空戦 08
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しかし。
その刃は相手の機体を真っ二つにはせず。
カズマのジャスティスはその攻撃を右手に持った刀で受け――
――左手でヨモツのジャスティスの腕を掴んだ。
「……はっ」
それは一瞬の抵抗だと思えた。
持った所で上昇も出来ず、しかもこちらが武器を少し振り回しながら上昇や移動すればすぐに振りほどけるのだ。
だからヨモツも気にせず、一笑に付した――のだが。
『――捕まえた』
相手から聞こえたその声に、ぞっ、と背筋が凍る思いをした。
強がりであると分かっていても、その声はヨモツを一瞬恐れさせるのには十分だった。
だからだろう。
『ねえ、さっき言いましたよね、僕』
相手からの言葉に、思わずヨモツは問うてしまった。
「……何をだ?」
『僕以上にお前に対して恨みを持っている人がいるって』
だからどうした――と言う前に。
ヨモツはあまりの驚きに絶句した。
『後はよろしく――ライトウ』
その言葉と同時に、ヨモツの目はこれ以上ないとも言えるほど開かれた。
まるで目の前にある現象を精一杯、目では認めるかのように。
ようやく視認した。
ようやく気が付いた。
いつの間にか、相手の機体の上に人が立っているということを。
その姿は知っている。
サムライ ライトウ。
クロードと並んで有名な顔ぶれ。
ジャスティスを破壊できる刀を持つ青年。
魔王と違って特殊能力ではなく、刀が特殊だと言われている。
跳躍力も人間離れはしているが、決してはるか上空まで跳べる人間ではない。
だが彼は現にここに――空にいる。
――どうしてここに?
――そもそもどうしてこの高度で無事なのか?
様々な疑問が脳裏に瞬時に浮かぶ。
しかしそれが口から出る前に――
ライトウの刀によって、ヨモツの機体が真っ二つに斬り落とされた。




