表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

純情ひと筋、音楽大好き!がんばれ恋愛!

 音楽が大好きで彼女いない歴=年齢の高校一年生の僕、木暮一颯。女の子に気を引かれたいとの思いで、中学生からギターを猛練習。結果は未だに現われず。親友の巨漢ドラムス、堂本晃と上流私立高校の軽音部、ギタリストの沢田譲一とベーシストの久遠春人。沢田&春人の誘いで四人バンド「パーフェクトゼロ」を立ち上げた。コンプの塊の僕が三人の意見によって、ギターヴォーカルに抜擢され、音楽漬けの毎日を送る。しかし、進学校ならではの勉強にあたふたし、こんなんでガールフレンドが出来るんだろうか?

 バンドリーダーの沢田と春人は、ただ単に高校生バンドで収まるつもりはまるでない事を、僕はまだ知らない。彼女作りと歌作り、どちらも大事。二兎追う物は二兎を得るの精神で、僕は今日も青春まっただ中。


 「今日の練習は盛り上がったな! 」バンドリーダーの沢田譲一(さわだじょういち)が僕たち三人を上機嫌で見渡した。 

 僕たちは沢田が集めた『パーフェクトゼロ』という四人組バンドだ。沢田はF県如月市の私立如月学園の一年生だ。百七十五センチの細身でリードギターを担当している。両手の指が長くて彼の指先から流れるギターの音色は美しく、とても高校生が弾いているとは思えない。黒髪は肩まであり、友人として贔屓目に見ても女性にモテるタイプである。まあ、実際モテてるんだけどね。

 ドラムを叩いているのは、身長百八十六センチ、体重八十五キロの巨漢、堂本晃(どうもとあきら)。ほぼ丸坊主に近くて、一見強面であるが性格はバンド内で一番温厚だ。僕と同じF県立如月高校に通う同級生で親友でもある。ベーシストは、これまた背丈が百八十センチ近くあり、体重六十キロ程度の久遠春人(くおんはるひと)。珍しい名字だが春人のご近所さんは「久遠」ばかりで本人はまったく珍しい名字だとは思っていない。春人の髪型はリーゼントで、ストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーをかなり意識している。また、恐ろしいほどの笑い上戸で、沢田の古くさいギャグでも大笑いするのが欠点だ。春人は沢田と同じ如月学園の一年生だ。

 最後に僕は木暮一颯(こぐれいぶき)。身長百七十センチ未満、体重四十五キロのガリガリくんだ。担当はギターヴォーカル。ギターヴォーカルと言えば格好良く聞こえるが、長身ばかりに囲まれて、普段よりも益々小さく見える。これが僕のコンプレックスの一つ。また、三人に言わせると僕はまだ小学六年生の顔つきだそうだ。これが二つ目。三つ目は彼女いない歴が年齢と同じ。女の子にモテるために中学一年生からギターを弾き始めたが、三年たった今もまだその効果は表われていない。ただ、最初の目的とは別に、四人で演奏すると音楽を心底楽しんでいる自分がいる。ギターを弾く楽しみのウエイトは、モテ度よりもライブを目標にしている気持ちのほうが断然強くなっていて、これには僕自身が驚いている。音楽は素晴らしい! 


 如月高校と如月学園は名前は同じだけど校風はまったく違う。(ちまた)では如月高校は「キサ校」、如月学園は「キサ学」と呼ばれている。如月高校は県内でもトップクラスの進学校で、やたらめったら宿題が多い。僕はまぐれで合格したようなもので、ついて行けない授業もあって、そんな時にはいつも晃に教わっている。晃は本当に頼もしい相棒だ。一方、如月学園は、一言で言えば『ご令息・ご令嬢』が通うキラキラ高校だ。と言っても高校受験の偏差値は如月高校に比べてやや低いものの、簡単に入学できる高校ではない。そして如月学園はスポーツと文化活動が活発だ。野球は甲子園の常連校でバスケはインターハイで準優勝したこともある。また、有名な作家には伊集院昭彦がいるし、知名度が高い女性バイオリニスト、宮脇祥子も如月学園出身だ。他にも著名な文化人を多く輩出している。沢田と春人は軽音部に所属しているが運動神経は抜群に良い。後で聞いた話だけど、入学当時、二人とも運動部の引っ張りだこだったけれど、彼らの音楽活動に対する気合いの入れようが学園内で知れ渡り、運動部たちは肩をがっくり落としていたという。天は人に二物を与える典型的な存在だ。いや、二人とも整った顔つきでスタイルも良く、二物どころか三物も四物も与えられている。コンプだらけの僕とは大違いだ。

 僕たち四人の出会いは単純なものだった。高校入学後の五月の連休明けに、僕と晃が土曜日を練習場にしているレンタルスタジオでのこと。僕たちは四月の上旬から、彼ら二人とよくすれ違っていた。そんな折り、沢田が声をかけてきたのがキッカケ。

