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第16話 彼女の告白

 彼女の口から思いがけない言葉が飛び出した。


「好き」

「え!?」

「ボクは、私は菊池君の事が好き」


 武田はまっすぐと僕の目を見て、そう言った。

 聞き間違えようがないほどはっきりと、しっかりとした声が僕の耳に飛び込んだ。

 黒柳に言ったようなイジメの可能性は武田にはない。冗談や、ドッキリでそんな事を言うはずもないというのは、今日一日だけでも分かった。

 まっすぐで、誠実。

 それが僕が彼女に受けた印象だった。

 しかし、僕はその告白にすぐに反応が出来なかった。

 ただ、リナリアの花のように真っ赤な顔をした彼女を見て、リナリアのもう一つの花言葉を思い出した。

『この恋に気づいて』

 そんな僕に背の高い少女は先手を打った。


「答えは今すぐじゃなくていいから。ボクは明日、記録会で学校に行けないから、ゆっくり考えておいて。それじゃあ、今日はボクも楽しかった」


 それだけ早口で言うと、武田は不安で泣き出しそうな笑顔で手を振って去って行った。


「それじゃ、またね」


 別れの言葉だけを残して。


 僕はその姿に覚えがある。

 あの時の彼女も、いつものように手を振って別れを告げた。

 同じだ。あの時と。

 あれから彼女に会えたのはいつだっただろうか?

 大事な人。

 何かが引っかかる。

『思い出すな!』

 頭の中で、誰かが命令する。

 頭が痛い。ズキズキと割れるように痛い。

 それでも、思い出さないと。大事な思い出を。

 吐き気がしてきて、僕は膝をついた。

 そんな僕をそっと抱きしめる優しい声。


「無理に思い出さなくて良いよ。あーくんが壊れちゃうよ。さあ、何も考えずにゆっくり眠って」


 その言葉に誘われるように、僕は気を失った。

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