「シャーロット」
「んん…」
目覚めると、莉音はどこかの大金持ちが使うような白く肌触りの良いベッドに寝ていた。
「…は?」
どこだろう…。起き上がると、頭が少し重いことに気が付いた莉音は鏡を探した。鏡はベッドから離れた窓の側にあった。莉音は鏡の前まで行き、自身の姿を見て衝撃を隠せなかった。
「何…これ…」
鏡に写った莉音は別人だった。焦げ茶色ショートの髪は紺色のロングになり、「怖い」と言われ続けてきた漆黒の瞳は緑に変わっていた。
困惑を隠せないでいると、ガチャリとドアが開き、エメラルド色の髪で豪華なドレスを着た女性が入ってきた。
「シャーロット!」
シャーロット。そう言われた瞬間、莉音の頭に誰かの記憶が流れ込んできた。この女性をお母様と呼ぶ姿。メイドに世話をされる姿。まるで、莉音に「お前はシャーロットだ」と洗脳するように。
「え…あ…」
何この記憶。映像。私、こんな人じゃない…。そんな思いを余所に、“お母様”は莉音を抱き締めてくる。
「良かった…もう、もう起きないかと…」
莉音は、言ってしまった。
「大丈夫だよ、お母様」
と。
この時、彼女は「久世莉音」ではなく「シャーロット·ユーディット」となってしまった。