「ねえ、君たち。俺はキサ学一年の沢田譲一。隣は同じく一年の久遠春人。時間あるなら、ちょっと俺たちに付き合ってくれないかな」沢田が自己紹介を兼ねて誘って来た。

「袖すり合うのも多少の縁ってやつ。あははは」久遠が笑う。

「じゃあ、取り敢えず自己紹介するね。僕はキサ校一年の木暮一颯」

「俺もキサ校一年の堂本晃だ。よろしく」

 沢田がカラオケに行こうよと言い、僕と晃は時計を見ながら一時間だけならと答えて、楽器店近くのカラオケボックスに行ったわけだ。何となくぎこちない雰囲気でソフトドリンクを飲みながら、僕が最初に歌うことになった。歌い終えると三人から拍手を貰い、ふかふかのソファーに腰掛けた。

「木暮くん、君は声の音域が広いね。この歌は難しい部類だよ」と沢田が褒めた。

「そうそう、俺もかなり音域には自信があるけど木暮くんのほうが凄いよ」久遠も褒めちぎり僕は少し有頂天になった。その後の言葉が彼ら二人に対する印象が悪い方向になった。

「まだ声変わりしてないのかな」沢田がからかう。

「顔も幼いし、木暮くんはまだ大人の経験をしてないようだね。あははは」久遠は沢田以上に上から目線で笑っている。僕は顔を真っ赤にして応戦した。

「声変わりは同級生の中でも早かったほうだよ! それと大人の経験てなんだよ! 」

「あははは。そういう質問するってことがまだ子どもってことだよ」久遠はソファーから転げる落ちるほど笑っている。

「まあまあ、ふたりともそれ以上一颯をからかうのはやめな。楽しくやろうぜ」晃が間に入らなかったら、こうして四人で行動することは永遠になかっただろう。

「失礼。すまなかった。実は俺たち、ヴォーカリストとドラムスを探していたんだ。なあ、春人」沢田が久遠を見る。

「そう、どこかに質の高いメンバーがいないかなってね」

「それがどうかしたのかよ」僕はまだ冷静に成り切っていなかった。

「一颯、落ち着け。とにかく二人の話を聞こうじゃないか」晃が僕の右肩にそっと手を置いた。

「早速だけど、木暮くん、堂本くん。俺たちと一緒に組まないか。きっと楽しくやれると思うよ」沢田の微笑みは、まるでギリシャ神話の芸能・芸術の神、アポロンように見えた。隣でポテトを摘まみながら久遠も笑いながら言う。

「盗み聞きじゃないんだけどさ、二人ともいい音出しているのが、前から気になってたんだ。どうかな」

「ここで即答は出来ないって言うか、しない。僕は君たち二人の音を聴いたことがないし、まださっきの言葉が頭に残ってるから! 」

「まだ怒っているのかい。男子たる者、小さな事柄にいつまでもこだわらない」沢田が真剣な目をして僕に言った。

「・・・・・・はいはい、わかりました。君の言うとおりでした! 」

「じゃあ、時間を決めて俺たちの学園に来てくれないかな。俺たちは、ほぼ毎日、軽音の部室にいるから」沢田が久遠に同意を求めるように声をかけた。

「日曜日以外はね。日曜日は毎週デートだからね、あははは」

 毎週デート? 羨ましい! 

「その話に乗ったぜ。今度の水曜日の夕方四時でどうだ。水曜日は比較的授業科目がゆるいし補習しなくてもいいから。なあ、一颯」

「そうだね。宿題も軽いし」

「よし! 決まりだ。水曜日に待ってるよ。学園の中は分かるかな? 校舎一階の一番奥の部屋が軽音部だ」沢田がパンと手を叩いた。

 約束の水曜日の午後四時に着くように晃と一緒に如月学園に向かった。自転車で五分もかからない。僕も晃も如月学園に訪れるのは初めてで、その校舎の造りに驚いた。如月高校の古くさい鉄筋コンクリートとは大違い。白い壁に青い屋根。カレンダー写真でよく見かけるミコノス島の建物を大きくしたようだ。白い正門から入ると右手には緑の芝生に覆われた広いサッカー場があり、その奥にはナイター設備が充実した野球場が見える。左手には校舎とは別棟の二階建ての白い体育館がある。

