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昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話  作者: 原香織
第一章 謎の男子高校生との出会い
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第6話


約束の当日、葉月は翔より先に待ち合わせ場所に来ていた。


少し早すぎたかもしれない。待ち合わせの時間まであと十五分もあった。


葉月はスマートフォンに目を落としながら翔を待った。


「あれ、葉月さん。何でもういるんですか」


 声がした方に目を向けると、目の前に翔がいた。


「翔こそ、来るの早いね」


「俺、葉月さんより早く来たつもりだったんですけど、待たせてすみません」


「いや、私もさっき来たばっかりだし、全然待ってないよ。それにまだ約束の時間じゃないし、全然謝らないで大丈夫だよ」


「よかった。じゃあ早く、パンケーキ食べに行きましょう!」翔はそう言うと葉月の手を引いた。


「そんな急がなくても、パンケーキは逃げないよ」


 葉月は翔に手を引かれるままお店に移動した。


その後、二人はテーブル席で椅子に座りながら、真剣にメニュー表を見ていた。この時、お互いにどのパンケーキにするか、すでに三十分以上も悩んでいた。


「ああ、駄目だ。普通のパンケーキにするか、フルーツパンケーキにするか、全然決まらない」


「俺もです。チョコバナナパンケーキにするか、キャラメルパンケーキにするか、迷うなあ」


「私優柔不断だから、こう言う時ってすぐに決まらないんだよね」


「わかります。俺も毎回どれにするかすごい迷うんで、友達に早くしろって急かされるんですよ」


 葉月と翔はいつの間にか意気投合していた。


 結局、その後十分程悩んでから、ようやく注文に至った。葉月はフルーツパンケーキ、翔はチョコバナナパンケーキに決めた。


 パンケーキが来ると、お互いにスマートフォンを取り出して写真を撮った。


「美味しそう!」


「俺ずっとここのパンケーキが食べたかったんですよ。それが今、目の前に。ああ、すごい幸せです」


 翔はパンケーキを目の前に感動しているようだった。


そんな無邪気な翔の姿を見て、葉月は微笑ましい気持ちになった。


「翔は本当にパンケーキが好きなんだね」


「俺、週一でいろんなパンケーキの店に行ってるんですよ」


「そんなに? すごいね」


「だって美味いじゃないですか」


「私も好きだけど、翔には負けるかも。パンケーキの何がそんなに好きなの?」


「うーん。やっぱり、分厚いのにフワフワな食感なところとか、香りもすごくいいし━━」


 翔は目の前のパンケーキを食べずに、パンケーキについて熱弁し始めた。


まさかこんなに熱心に語られるとは思わず、途中で痺れを切らした葉月は「あの、そろそろ食べない? パンケーキ」と言った。


「そうですね。ごめんなさい、つい熱く語ってしまいました。食べましょう」


 ようやく食べれる、と思いながら、葉月はパンケーキに手を伸ばした。


 その後、葉月と翔はあっと言う間にパンケーキを平らげた。


「美味しかったですね」


「そうだね」


 葉月はそろそろ会計をしようと思い、伝票を手に取った。


 そしてふと翔を見ると、すぐ側にあった窓の外を見ながら、何やら考えに耽っていた。


「翔?」と、葉月が呼びかけると、翔は我に返ったように葉月の方を振り向いた。


「すみません。ちょっと考え事してました」


「ん? そうなんだ」


 葉月はそれほど気にせずに、翔と一緒に会計を済ませ店の外に出た。


 葉月が歩き出すと、翔はなぜか立ち止まり、「あの」と言った。


「なに?」


「いや、やっぱり何でもないです。急にごめんなさい」翔はそう言うと葉月から視線を逸らした。


「えー。気になるじゃん」


「それより、あの、今日みたいにまたパンケーキ一緒に食べに行ってくれませんか」


「それは全然いいけど」


 翔は葉月に視線を戻し、パッと笑顔に変わった。


「よかった。ありがとうございます」


 どうやら話を上手くかわされたようだ。


翔が言いかけていたことは、もしかしたらこの前教えてくれなかった葉月を友達にした理由に関することだったかもしれない。


いつになったら教えてくれるようになるんだろうか。でも、急かすのは可哀想だし、翔が自分から話してくれるまで待とう。


すぐに教えてくれないことにもどかしさを感じながらも、あまり深く考えると翔との遊びに集中できなくなると思い、葉月はこれ以上考えるのはやめにしようと意識を切り替えた。


 翔との時間は思った以上に楽しくて、この時間がずっと続けばいいのに、と葉月は密かに思いながら今日一日を過ごした。


  ☆


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