かかってらっしゃい
「……装備屋に、行かなければいいのよね?」
小首を傾げて、リィーリアがレイを見た。
闇の色をした髪がふわりと揺れる。
「多分。でも…なんか嫌な予感がするんだよねー」
「まぁ! 予感だけで、わたくしに危険を侵せと仰るの!?」
レイの一言に、リィーリアは大袈裟なまでに声を上げた。
まぁ、の部分でご丁寧にも、手を口に当てる。
どこぞの貴婦人よろしく驚くリィーリアに、レイは苦笑を浮かべた。
「危険を侵せとまでは言わないよ。ただ、少し様子見くらいしないかな、と」
「それが危険と言うのよ! もし何かあったらどうするというの?シャオロンもいないのに!」
「でも、僕達の目的は魔物退治だよね?」
ごもっともだ。
まさしく正論な意見に、リィーリアは言葉につまる。
しかも、柔らかな笑顔のオプション付きだ。
なんか、もう有無を言わせない感じがある。
「わ、分かったわよ。行くわよ、行けばいいのでしょう?」
「分かってくれて嬉しいよ。さぁ行こうか」
「………シャオロン探しも手伝うのよ?」
ふい、と顔を背けたリィーリアに、レイは今度は苦くもなく策略もない笑顔を浮かべる。
「仰せのままに。王女様」
「な…っ」
真っ赤になったリィーリアに。
あ、リィーリアなら王女様じゃなくて女王様かな。
なんて、レイが思ったのは秘密だ。
「いぎゃあっ!?」
微妙に可愛くない悲鳴を上げて、ナナギは顔面から地面にダイブした。
ズッシャーッと、とてつもなく痛そうな摩擦音がして、ナナギは倒れる。
「つ………」
「ひゃおろんごめん…」
ついでに、未だ気を失ったままのシャオロンも、道連れに滑り込んだ。
………。
「いひゃい…」
しばしの沈黙の後、ナナギはむくりと起き上がり、鼻をさする。
小さな鼻は赤くなり、なんだか痛々しい。
後ろの方からは、魔物の咆哮が轟いている。
ぴくり、とナナギの白いこめかみが動いた。
心なしか、頬も紅潮している。
「……あーもーっ! 飽きた! 走るの飽きたっ!」
衝撃発言だ。
ナナギは声高にそう宣言すると、シャオロンから手を離した。
ドサッとシャオロンが落ちる。
「う……」
「分かったわよ。どーせ、埒あかないもんね」
妙に目が据わっていた。
しかも、呻いたシャオロンは無視だ。
徐々に近づいてくる叫び声を睨み付ける。
中指を曲げて、ナナギは不敵に笑った。
「全員まとめて、かかってらっしゃい」
……まともに戦ったことないくせに。
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
こんにちは。
椎名です。
いよいよナナギちゃんが頑張りそうです!
はたして、ちゃんと戦えるのでしょうか?
では。
感想もらえると、うれしいです。
瑞夏