「なんか圧倒されるな。上流私立は桁違いだわ」晃がボソリと呟いた。

「晃らしくないね。中にいるのは僕たちと同じ人間だよ」

「一颯のそんな肝の据わったところがいいねえ。そこんところは尊敬するぜ」

「座ってるかなあ。自分ではあんまり気にしたことはないけど。さあ、早く行こう」

 まだ日が差している校舎の廊下は明るい。沢田が言っていたように廊下を奥に奥にと歩いた。さっきまで明るかった廊下が段々と薄暗くなり、微かにディストーションがかかったエレキギターと重いベース音が聞こえてきた。僕たちは立ち止まってしばらく音を聴いていた。エレキギターはおそらくストラトタイプだ。ベースはやけに低い音が聞こえる。数分たって再び歩くと突き当たりに大きな鉄の両扉が現われた。扉だけでも二メートルはある。部屋名は記されていない。二人で顔を見合わせて、僕が扉の把手を持って開けようとしたが簡単には開かない。晃の大きな手が手助けになって、ようやく扉はギシギシと音をたてて開き始めた。ギターの音が止んだ途端、部屋の中から声が聞こえた。

「やあ、早かったね、お二人さん」沢田だ。

「こんにちは。練習の邪魔したかな」僕は中にいる二人に声をかけた。

「あははは。練習ってほどでもないよ。ただの指慣しだよ」久遠が櫛で頭をセットしていた。

「悪いが今日は手ぶらだ。君たちの音を聴きに来ただけだからねえ」晃が巨体を揺する。

「早速だけど始める。春人、定番をやるよ」と沢田が久遠に合図した。

「オッケー」

 沢田のギターは思っていたとおり、フェンダージャパンのストラトキャスターだ。久遠のベースは見たこともないヤマハの五弦ベースだった。これでさっきの重い音の正体がわかった。沢田のアンプはマーシャル製で久遠のアンプはフィル・ジョーンズ製。どちらも高校生が簡単に手に入れられる品物ではない。二人の演奏した曲は『A DAY IN THE LIFE』ジェフ・ベックの名曲の一つだ。初音から腰が抜けそうになった。横にいる晃も僕と同じ表情だ。何なんだこの二人?! まだ高校生だろ?! 難曲を実に楽しそうに演奏している。演奏が終わり沢田がにこやかに声をかけてきた。

「どう、気にいったかな、木暮くん、堂本くん」

「あははは。顔が凍ってるよ」久遠は(おど)けた調子で笑っている。

「気に入るも何も君たちマジで上手すぎるよ! いつからギターを始めたの! 」僕は叫ぶように問いかけた。

「俺は元々、五歳の頃からクラシックギターを習っていたんだよ。それが厳しくてね。楽しくなかったから小学四年生で通うのをやめて、ロックに走ったんだよ。親父はお怒りだったけど祖父が好きな事をさせてあげなさいって口添えしてくれてね。今でも祖父には感謝しているよ」沢田はコードGをポロンと鳴らした。続いて久遠が話す。

「俺は両親がジャズ好きでさ。小さい頃から音楽を耳にしてたんだよ。最初はサックスが好きだったんだけどさ。聴いているうちにベースギターの奥深さに気がついて、小学六年生からエレキベースを弾いていたのさ」二人とも涼しい顔をしている。

「どうだい。一緒に組まないか。それとも怖気付いたかな」沢田が挑発気味に言ってきた。その台詞にカチンと来て思わず口から言葉を発した。

「ブルジョワらしい態度だね。プロレタリアを馬鹿にするなよ。そこに立ててあるギター、貸してくれないか」

「おっ、やる気満々だね、木暮くん。そのギターは僕のお(ふる)だから使っていいよ」沢田がギターを手に取って僕に渡した。フジゲンのテレキャスターだ。お古でフジゲン? 中古でも最低五万円はする高級品だ。僕はもう一つ気持ちが燃えてきた。肩にかけると僕が持っているエピフォンのレスポールよりも軽い。チューニングを確かめてから軽くリフを弾いてみた。テレキャスターの高い音がいい感じに響く。

「一颯、俺も叩くぜ」晃がバックアップしてくれるのはありがたい。ドラムセットはパール製でオーソドックスなシンバルとタムが揃っている。晃はドラムとペダルの調整が終わると僕に目で返事をした。

「晃、僕らも定番でいくよ」

「オーライ」晃のカウントで演奏を始めた。さっきまでの怒りが消えて演奏に集中出来た。最後までブレる事もなく演奏を終えた。

「いいね。チャーのSMOKYか。ギターキッズなら絶対コピーしたい曲だね。やられチャーたな」沢田はにやけた顔で拍手をしていた。

「あははは。沢田、今のいいぞ。腹が痛いよ、くくくく」久遠はつまらない駄洒落で大笑いしている。何が面白いのか僕にはさっぱりわからない。親父ギャグどころか寒気がする。

「沢田くん、久遠くん、今のが僕たちの現段階の実力だ」僕は彼ら二人を目で(とら)えたたままだ。沢田はまだにやにやしながら両腕を組んでいた。久遠は笑いをこらえていた。数秒間がとても長く感じる。

