見えてない?
雑魚の後に登場したボスに、四人は右往左往していた。
見た目こそ雑魚達と大して変わらないものの、圧倒的にサイズが違った。
毒々しい青の身体は、先程まで平和に寄り掛かっていた大樹とさほど変わらず、とにかくデカい。
デカいったら、デカいのだ。
しかも右手には斧。
左手には朿付きの棍棒。
どちらも巨大です。
「最恐装備…!」
「でけぇ…」
「グロテスクだな」
「強そうだね」
各々感想を伸べ、たらりと脂汗を流した。
出発して、まだほんの数時間。
早くも絶体絶命。
格が違うぞ、格が。
そんなことを考えながらナナギは、ボスを見上げる。
「あれ?」
そして、首をかしげた。
ナナギの瞳に映っているのは、グロテスクなボス。
…の眉間だ。
身体もデカけりゃ眉毛も太い。
別にこんなどうでもいいことを思ったわけではない。
ボスの太い眉毛と眉毛の間には、金に輝く球が埋まっていたのだ。
それは、気味の悪いボスにはあまりにも不釣り合いな程美しく、思わずナナギは見とれてしまいそうになる。
「ねぇチサヤ、あの金の球って何なの?」
「は? 金の球?」
ナナギの問いに、チサヤは怪訝な顔をする。
「だから、あの眉間にある…」
「どれだよ」
眉を思い切り寄せて、ボスの眉間を睨むチサヤ。
だが、見つけられないらしくまたナナギを見た。
「んなもんねぇよ」
「あるってば! クシナとレイには見えるよね?」
チサヤでは話にならないと、クシナとレイに話をふる。
しかし、二人も曖昧に苦笑するばかりで、頷いてはくれない。
む、と膨れながらナナギは自分の額を指差す。
「ここだよ、ほら」
「だから、ねぇって」
「あるってばー」
全否定するチサヤに、ナナギが尚更むくれてみせた。
茜色の髪が、風にふわりと揺れた。
「と、とにかく立ち向かうだけ向かおう!」
おお、男前な発言です。
きりっと顔を引き締めてクシナは叫ぶと、降ろしていた大剣を持ち上げ直した。
「援護は任せて」
「分かった、よろしく頼む!」
目と目を合わせて、にやり。
先ほどの雑魚との戦いで、いつのまにかクシナとレイの間に何らかの絆が生まれたようだ。
喧嘩した後の友情、の類の絆が。
「俺も行く」
ちょっとチサヤはむすっとしている。
幼なじみを取られた様で、面白くないのだろうか?
「え、え、え? 皆行っちゃうの?」
武器の無いナナギは、戦いたくても戦えない。
それについては、むしろ好都合なのだが、置いていかれるのは嫌だ。
ナナギは諸手を挙げて引き止めようとする。
「うーん、じゃあチサヤ、ナナギについててやれ」
「は!?」
「とりあえずは俺とレイで行くよ。ピンチになったら呼ぶ」
「ちょっと待……」
ナナギの護衛(?)に、何故かチサヤをチョイスしてクシナは、彼の言葉も最後まで聞かずに駆け出した。
レイも、跡を追って走りだす。
「うぉぉいっ!!! 何で俺が残んなきゃいけねぇんだよ! こら、クシナ!」
チサヤの声も、ただただ虚しく響くだけだ。
「俺にも戦わせろぉっ!」
こんにちは~。
椎名です。
そろそろ、第一話も終盤に差し掛かってきました~。
第一話って言うか、まだ零話って感じですけどね・・・。
では。
瑞夏