交渉 11
全てが露見していた。
全てが剥がされた。
国民にも秘密にしていた事項。
ルード国のジャスティスは悪だと教え込んでいた。
メディアも丸め込んでいた。
知っていたのは軍事部門関係者と上層部の一握りだけ。
故に、あっさりと発見できるような事項ではないはずだ。
本当にどんな魔法を使ったのだろうか、と疑いたくなる。
しかし、もう既にそこを後悔した所で遅い。
言い訳をしても仕様がない。
ではどうするか?
王として選択を強いられる。
真っ先に二つの選択肢が頭を過る。
一つ。
クロード達を殺害する。
彼らの口を塞げばこの事実は隠ぺいできる。
隠したままに出来る。
だが、すぐに否定される。
あまりにもメリットが少なく、デメリットが多いからだ。
まず、クロード達がどこまでこの事実を知らせているかに確証がない。
次に、殺害すると確実にこちらに不利なことがあると誰もが知ることとなる。
そもそも殺害できるとは思えない。
相手はジャスティスを破壊する存在だ。
加えて、誰にも知られることなくこの城に単独で侵入してくる存在だ。
得体が知れない。
これが彼らに抱いている王の感想だ。
故に彼らに反意を示すつもりも、反抗もするつもりもない。
ではどうするか?
それが残る二つ目。
惨めでも。
哀れでも。
愚かでも。
それでも、彼が取るべき行動は《《ただ一つだ》》。
「クロード殿!」
――ダン、と大きな音を立てて、机が横に薙ぎ払われる。
飛んでいく勢いが強すぎて大臣の一人に当たったが、知ったことではないと彼は行動を継続する。
これは怒りからではない。
プライドを抑えての行動だが、八つ当たりでもない。
必要であることだ。
そして。
ウルジス王は真正面にクロードを見据えながら告げる。
「――大変申し訳ありませんでした!」
彼に向かって頭を下げた。