「沢田、是非一緒に組みたい二人だよな」さっきまでケラケラしていた久遠が静かに呟いた。沢田は組んでいた両手をといてオーバーな仕草で手を広げた。

「春人に同意! 木暮くん、堂本くん、四人でバンドやろうよ! 」沢田の顔からにやつきが消えた。晃が僕の隣に来て声をかけてきた。

「いいんじゃないのかねえ。きっと俺たちの刺激になるぜ」

「僕は少し考えさせてほしい」

「どうした。一颯も前からバンド活動したいって言ってたないか。何か理由があるのかねえ」

「確かに彼らは凄いよ。でも何か性格的にしっくりこないんだよね」

「木暮くん。からかった態度をとったのは謝る。機嫌なおしてくれないか」沢田が右手を差し出してきた。表情は真剣そのものだ。久遠も僕たちに近づいて右手を差し出す。この間、沢田が言った小さな事柄にこだわらないとの言葉が頭に浮かんだ。

「こちらこそよろしく」僕は二人の右手を代わる代わる握りしめた。晃も同じように手を握っている。沢田と久遠はハイタッチして喜びを隠さなかった。ハイタッチが終わると沢田が僕たち三人に言う。

「俺たち四人はこれで仲間だ。「くん」付けはやめようよ。俺は沢田って呼び捨てでいい。春人は春人でいいよね」

「それでいいよ。お二人さんはどう呼べばいいかな」

「僕は一颯でかまわない」

「俺は晃で頼むぜ」

「バンド名はパーフェクトゼロだ」沢田が僕たちに確認するように言った。

「響きはかっこいいけど意味はあるのかな」すかさず僕が質問した。

「敢えていうなら誰からも左右されないってことかな」沢田が応える。

「へー、じゃあ、僕は賛成するよ。晃はどう? 」

「いいんじゃないかねえ。俺も賛成だぜ」

「俺もサンセー。そのかわり名付け親の沢田がリーダーやれよ。まあ、リーダーと言う名の小間使いってやつさ。あははは」

「わかった。どんどん俺を使ってくれ。たった今から活動しようよ」沢田の目がキラリと光り僕を見た。

「一颯はオリジナル曲を作って欲しい。俺も手伝うから」

「えっ、いきなり難問出すなよ。僕は成績が良くないから勉強で忙しいんだよね」

「大丈夫だ。宿題は俺が教えるから挑戦する価値はあると思うぜ」晃が僕の背中を軽く叩く。

「うーん、それじゃ自信はないけどやってみるよ」

「いい曲出来たら、俺が一颯のために一肌脱いで可愛い子、紹介するよ。あははは」久遠が軽口をたたく。でもどこかで期待している僕がいた。

「春人、約束だよ! 」

「任せろ。俺は約束を破る事は絶対にしないからがんばれよ! 」

 俄然、やる気が出て来て、さっきまで躊躇(ちゅうちょ)していた自分がいなくなった。これが僕たちの出会いと熱い青春の始まりだった。


 出来ないんだよね、なかなか。

 生れてこのかた、一度も彼女がいない僕がラブソングを作れるわけがない。だから僕はラブソングを(あきら)めて強いハードロックを作る事にした。まずは題名を決めないといけない。真っ先に思い浮かんだのは『真夜中に吠える』だった。孤独な少年が理不尽な世の中に対して怒りをぶつける。怒りの中には祈りも入っている。少年は鬱憤(うっぷん)を抱えて、それを我慢して生きている。その我慢さえも限界にきつつ足掻(あが)いている。心のどこかで幸せを手に入れることを望んでいる。夜にごついブーツを履いてガードレールを蹴り飛ばす。バイクに乗ってあてもなく彷徨(さまよ)う。見えてくるのは自分自身の希望と言う名の光だが、それは哀しい蜃気楼だった。

 こんな感じで作詩を続けてギターコードを探る。思っていたよりも苦しくも楽しい作業だ。毎日少しずつ進んでいく。その反面、学校の宿題が(おろそ)かになり、すぐに晃にヘルプの携帯をかける。晃はいつでも協力してくれる。僕の日常は以前よりも充実しているのが十分に感じ取れている。

 日曜日にいつものレンタルスタジオで『真夜中に吠える』をみんなの前で披露(ひろう)した。なんだか恥ずかしい気分だ。弾き語りを終えた後、三人とも無言だ。メチャメチャ緊張している。誰でもいいから何か言ってくれよ。

「一颯、この曲、お前が一人で作ったのかい」沢田の顔から血の気が引いている。久遠のへらへら顔がいつもと違い真面目な優等生になっていた。晃だけがふむふむと首を上下に振っていた。

