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「なぁ綾姉!制服の着方ってこれで合ってんの?」


「うん!合ってるよー…うぅ…剛君!こんなに立派になって…昔とは大違いだよぉ…」


「そら違うだろ…一体何年前の話してるんだ?」


 おーいおいと泣いてる綾姉へ苦笑を浮かべながら答える。


 今日は待ちに待った登校日、あれから準備を色々進め、今日から登校する。


 マンションの出口ではもう玲が待機しているらしく、少々焦っている所だ。


「だってー…私は剛君がこーんなちっちゃい時から一緒に過ごしてきたんだよ?感慨深くなっても仕方ないじゃない…」


 指をちんまりと広げている綾姉を見て、やはり苦笑を浮かべてしまう。


「流石にそこまでちっちゃくないだろ…もう玲が待ってるし行ってくる」


「あ、待って待って!ハンカチ持った?ティッシュは?道路は危ないから気をつけるんだよ?あとあと知らない人についていっちゃダメだよ?それから…」


 怒涛の台詞に打ち付けられながら、やっぱり綾姉は心配性だなとしみじみ思うのだった……ってしみじみ思っている場合じゃないって!


「悪い!綾姉、もう時間ねぇから行くな、ハンカチやらなんやらは持ってるから大丈夫!行ってきまーす!」


「あ、剛君!…気をつけるんだよー、いってらっしゃーい」


 最後の方まで心配そうな顔俺を見送る綾姉を背に扉を閉める、ふぅ…。


 そこから階段を降りて正面入り口へ急ぐ。


「悪い!待ったか?」


「いえ、全然待ってませんよ……今来たとこ…です…」


「あ、そう?なら良かった……じゃあ行こうぜ」


「………あわわ…女子が言ってみたいランキング第十位…今来たとこ…が出来てしまいました…感無量です…」


 小声で何か言っているようだったがドアのウィーンという音で掻き消えてしまった…なんて言ってたんだろう?


「おーい、さっき小声でなんか言ってたけどなんて言ってたんだ?」


「え?……あー!いえ!なんでもないので大丈夫です!それでは行きましょうか!」


「お?おう…」


 なんだか誤魔化されたような気がするが、まぁ言いたくないならいっか。


 そのまま俺は玲に着いていく、学校までは徒歩で十分、今は8時だから学校が始まる大体20分前には着ける筈だ。


 黒い地面、アスファルトやコンクリートといった舗装された地面にも慣れた。都会は色々楽だなぁとこの一週間で色々と分からされた。


 てくてくと歩いて行き、校門に着いた。手続きやら顔合わせなんかで数回入ったが、生徒として入るのは初めてだ。気合を入れていこう。


 校門の前にジャージを来た教師がいる…一応挨拶しておくか。


「おはようございます」


「ん……君は…あぁ、転入してきた穂波君か、おはよう」


 眠そうな顔をして挨拶をしてくれた…うん、なんか大変そうだなぁ。


 俺は昔っからばあちゃん達と起床時間を合わせていたから早起きなんて楽だが、それは就寝時間が早いからこそできるというのを最近知った。


 夜の街を見てみると明るすぎて昼と見間違えてしまった、そんな夜遅くまで明るいという事はその時間まで起きる理由があるという事だ…つまりは仕事…社会人は辛いな…。


「あの…先生良かったらこれどうぞ…」


 鞄から持参してきたおにぎりを一つ渡す。本当は俺の昼飯の一つなんだが、綾姉に弁当を作ってもらったので、一個くらいなら問題ない。


「ん?これは?」


「あの…自分が作ったおにぎりです、米も自家製なんで味には自信があります…なんか元気が無さそうだったんで…」


 そう言うと気怠げな表情が一転、驚きに染まっていく、は!そういえば都会は人の作った食べ物はあんまり受け取りたくないってどこかの本で書いてあった気が…迷惑だったか?


「……マジか…こんな天然物記念物が存在するなんてなぁ…うん、ありがたく頂くよ」


 ほっ……良かった。どうやら先生はそういうのは気にしない人みたいだな。


「それじゃあ先生、俺はこれで…」


「あ、そうそう、別に君の好意を否定するわけではないんだけど、あんまりこういうのはそこら辺にいる人にはやらない方がいい、勘違いしちゃう人は沢山いるからね、仲の良い人とかにやるといい」


「あ、やっぱりそうですか?すみません…まだあんまり都会の暮らしが慣れてなくて…」


「いや、都会どうこうの話じゃないんだけど…まぁいっか、その辺はこれから学んでいきたまえ、私も相談に乗るよ、担任だし」


「あ、そうなんですか?これからよろしくお願いします」


「よろしく、あ、教室までは私が案内するから職員室で待っていてくれ、当番が終わったらすぐ行くからさ」


「分かりました」


 そう言い先生と別れる…あ、名前聞くの忘れてたな、まぁまたすぐ会うからいっか。


 玲さんと一緒に職員室に向かう。


「あ、そういえば玲さんって元々どこの学校にいたんだ?俺の護衛の為に引っ越してきたんだろ?」


 ふと疑問に思って玲さんに質問する。


「えーっと…そうですね、ここから駅で三駅程離れた所に通っていましたね…まぁ一週間も通っていませんけど…」


「それは…うん、なんかごめん…でも俺がそこに通えば良かったんじゃないか?俺は別にどこでもいいし…」


「私が通っていた所は女子校でしたし、それに全寮制でもありましたので…」


「確かにそれじゃあ俺は通えないよな…」


「はい、ですけど一人暮らしに憧れていましたので…その点は少しラッキーだったなって思います」


 少し照れながら言う玲さん…今更ながらあれだな、見た目は綾姉の漫画でいる所のクール系ってやつだが、中身は全然違うな…。


 そうこう歩いているうちに職員室に着いた。


 ドアをノックし、失礼しまーすと一言入れてから入る。


 中に入り、事情を説明すると待合室に案内される。


 そこから待つこと数分、さっきの先生がやって来た。


「お、待たせてごめんな、それじゃあ教室に案内するよ」


 教室までは行く道すがら、この学校の事を詳しく教えてもらった。


 この学校は三学年で一クラス大体四十人、それが八個あるらしいから全部で大体千人…多すぎる…!!


 都会に来る前…学校なんて精々数十人くらいだ!なんて言ったが…俺の想像なんて軽く超えていた…凄い。


 その時にあまりに驚いたもんだから先生と玲は俺を見て少し笑っていた…まぁ、良い!これから慣れていくから!


 そうこうしているうちに教室に着いた。どうやら俺が通うのは四組らしい…。


 普通の学生は四月の最初に入学式?とやらに参加している。俺は四月の終わり…つまり中途半端な時期に転入してきた…大丈夫かな?虐められないかな?


 綾姉の漫画にはこういう時期に来る転校生は奇異な目で見られるらしい…。


 ふぅ、と少し深呼吸…よし!行くぜ!!


 期待と不安と緊張…その他諸々を胸に、俺は教室のドアを開ける。

感想に時代背景があまりよくわからないよーとの声があったので少し補足…しようと思ったのですが、ここの後書きで出すのはなんだかなぁ…という感じなので、少なくとも数話後には補足したいと思います。本当に申し訳ないです。

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