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今から数十年前、謎のウイルスにより、世界の男女のバランスが壊れた。
男だけが死に、男女比がざっと1:100にまでなったが、なんとかワクチンを作り出し、ようやくウイルスによる、被害は無くなった。
だが、そのウイルスによる影響は凄まじく、男女の出生率までが変わってしまい、男子の出生率も著しく低くなった。
当時の社会は混乱し、数年間は世界が終わるんじゃ無いかと思われたが、まぁ、人類はこういう時、なんとかしてしまうものである。
なんとかしてしまった結果、一昔に戻ってしまったように、男尊文化が生まれた。
しかしまぁ、最初の男達はまだ、女性達が状況を理解していなかったため、自分から好きな女を選べると、ハーレム状態でウハウハだっただろうが、今の男達は違う。
時が過ぎ、欲求不満な女達が増え、その者達による度重なる集団での拉致事件、捕まったが最後、最後の一滴まで絞り尽くされる。しかもそれで終わりでは無い。
解放されるまでずっと縛られるのだ、勃たなくなっても無理矢理薬で勃起させられ、永遠に搾られる。
救出された後もその苦しみを忘れられずに、女性恐怖症になってしまうといった事例が大量に起こった。
それを聞いた他の男達が、女性達に対し警戒をするようになり、今の殆どの男達は草食ならぬ、絶食系男子となり、精子提供をするだけの存在となってしまったらしい。
これがここ数年の事件の詳細、現代社会の教科書を見ながら俺はうーんと唸る。
だってそうだろ?確かに男は大変なんだろうが……今俺がいるのは田舎だ。
目の前に広がるのは広大な田んぼ、森、山など、都会にあるらしいビルなんてものはなく、壮大な自然が広がっていた。
世の男達とは違う環境にいるんだから、その人達の事なんてわからんよなぁと、思考を放棄し、教科書を閉じる。
この学校には俺以外の生徒は居ない、というかここは学校ですらない。一応公的には学校となっているため、教師というか、教えてくれる人はいるが、生徒一人だけで学校というのはなんだかなぁ。
「………ちょっと!穂浪君、ちゃんと聞いてる?」
「……あ!聞いてなかった…すんません、もっかいいいですか?」
「もう!授業中は授業に集中してください!それではもう一回言いますよ」
確かに、なんか男は俺しか居ないなぁとも思った。だがそもそもここは人の数が少ない、村の人数なんて両手両足の指の数でだって数えられる。
だから疑問に思っていても、少ないだけなんだなとしか思わなかったし、なんなら、じいさんは居ないけどばーさんしかいないから若い人間なんて目の前にいる先生しか見たことがない。
「……以上です…質問はありますか?」
「…え?あ、ないでーす」
「そうですか、大変よろしい、では明日までに一週間後までに準備を終えておくんですよ、いいですね、それじゃあ今日はこれでおしまい!」
ん?準備?……。
「それじゃあ帰ろっか!剛君!」
「そうだな、綾姉」
あ、ちなみに先生の名前は多々良綾、俺が6歳の時に都会からここに引っ越してきた変わり者だ。
幼い時から接しているので、なんとなく綾姉と呼んでいる。
年齢は確かさんじゅう……。
「おっと、それ以上変なことを考えたら大変なことになるから、気をつけてね?斧剛君?」
「……はい」
ご覧の通り年齢の話はタブーだ。
「それじゃあ帰ろう!準備もいろいろあるし、大変だろうから私も手伝うよ!」
「んん?……うん、ありがとう」
話が全く分からないが、そんなことはどうでも良い、早く家に帰って婆ちゃんの飯が食いたいものである。




