表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話  作者: 原香織
第一章 謎の男子高校生との出会い
8/60

第5話


その後、三週間が経った。足の捻挫もよくなりつつあり、葉月は普段と変わらず出社していた。


 彼のことだけど、連絡先を交換してからと言うもの、毎日のようにラインをしている。ただし、ラインを送るのはいつも決まって彼の方からだった。


 例えば、『今日は放課後、友達とタピオカを飲みに行きました』とか『家の近くに猫がいました』と言ったことが写真と共に送られてくるのだった。


 何とも微笑ましい内容だけど、この裏には何か別の事情があるのだと思ったら、気になって仕方なかった。でも訊くに訊けず、葉月を友達にした理由は未だ謎のままだった。


 それから連絡先を交換した時に、葉月は今まで知らなかった彼の名前を訊いた。名前は、澤田翔と言うらしい。彼のことを何て呼んだらいいか本人に訊いたら、翔でいいと言うので、葉月は翔と呼ぶことにした。


 今のところ翔とラインをしてわかったことは、現在高校一年生、好きなものは甘いもの(特に好きなのはパンケーキ)、連絡がマメと言うことくらいだ。


 意外にも翔とのラインは楽しくて、飽きることはなかった。翔とラインをしていると、高校生に戻った気分になれるし、今まで一人っ子だったから、まるで弟ができたみたいで嬉しかった。だから翔と関わる全てが新鮮だと思える。


 昼休み、休憩室でスイーツを食べていると、またも翔からラインが来た。


『今度の日曜日、よかったら一緒にパンケーキ食べに行きませんか?』


 これはデートになるのだろうか。いやいや、翔は弟みたいなものだ。デートとは違う。


 翔からの誘いに乗るべきかどうか迷って、葉月はスマートフォンを片手に頭を抱えた。


しかし、日曜日はちょうど暇で、甘いもの好きな葉月もパンケーキを食べたくなり、翔の誘いに乗ることにした。


『いいよ。食べに行こう』


『本当ですか? うれしいです』


 すぐに既読がつき、翔から可愛いスタンプと共に返事が送られてきた。


その純粋な喜び方に、葉月は不覚にもキュンとしてしまった。


高校生ってこんなにも可愛いんだ。もう何か可愛い動物を見ているみたいだ。


 葉月は可愛い男子高校生を相手に浮かれていた。


「顔がにやけてるぞー」朱里はそう言うと葉月の隣に座った。


朱里からの忠告を聞き、葉月はすぐさま顔を元に戻した。


「そんなにやけてました?」


「うん。もうすごい嬉しそうだったよ。普段そんな葉月見ないから、珍しくてびっくりしちゃった」


 葉月はそんな姿を朱里に見せていたのかと思うと、恥ずかしくて顔を赤くした。


「何かいいことでもあったの? あ、わかった。男でしょ」


「そんな朱里さんが思っているようなことじゃないんで、期待しないでください」


「へえ。この間捻挫して会社を休んだかと思えば、今度は男か。葉月も忙しいねえ」


「だから、そう言うのじゃないって言ってるじゃないですか」


「はあ、羨ましい。私にも春が来ないかな」


 朱里はまるで聞く耳を持たない。葉月は朱里の誤解を解くことを諦め、これ以上は何も言わないことにした。


ふいに窓の外を見た朱里が「そう言えばあの男の子、最近見ないね」と言った。


葉月は思わずドキリとした。


あの男の子と言うのは翔のことだろう。今まさに話をしていた男のことじゃないか。


以前、翔が会社を訪れた際に、朱里は翔と話せないでいたことを残念がっているように見えた。そんな朱里に、翔と連絡を取っていることがバレたらまずい。それに葉月がその男と一緒に出掛けることを知ったら、朱里はどう思うか。考えただけでも恐ろしく、余計に教えることはできない。


葉月は何も知らないふりをして、「そうですね」と答えた。


視線を窓から葉月に移すと、「私今すごくデートとか甘いことがしたい。誰か知り合いにいい男いない?」と唐突に朱里が言った。


「そんなこと言われても、私には朱里さんに紹介できるようないい人はいないですよ」


 朱里はそれだけ訊くと、溜め息をついて自分のスマートフォンを操作し始めた。


 最近の朱里は出会いを求めがちだ。


 そんな朱里の様子に呆れつつも、葉月もスマートフォンを取り出し、カレンダーのアプリを開いた。いつも自分の予定をそのカレンダーに入力していたため、今回の翔との約束も入力することにした。


『日曜日 翔とパンケーキ』

 ……入力っと。


自分より年下の子と遊んだことがなくて、少々不安はある。でも可愛い男子高校生とパンケーキに囲まれている自分を想像したら、何だか日曜日が楽しみになってきた。


「朱里さん、午後の仕事も頑張りましょうね」


「え、何いきなり」


 朱里は葉月の突然の宣言に若干引いていた。


  ☆


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