「なに? ダメだった? 」僕は不安そうに三人の顔を見回した。

「いや、逆だよ、逆。本当に曲作りは初めてなのか?! 」沢田は珍獣を見るような目をして言った。

「うん、初めてだ。言いたいことがあるなら、早く言ってくれよ」

「沢田、俺たちの耳に間違いはなかったよな」春人が沢田を見つめる。沢田の顔がほころんだ。

「一颯、お前、異常だよ。いい意味でね。修正したい所はあるけどとてもいい曲だよ! 」

「ホント? 」

「ああ、とても初心者とは思えない。Bメロからの盛り上がりかたが(しび)れたよ」沢田は大きな拍手をした後、突っ立ている僕を抱きしめた。

「ちょっと、ちょっと、やめろよ、気持ち悪いから」僕は身体をよじりながら沢田から離れた。

「一颯、いつもどんなジャンル、聴いてるんだい」僕から離れて沢田が問いかけた。

「どんなジャンルっていっても、いろいろ聴いてるよ。この間やったチャーは勿論(もちろん)、邦楽ならストリート・スライダースとデランジェかな。洋楽ならローリング・ストーンズとクイーンが好きだね。サルサやフラメンコギターも聴いているよ」

「ほー、すごい情報量だね。音楽に取り憑かれてるって感じだなあ。はっきり言う。才能ある! 宝石の原石だよ、まったく。ジェラシー感じちゃうね」

「俺も沢田と同じ意見だ。一颯、俺たちのバンドの曲作りは任せたよ」春人は万歳のポーズをしている。

「えー、買い被りすぎだって! 結構、苦労したんだよ! もうこれ以上は無理! 」僕は肩にかかったままのギターをはずして座り込んだ。そこで晃が冷静に話し始めた。

「みんな、聞いてほしい。一颯は自分自身に気がついていないと思うんだよねえ。俺は中学で三年間、一緒に組んでいたけど原曲のアレンジが上手なんだ。とにかく音楽の吸収力が強い。ジャンルにこだわっていないのがいいのかもしれないねえ」

「いやいやいやいや。みんな落ち着いてくれよ。この曲を褒めてくれるのは嬉しいよ。でも才能とか原石とかはあり得ない。僕は音楽は好きだよ。でもね、言っておくけどギターを始めたのは、女の子にモテたいっていう下心がスタートだよ! 」

「ギターを始める理由の九十%以上はそれさ。あははは」春人が笑い、続けて沢田も言う。

「春人の言うとおりだよ。クラッシックを辞めたのは面白くないって言っただろう。その時ギターを捨てる気にはならなかった。それはロックを弾ければ女の子が寄ってくるって思ったのが理由の一つなんだよ」

 はあ? 容姿端麗、高身長に上流階級のお前たち二人が何言ってるんだ。何もしないでもモテ度究極だろう。まったくもって説得力なし! こちとら、コンプレックスの塊で必死になって勉強して進学校に入ったけど、落ちこぼれ寸前。それに十六歳にしてフォークダンスと母親以外、異性と手を握った事もないんだよ。

「もう一回やってくれないか。春人と晃もリズムをしっかり合わせられるようにね。俺はソロパートを意識しながら聴くから」

「オーライ」「オッケー」もう一回弾き語りを終えると三人は満足そうな顔をして沢田が言った。

「よし、次は全員で合わせるよ」沢田が仕切る。今度はバックで正確なバスドラとベース音、曲に似合ったギターリフとギターソロが聞こえる。僕も凄くノリが良くなってリズムを刻み、歌う事が楽しくなって来た。それを時間のある限り何度も繰り返した。

「今日の練習は盛り上がったな! 」沢田が嬉しそうに叫んだ。

 僕の知らない所でバンドが走り始めている。この日を境にバンド内での僕の立ち位置が決まった。ギターヴォーカルというグループで最も目立つ役割がまわって来たのだ。責任重大! でもこれは恋人作りのチャンスかも!


 一学期もそろそろ終わりに近づいた。定期試験もようやく終わり、晃のおかげで追加試験を受ける事なく夏休みに突入出来た。今は曲作りに追われて寝不足が慢性化している。しかし何という充実感。この三ヶ月間、パーフェクトゼロは着々と進歩していた。オリジナル二曲と洋楽、邦楽のカバー三曲を人前で演奏出来るレベルになっていた。でも沢田と春人のテクニックはまだまだ本気を出していない。それは僕のギター技術が二人について行けないのが理由だ。晃のドラムはメンバー全員が目に見えて成長しているのが十分わかる。僕が一人ポツンと置いていかれた気分になるのは仕方がないだろ。ギターでも何でもそうだけど、上手くなるには練習するしかない。いつまでも三人に甘えていてはいけない。だから一日十五分でもいいので毎日ギターに触れるのが大切だと思っている。

