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変態を具現化

「え。ここが…レジ?」

きょろきょろと、ナナギが辺りを見回しながら呟いた。

「そんなわけないでしょう。馬鹿ですか、貴女は」

ため息混じりにシャオロンが返す。

そう、二人が連れてこられたのは、どこをどう見てもレジではなかった。

薄暗く、埃っぽい。

おまけに、なんだか不思議な匂いがする。

今となっては、店内の薔薇の香りは、この匂いを隠すためだったのではないかと思える程だ。

「ていうか、あの女の子はどこ行っちゃったの?」

「そういえば、いつの間にか消えていましたね。まぁ、彼女が黒幕なのでしょうが…」

二人は銀髪緑瞳の少女の姿を思い描く。

「どうしようかー」

のほほんと呟くナナギの声には、まるで危機感というものが感じられない。

玻璃の扇を手で遊ばせながら、ナナギはほぅ、とため息をつく。

「どうするも何も、まだ何も起きてませんしね。少女の目的も分かりませんし」

眉をひそめてシャオロンがそう言った瞬間だった。

「目的? そんなの決まってるよ! ルラのご飯になるの!」

きんとした高い声が響き渡り、同時にタトン、と心地よい音がした。

「「…は?」」

二人は一緒に振り返り、すっとんきょうな声を上げる。

振り返った先にいたのは、銀髪緑瞳。

そう、あの少女だった。

ついさっきの、おどおどとした雰囲気は全く見せず、小悪魔よろしく微笑を浮かべている。

「ルラはね、世界一の…」

「そうですか。おめでとうございます」

少女の台詞を遮り、シャオロンが感情ゼロで手を叩いた。

ぱちぱちと、乾いた音がやけに虚しい。

「どうしよ~、もう帰っていいのかな…」

「構いませんよ」

おろおろするナナギに、シャオロンはきっぱり言い切る。

そのまま踵を返して回れ右しようとする。

が、さすがにそれは無理というもので。

「なに帰ろうとしてるのよ!」

甲高い叱咤が飛び、ルラが二人の道を阻む。

無視されたことが頭に来たのか、白い肌に青筋を立てている。

「この部屋に来た時点で、あんたたちはルラのご飯になるって、決まってるのよ!」

甘ったるい声で叫ぶと、少女ことルラは人差し指を、びしぃっとシャオロンに突き立てた。

明らかに迷惑そうな表情を浮かべたシャオロンにも動じず、ルラは尚も声高に宣言する。

「まずはあなたからっ!」

どこから取り出したのか、右手に持っていた小瓶をシャオロンに投げ付けた。

コントロールがいいのか、瓶はぶれることなくまっすぐシャオロンに向かっていく。

「シャオロンっ!?」

パシャン。

小さく音を立てて、小瓶の中身はシャオロンにかかった。

「………」

悲しい沈黙が三人を取り巻く。

「…え、あの。何も起きないの?」

当たり前のように何か起きると思っていたナナギが、控えめに挙手した。

隣では、シャオロンも頷いている。

「うっ。ぶふっ。いい、いいわ! 水も滴る良い男…! あ、だめ鼻血が…っ」

頭から水を被ったシャオロンを見ると、ルラは鼻を押さえてのたうち回り始めた。

その表情は恍惚に染まっており、変態を具現化したような感じになっている。

「どうしよ…。この子絶対危ない子だ…」

敵のことながら、少し心配だ。

「早々に撤収しましょうか…」

ぽたぽたと前髪から水を落としながら、シャオロンはまたも去ろうとする。

「うふ。うふふ。あー、お腹いっぱぁい! …ごちそうさま」

「えっ!?」

思わずナナギは目を丸くした。

それもそうだろう。

聞こえてきたその声は、先ほどまでの甘い声ではなく、色香を纏った大人びたもの。

驚いて振り返ったナナギの目に入ったのは…。

「誰、この人!?」

「…ナナギ、もう早く帰りましょう」

「え、だってさっきの女の子と別人……」

切れ長の瞳。

ほっそりとした唇。

細身の身体。

そして、銀の髪の間からは大きな猫耳が生えていた。

「猫娘っ!」

「キャットガールって呼んで?」

「は? ナナギ何言って…」

いらいらと振り向いたシャオロンも、つい口を開けてしまう。

「ルラのご飯は、いい男なの」

にっこりと笑ったルラの唇からは、白く輝く牙が覗いていた。

その瞬間、シャオロンはぐらりと傾き崩折れた。


こんにちは~。

椎名です。

ルラが本性現しました~。

シャオロン君は大丈夫なのでしょうか・・・。


感想いただけるとうれしいです。

では。

        瑞夏

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