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〜〜バトルBGM〜〜
『Raining Steel』
Perturbator
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ロランの剣が振り下ろされる前に、ニールはキックで先制した。軽くて速いキックの連打は、ロランにロングソードを振るチャンスを与えないためだ。とにかく右足と左足で蹴り続ける。
「はっ、よっ、とっやっ、ちゃっ、さっ、ほっ!!」
「くっ……なめんじゃねえ!!」
ニールの一瞬の隙を突いて振りかぶった上段からロングソードで攻撃しようとするロラン。
だがニールはそのロランの手首を掴み、ロランに背中を向ける形になる様に一気に身体の向きを変えて逆上がりの体勢でジャンプし、ロランの脳天に膝を落とした。素早く起き上がるものの、頭へのその衝撃でふらつくロランに対して同じく素早く起き上がったニールは、更に前蹴りを食らわせてロランをぶっ飛ばす。
「おーりゃあああああああ!!」
追撃をかけるために右のハイキックを繰り出すニールだったが、なんとロランはそれをロングソードの柄をニールの膝に打ちつけることでガード。痛みに怯んだニールに、容赦なくロングソードの薙ぎ払いを繰り出すが上手い具合に入らない。薄皮一枚削れただけだ。
しかし、効果はあった。
怯んだニールのその側頭部目掛けて、さっきのお返しとばかりに左のハイキックで追撃するロラン。それはしっかりと決まった。クリーンヒットだ。
「ぐが!」
切り裂かれた腹の痛み、そして今しがた蹴られた頭の痛みで蹲ってしまうニール。立ち上がろうとするが身体に力が入ってくれない。それを見下ろして、ロランはニヤッと歯を剥き出しにして笑った。
「へへっ、どうやら今度こそ俺の勝ちみたいだな。ざまぁねぇぜ」
「うぐぉ……うぅ……っ! が、がは……っ……ぐぅ……あ……!!」
しかしニールがまだ立ち上がろうとするのを見て、ため息を吐きながらロランは言葉を続ける。
「往生際の悪いオッサンだぜ。ほら、さっさとくたばっちまえよ!!」
そう言いながら、ロランは「これでとどめだ」とばかりにロングソードを振り上げる。ニールは決死の覚悟で体を転がして距離を取った。
そのすぐ脇を刃先が通り過ぎる。空気を切り裂く音を聞きながら、何とか立ち上がったニールは更にバックして間合いを取った。だが余裕はない。
再び襲いかかって来るロラン。そのロングソードをスウェーで回避しつつニールは必死にローキックを繰り出した。しかしそれはロランにはお見通しとばかりに足を上げて回避される。
ニールはローキックを振りぬいた勢いでハイキックに繋げる……が、これもスウェーで避けられる。さらに無言のままもう一発、回転しながらハイキックをお見舞いするが、今度は腕全体で止められてしまった。
お返しとばかりにロングソードの回転斬りが迫る。
それを見て、ニールも一瞬の判断で後ろに大きくバックステップ。剣を振り抜いたことで隙が出来たロランに一気に接近し、胸にまず一発、右のストレート。
「うっ!?」
次にみぞおちめがけて左、右とボディブローを、それから顔面めがけてそれぞれ一発ずつまた同じく左、右とパンチ。この打撃の雨には、流石にロランも呻き声を上げてよろめく。
「ぐぅ、あがっ!?」
何とか体勢を立て直しながらも再びロングソードを構えようとするロランだが、ニールはその懐に飛び込んでロランの体を一気に持ち上げる。
「ふんぬああああああああああああああああああっ!!」
ロランを持ち上げたニールは絶叫しながら、今度は後ろにある壁に背中から彼を叩きつける。ロランはその衝撃で呆気なくKOされ、力無く地面へと倒れ込んでしまった。
「はぁ、はぁ……くそ……まだまだ若い青二才に、俺がそう簡単にやられてたまるかってんだよ……!!」
◆◇◆
ロランを下したニールは、今度こそ邪魔されずに宝の山に埋もれていたクリスタルを手に取った。とたんに目映いオレンジ色の光が辺りを包み込む。まるで脈打つような輝きの中、ニールは直感に導かれてエレベーターの方へ移動した。
「上に、行きたいのか……?」
ニールはエレベーターの扉を開けた。鳥かごの中に入り、レバーに手をかけた。後はこれを操作して今度はエレベーターを上昇させればいい。ニールは掌の中のクリスタルを見つめた。そこへ、
「ま、ち、やがれ……行かせねぇぞ、オッサン!」
気絶から目覚めたロランが、エレベーターへと入ってきた。ロランの手がレバーに触れ、エレベーターが止まる。ロランは胸元からナイフを取り出すと、ニールへと突きつけた。
「勝手に宝を持ち出されちゃ困るぜ、それは俺の物だ!」
「黙れ。邪魔をするな!」
ナイフを手に襲いかかってくるロラン。ニールはその一撃一撃を躱し、防ぐ。檻の中という狭い場所ではニールの方が有利だった。カウンターをが決まる。顔に何発目かのパンチを喰らい、ロランは激高した。
「くそ、舐めんな!」
「うぐっ……はぁっ!」
怒りに任せただけの雑なキック。いつもなら避けていたであろう一撃だがしかし、今のニールは手負いで、疲労も溜まっていた。
「これで終わりだ!」
ロランのナイフがきらめく。ニールは賭けに出た。
(イチかバチかだ!)
ロランのナイフにニールが触れると、激しい破裂音と閃光が目を焼いた。
「ぐわぁぁぁああっ!!?」
まともに目をやられたロランは、ナイフを取り落し、両手で顔を覆う。その隙をニールは見逃さなかった。ふらつくロランをエレベーターから蹴り出し、レバーを操作する。グンッと重力がかかり、エレベーターが上に向かっていく。
「クソ、てめぇっ! 降りてこい!」
「そう言われて止まる馬鹿は居ないぞ!!」
エレベーターはどんどん昇って行き、そして、目を開けていられないほどの光がニールを包み込んだ。