 そうこう考えている時に沢田からラインが入ってきた。

【次回の練習日、七月二十二日に大事な話がある】

いったい何だろう。

 夏休みの宿題は山のように出た。ウンザリ気味。早めに片付けて音楽にどっぷり浸りたかったので、早々に晃に頼った。晃からは、いつでも家に来ればいいと色よい返事を貰い、これで一安心。自分で出来る物は勢いに任せて、朝からどんどんと処理していった。夜になればフェンダーの10Wのギターアンプにギターシールドを刺し、ヘッドフォンを装着してエレキギターを鳴らす。アンプの設定は基本クリーントーンだ。よくディストーションやリバーブのつまみをいじっている人がいるけど、それは違う。音を変えるのはエフェクターを使うのが大事。これは沢田から教わった。

 僕のエフェクターは、ずっと使っていなかったお年玉と毎月の小遣いを貯めて買ったズーム製G5nだ。マルチエフェクターでこれがまた面白い。ネット動画で研究すればするほど、この機械の素晴らしさがわかる。実は母から一万円を父に内緒で貰ったのがとても助かった。これを購入してから練習する時間が増えた、増えた。楽しくなければ練習は続かない。継続は力なりってね。


 いよいよ今日は練習日だ。ギターを背中に抱えて、マルチエフェクターを自転車の前籠(まえかご)に入れた。時間はGショックを見ると9時ちょうど。二十分ぐらいでレンタルスタジオに到着。まだ誰も来ていない。カウンターの左に自販機と丸テーブルがあり、アクエリアスを買って丸テーブルの椅子に座った。沢田からの大事な話って何だろうとぼんやりと考えていた。

 腹に響くようなエンジン音が聞こえてきた。春人がお気に入りのバイク、ホンダシャドウ400でやって来た。

「おはようさん。一颯は早いな。二人はまだみたいだな」

「おはよう。いつも思うけど大きなバイクだね」

「400にしてはでかいな。限定解除の歳になったら、ハーレーに乗るつもりだ。まっ、その前にコイツの借金の返済が先だけどさ」

「えー、家の人にプレゼントされたんじゃないのか」

「何言ってるんだよ。タダでくれる家じゃない。一颯、お前勘違いしてないかな」その言葉に僕は戸惑った。

「確かに俺は一般的に言えば、ぼんぼんさ。だけどね、家に甘える気はない。でも、借金とはいえ、コイツにポンと金を出してもらったから、格好いいこと言えないけどな」

「いや、ごめん。僕は春人を大いに誤解してたよ」

「謝る必要はないさ。昔っからまわりから言われていたからさ。園児の時は、よく物を盗られていたしな。あははは」

 僕は自分が恥ずかしくなった。高いギターとアンプ、その上ブランド物の服が春人の本当の姿を見えなくしていた。彼は彼で身に置かれた身分にどこかしら苛立ちを感じているのかもしれない。春人との会話を遮るかのように、沢田のスズキハスラー250の甲高い音が聞こえてきた。

「よう、二人ともなに話てたのかな。暗いよ、雰囲気が」

「いや、何でもないよ」僕は普通に答えたつもりだった。

「ふーん、俺にはわかるんだよな。春人はストイックだから、いつもと同じ話をしていたんだろ」

「沢田は超能力でもあるのか。いいじゃないか、何でもないって。春人も黙ってないで何か言いなよ」僕は少しムッとした。

「一颯、俺は春人とは違うよ。利用できる物は何でも利用する。生れた境遇(きょうぐう)は人それぞれだ。それに不平不満を言ってもしょうがない。俺は正直、恵まれた家庭だ。甘えと利用は違う。俺は俺のやりたい人生を歩く」

「僕はお前の考え方は理解出来ないね。春人の言葉のほうが重みがあるよ」

「一颯、もうやめよう。沢田は沢田なりに考えているのさ。堂々と人前で言うのはしっかりとした心がないと無理さ」

「いや、もう一言だけ。沢田、お前のギターとアンプ、それにそのバイク。みんな親に買ってもらったんだろ。やっぱりお前はぼんぼんだよ」

「そうだよ。金持ちの息子だ。だから言っているんだよ。境遇と生き方は違うんだよ。わかってくれないかな」沢田の瞳が僕に訴えかけている。僕はスッキリしないまま、あやふやな返事しか思いつかなかった。

「そっか。理解出来たか出来ないかわからないけど、話は終わりだ。そろそろ時間になるけど晃はまだかな」僕は辺りを見回した。あの巨体が隠れる場所はここにはない。約束の時間五分前に晃が現われた。それも汗びっしょりで。

「おはよう。待たせたかな」右手で汗を拭いながら晃が言う。

「おはよう。どうしたの、その汗。調子でも悪いのか」僕は心配げに声をかけた。そして晃の返事に驚いた。

「歩いて来た。時間どおり着いたな」

「はあ? お前んちからだと二時間はかかるよ! ホワイ、なぜに? 」僕は呆れたよ。ダイエットでも目指しているんだろうか。

「俺は体力には自信があるんだけどな。でもこのメンバーでドラムスってのは、もっと体力が必要だと感じて来たんだ。これからも続けるぜ」

「俺のようなドラムスコとは大違いだな」

「あははは。今のはいいね! やっぱり沢田は面白い! 」春人は前屈みになって大笑いし始めた。僕はまた背中が寒くなった。誰でもいいから沢田を止めてくれ! 

