交渉 03
◆
「なっ……」
ウルジス王は開いた口が塞がらなかった。
執務室。
ただのウルジス王の仕事場としての役割以外にも、謁見や会談をテレビカメラを入れて行うこともあるのでかなり広い部屋となっている。
奥にある広めの机と、そこにある派手な椅子――金や銀で編まれた刺繍が掛けられており、赤い背もたれがその煌びやかさを修飾しているモノが大いなる威圧感を与えている。
これは派手すぎる、とウルジス王は苦々しく思っていたのだが、王の威光を示すからそのままにしてくれという副官からの要望があり、そのままにしていた。
そして、その机と椅子の前に置かれる椅子は、来客のランクで決まる。
同等の椅子が置かれることがあれば、質素な椅子が置かれることがある。
最低ランクは決まっている。
何もない状態。
座ることすら許されない。
その前に立つのはウルジス国に不利益を被らせた者だけ。
奇しくも。
ウルジス王が先のフレイとの会話から士気を少し高めて意気揚々と業務に取り掛かろうと扉を開いた瞬間から、彼は成っていた。
――《《椅子の前に立つ》》、《《一介の人間に》》。
椅子には、ウルジス王以外の人物が座っていた。
明るい色に対照的な黒色の衣。
それを纏った、まだあどけなさも残っている少年。
隣にスーツ姿の見覚えのある銀髪の女性を携えているが、メインは完全にその少年だろう。
少年の風貌にも見覚えがあった。
資料では見ていた。
だが、実際には初めて見た。
だから動揺が隠せなかった。
「何故ここにいるのだ……っ!?」
黒衣の少年――クロード・ディエル。
ずっと先だと思っていた彼との邂逅が、予期せぬ早さで実現してしまった。