自分の手を重ねた。
「あ、待って待って! 教えてもらっちゃ駄目なの!」
先ほどのクリスの言葉を思い出し、ナナギは首を振って拒む。
そんなナナギに首をかしげながら、シャオロンは薄く微笑を作った。
「では、私がナナギに魔力を送ってみますから、感覚を掴んで下さい」
ナナギはクリスに確認をとるように目をやる。
『そのくらい、いーんじゃないの?』
「じゃあシャオロン、お願いしていい?」
「承知しました」
シャオロンはナナギに手を重ねたまま、軽く目を閉じた。
すると、数秒もしないうちに重ねた手が光りだし、やがて熱を帯び始める。
「わ、わわ…」
どくん。
と、何かが体のなかに流れ込んでくるような不思議な感覚に、ナナギは思わず手に力を込めた。
まるで血液が逆流しているみたいだ。
でも、何故か力が満ちてくる。
心地よい。
「と、まぁこんなものですね」
「ふぁ…」
シャオロンは早口にそう言うと、またいつもの無表情で離れた。
『どうだよ? コツは掴めたのか?』
クリスの声に、ナナギはまだふわふわとした意識を必死で呼び起こし、彼に近づいた。
無言でクリスのリボンに手を置き、瞳を睫毛の奥に隠す。
よく分かんないけど。
魔力の譲渡って、つまりは元気をわけてあげるって事だよね?
だから、相手を思いやって…。
それで…。
考えを巡らせるうちに、段々と手のひらが温かくなるのをナナギは感じた。
『いい感じじゃん』
クリスが柔らかく呟く。
その声に小さく頷きながら、ナナギは神経を集中させた。
目を閉じているのに、目の前に光球が見える気がする。
………行け…っ!
こんにちは。
椎名です。
もうすぐ冬休みが終わっちゃいます~・・・。
宿題ピンチのくせに、ちゃっかり更新しちゃいました。
学校始まっても、しっかり更新できるように頑張りますね。
では。
感想とかもらえると、嬉しいです。
瑞夏