「おっと時間だ。入ろう」沢田が僕たちをスタジオに入るように言った。久しぶりのAスタジオだ。他のBやCと違って機材が豊富だ。ローランドのジャズコーラスが二台、マーシャルアンプが二台あり、ジャズアンプは珍しいメサ・ブギーだ。ドラムセットはこれまた珍しいTAMAでシンバルもタムもしっかりと揃っている。

「最初はいつもどおりSMOKYから行くよ」沢田の一声で練習が始まった。元々、この曲は僕は得意だったが、以前に比べて一層好きになっている。それはパーフェクトゼロで演奏するようになって、自分でもわかるほど上手く弾けるようになっていたからだ。やはり練習は嘘をつかない。その後、オリジナル曲の『真夜中に吠える』コピー曲の『ALL AROUND ME』を演奏した。これもチャーの曲だ。チャーの曲が多いのは沢田の意向が強い。沢田が好きなギタリストはジェフ・ベックとエリック・クラプトン。チャーが尊敬するギタリストがこの二人だったからだ。まだまだ僕は練習しなければいけないとつくづく思う。続けて先日出来上がったばかりのオリジナル曲『山猫』を演奏した。

 この曲は山猫という渾名(あだな)の老いたブルースマンが若いギタリストに、お前さんは悪魔に魂を売ったロバート・ジョンソンを知っているかと問う。若者はもちろん知っているさ、古典だよとせせら笑う。老人も笑う。お前さんは何もわかっちゃいない。お前さんが弾いているその曲は、ロバートの曲だよ。みんな、みんな古典を弾いているのさ。俺もその一人さ。古いバーボンはいつの時代でも新しい、というような内容だ。僕はまだアルコールを飲んだ事がないので、イメージだけで作り、沢田が好みそうなブルース色がとても強い曲にした。ペンタトニックが欠かせないフレーズでコードだけで作った僕には難しい。難なく弾いている沢田に負けてたまるか!

 この曲で気を良くした沢田は、僕の好きな一曲をコピーに選んでくれた。クイーンの『Tie your mother down』だ。クイーンの中ではヘヴィな曲だ。ブライアン・メイが作詞作曲で、ヴォーカルのフレディ・マーキュリーのキーで僕が歌えるかどうかが決めてだった。腹式発声が必須で、春人がコツを教えてくれた。そのおかげで声が届くようになり、パーフェクトゼロの持ち曲になった。

 これらの曲を一通り練習し終えると田が床に座り、僕たち三人も円陣を組むように座った。沢田は作戦を練る司令官のような口調で言った。

「九月の学園祭でステージに立つよ」

「いよいよ来たか。待ってたぜ」晃が両手を合わせて指をポキポキと鳴らした。

「ほう、大きく出たな。腕がなるよ」春人はニヤリとして僕の顔を見た。

「えっ、キサ学のステージはレベルが高いって聞いてるよ! 」僕だけが声を張り上げた。

 これはF県の高校生なら誰でも知っている。如月学園の学園祭は『暁祭』といって、まさしく夕方から夜明け前までが一番盛り上がる。その間、一番の目玉は野音のライヴで零時過ぎまで行う。県立高校ではあり得ない、私立高校ならではの学園祭だ。初めてのライヴとしてはかなり大胆な選択だぞ。みんな分かっているのか。そんな僕の表情を見て沢田が言う。

「一颯、不安そうだね。俺たちのデビューは華やかにいこうよ。なあ、みんな! 」

「俺は燃えるぜ」晃が淡々と答える。

「俺もさ。先輩連中に一泡(ひとあわ)吹かせてみたいね」春人はいたずら小僧のような顔だ。なんだあ、この三人の自信ありげな態度は。沢田と春人は上手いよ。晃はとっても腕を上げている。でも僕は歌作りに軸足を置いていたので、ギターも歌も三人と比べてそんなに腕が上がっていない。ヤバイよ、ヤバイよ。某芸人の口癖が出そうになった。これが大事な話か。マジ大事だよ。

「あと五十分あるよ。もう一度アタマからやるよ」沢田の指示で練習を再開した。僕はこの三人に付いて行くのがやっとだ。『山猫』の演奏が終わった途端、沢田から(ゆる)い叱責を食らってしまった。

