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異世界徘徊お爺ちゃん   作者: 雄大宮雄大
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お爺ちゃんと王国の騎士長

字下げと改行のタイミングがわからない、書いてみてわかる難度。

プロの方がいればアドバイスとかくれません?(笑っ)

とある王国の騎士団長の話


 私は王国の騎士団長を務める者だ。 私には最近とある日課が出来た。

 それは私が率いる騎士団の朝の訓練を終わった後、公園へと出向く事だ。いつもの公園に出向けばいつも同じようにベンチへと座る老人が見えた。

「おはようございます。クボ殿」

「あぁ、おはよう。メルジエット君」

 私がこの老人と出会ったのは5年ほど前になる。 私は当時、騎士団長へと就任したばかりであった。

 右も左も分からなかった私は手探りながらも、騎士団長として相応しい男となるため苦労していたが、それでも負けじと、以前と変わらぬ自己鍛錬を行いつつ、団長としても業務も行った。そのため自然と私の時間は少なくなり段々とイライラとするようになった。

 それが妻にも伝わったのだろう私は妻と結婚してから最大規模の大きな喧嘩をした。

「クソ、何だって言うんだ。騎士団長の仕事は名誉な事なんだ。この国を守るためにも、もちろん家族を守るためにもだ。それなのに何が「仕事だけじゃなくて家族としての時間を大切にして」だ」

 イライラしながら街を適当に歩いていると気づけば噴水のある大きな公園へとたどり着いていた。

 普段はこんな所まで来ることは無く、駐屯所と家を往復する生活だった。これも何かの縁かと思い気分転換にもなると私は公園へと入ることにした。

 公園の中元気にはしゃぐ子供、それを遠くから眺める親。

 私はこの子達の笑顔を守るためにも騎士団長をしていることを再確認した。


 そして珍しい物を見た。

 その公園には1人の木でできたベンチへと腰掛ける老人がいたのであった。


 高齢者とは珍しいものだ。

 この国の平均年齢は35歳。そして立派な白髪を生やした目の前の老人は明らかに50などでなく60を超えていそうな人であった。

 この国ではそうそう高齢者のそれも男性は見つからない。

 平均年齢が低い理由。

 それは勿論、若者が多産によって多いという事もある。この国の男は死にやすい、国防のため毎年多くの若者がモンスターに襲われたり戦って死んだりするからだ。

 しかし、もっと大きな理由がある。ちょうど50年ほど前にありとあらゆる国を巻き込む大きな戦争があったからだ。その戦争により当時の20代から40代の多くは戦死したと聞く。

 当時は今より魔法技術が劣っていたため、1人を治す回復の速度が遅く、傷つく人数に対しての治す人数のスピードが間に合わず死亡率が高かったのだ。


 もし、あの老人が 当時10代であり戦争に出なかったとしよう。

 それでも戦争の後には国の復興作業があり、壊された城門へと寄り付くモンスターを討伐、又は追い払うのは生き残った戦士と当時の10代であったのだ。彼がここに居るということはその数多の死線をくぐり抜けたという事なのであろう。

 私は声を掛ける事にした。 公園へと導かれたのもこの老人へと出会うためな気がしてならなかったからだ。

 それにこの国では老人を大切にすることが法として定められている。騎士団長である私はそれを体現しなければならない。

「やぁ、ご老人。何を耽ってらっしゃるのですか?」

 老人はこっちを見て少しだけ考えた素振りを見せたのち口を開いた。

「あぁ、少し妻の事を考えていたのですよ。早くに亡くなってしまって、、、」

 私は確信した。やはり戦争経験者なのであろう、そして公園の子供達を見て思い出したと。

 魔法は女性にしか使えない。そして戦争とは非情だ。回復の手段を断つため女性を早く殺す事はよくあることであった。

 このご老人の妻もその時に死んだのであろう。

「それは、言い難い事を言わしてしまったようですな」

「いや、いいんですよ。誰かに話した方が楽になる事もある。それに孫が沢山泣いてくれました。誰かに悲しんで貰える事は幸せな事です」

 なるほど。彼は孫に戦争の話をしたのであろう。

 私も国民を守る騎士団長として他人事ではない、一層気を引き締めなければならないであろう。


 そして、「他人に話したほうが楽になる」か、長年生きた知恵というものなのであろう。


「私も少し話を聞いて貰えないだろうか、、、」

「?いいですよ」

 私の突然の申し出に老人は少し驚いたようだが彼は快く引き受けてくれた。

 自分でもなぜこの様な申し出をしたのかはわからない。その時は考えもしなかったが、今となってはやはり彼に会うために私は公園へと導かれていたのかもしれない。

 ここでしか会わないと思うと全て話すことができた。

「そうですか、騎士団長様でしたんですね。 就任したばかりで大変でしょう。部下が出来たばかりの時は私も悩んだものです」

 部下がいたということは、当時はそこそこの立場だっただろう。私は驚いたと同時に慌て、恥じ入った。そのようなお方の名前を知らぬ自分の浅学なことにだ。

「いや。騎士団長様などお辞め下さい。私の事はメルジエットとお呼びください」

「そうかい。じゃあメルジエット君、僕のことはクボと呼んでください。それでね、お酒はよく飲むのかい」

「わかりました。クボ様。・・・酒ですか。そうですね、最近は特に飲みますね。親睦を深めるために部下と」

 荒事もおこなう、騎士団に酒を飲めない人間はいないといって言い。親睦会は基本、酒場での事となる。

「様はよしてください気恥ずかしい。宴会が悪いわけではありません。が、きっと帰りも遅くなるのでしょう。きっと奥さんは寂しい思いをしてますよ。週に1回でいいのです。一緒に家でお酒を飲んでみてはいかがですか?私も妻には多くの苦労を掛けました今となっては過ぎたことですが」

「わかりました。ではクボ殿とお呼びします。 にしても、そんな簡単なことでよいのでしょうか?」

「そんなことでいいんですよ」

 私は半信半疑だったが今夜、不思議と少し試して見ようと思った。

 先達に学ぶということだ。


 その後しばらく何のことはない雑談をした後にクボ殿は立ち上がり、

「喋っていたら、時間が過ぎるのが早いね。歳のせいもあるのかもしれませんが。私も少し気が晴れた気がします。ありがとう」

と言い残し公園から出ていった。ほんの少しの間であったが私には何事にも代えがたい時間であった。

 私はベンチに座ったまま彼が見えなくなるまで見送りった。そして気づけば私の心は軽くなっていた。


 その数日後、私は妻と無事に仲直りし、ご老人にドラゴンの肉をお礼として渡した。

 この出会いが今でも続く私の日課のきっかけとなるであった。


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