表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

海岸・小景

空の冷たい青が

せわしなく回る地球儀をゆっくりと止める

僕はイヤフォンで音楽を聴きながら

秋の海岸を歩く

貝殻みたいなさびしさが

やさしいユウガオの群落に潜りこみ

セピア色の砂浜を

一すじの轍が駆け抜ける

ここよりずっとずっと向こうに 透明な鐘が落下する

音もなく

振り返る人もなく

やがてその鐘は 傷口のような水平線に触れて

藍色に弱くひらめく

藍色の光の繊維が降り積もり

海面は希土類の断面のように冷たい

天球を縁取る気流のなかで

飛行機が銀色の腹を晒し

発電所にかかる桟橋は静止することは止めず

外灯と外灯のあいだを吹きつける風が埋める

磨かれた石がこの夕暮に投じられ

波紋が流木を撫でるみぎわに

僕は僕の体内に一輪の大きな造花を咲かせる

その花びらの裏側で

一つの孤独が回り続けている

新しい磁気のような空気のなかで

吹きつける風が

僕と世界のすきまを埋める

この海のまえで

この秋空のしたで

この砂浜のうえで

僕の歩行が世界をかすめた。

その跡が世界の傷口となって、

ぬらぬらと光っている。


立ちのぼる暗い煙は

二つの半島と二つの島に閉ざされた

この中城湾を満たした。夜が始まっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