「一颯、メリハリが全然効いてない。お前が作った曲だ。もっと愛情を持ってやってくれないか。折角いい曲作ったのに」

「ごめん。何かビビってるかもしれない」

「時間はまだある。お前なら大丈夫だぜ。宿題が気になるなら毎日でもいいから家に来いよ」晃が僕を勇気づける。

「そうそう。作詩作曲ギターヴォーカル。大変なのは俺たちみんなわかってるさ。焦るなよ」春人もリラックスさせてくれる。うーん、メンバーの優しさに泣けてくるわ。

「じゃあ、山猫、最初っからな」また沢田の合図で演奏を始めた。曲に愛情を込めて弾いて歌う。そうするとみんなの音がハッキリと聞こえてきた。沢田のギター、春人のベースと晃のバスドラ。とても気持ちがいい。コードG、コードC、コードDの沢田のペンタトニックが心地よい。

「今のでオッケー。この調子で行こう」沢田は満足そうに言った。僕も同じ気持ちだ。微々たるものだけど自信がついた。

「じゃあ、みんな。次回の練習日までみっちりトレーニングしてくれ。頼んだよ」沢田の終了の言葉で僕たちはスタジオを後にした。


 終わったー。これも晃のおかげだ。七月中に宿題を済ませられるとは思ってもみなかった。晃の教え方はとってもわかりやすい。数学にしても物理にしても、理屈がわかれば面白い。僕は元々、文系は得意なほうだ。なんたって読書も趣味の一つだからね。

 中学生では日本SFとミステリを好んで読んでいた。偉人の伝記も好きだしね。昔の人のパワーは凄いよ。小松左京、眉村卓、平井和正、筒井康隆の素晴らしい発想と転換! 東野圭吾、宮部みゆき、恩田陸、伊坂幸太郎等々、よくこんな小説を書けるよね。二度読み、三度読みした本たちは、すべて友人に配っている。だって古本屋さんに売りに行ってもほとんどが五円、十円の世界でなおかつ、本の扱いが雑だ。本たちが可哀想になってくる。それなら読書好きな人々に持っていてもらった方が本も嬉しくないかな。本棚に残っている文庫本は、何回読んでも新鮮な物しか残っていない。その代わりCDが積み重なっている。聴きたい曲だけネットで購入してもいいんだけど、何て言えばいいのかなあ。そう、アルバムコンセプトを堪能(たんのう)したくて毎月の小遣いの半分はCDに消えていく。

 そう言えば、パーフェクトゼロのコンセプトはどうだろうか。沢田と春人のテクは言うまでもなく、メキメキと力をつけてきた晃のドラム。やっている曲は、チャー、クイーンのコピーにオリジナル曲。クイーンについては僕の好みなんだけど、練習している五曲の中では浮いている感が強い。この辺りはリーダーの沢田に本心を聞いておくべきかもしれないね。でもとにかく今は課題曲の練習に没頭すべきだ。春人に教わった腹式発声も完全に自分の物にしないといけないし。焦らず日々の努力が必要だって事は十分に承知しているよ。


 八月の十日過ぎ。ちょうどお盆の前に、毎年恒例の如月市の花火大会がある。これが市民ならずも他市からも高い評価を受けている。僕は小学生の頃に両親と行ったきりだ。何故? 決まっているだろ。だって中学生になると同級生の半分はカップルなんだもんな。親友の晃も年上の彼女と一緒に行ってしまう。中学二年では当たり前の事なのか? 僕が幼いだけなのか? どっちにしろガールフレンド付きで歩いている友人を見た中学一年生の記憶が蘇り、それっきり花火大会には行っていない。

【花火大会に行くよ。メンバー全員集合! 欠席不可】

 はあ、何のつもりだ、沢田の奴。僕だけ彼女がいないのに、こんなラインを送って来るなんて。

【行かない】

速攻でラインを返してやった。行くわけがないだろう。何で僕がお邪魔虫にならないといけないんだよ。とても不愉快だ。するとすぐにスマホが鳴り響いた。着メロは『Johnny.B.Goode』だからメンバーの誰かだ。予想通り沢田だ。

「はい、行かないよ」

「そっけない真似するなよ。今年は男子会だからな」

「男子会? 益々、行く気がなくなったよ。じゃあね」

「ちょっと待てよ。大きな花火を見て大きな気持ちになる。そして音楽のインスピレーションを高めることが必要だ。これは俺たちのためでもある。いいな」

「言ってる事が意味不明。花火とインスピレーションの関係がよくわかりません! 」

「強情な奴だな。これはバンド活動の一環だ。本気だよ」

「バンド活動の一環? 本当だよね」

「そう、本当だ。花火大会は毎年混むから、昼の一時に現地集合だ。いいな」

「はいはい。わかりましたよ。それだったら真剣に花火を見るよ。ひらめきがあるかもしれないしね」

「そうそう。遅刻はダメだよ。花火だけに音が遅れるってな」

「はあ? 全然 










  


 




 


 


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