海戦 14
◆
勝った。
海軍元帥に勝利した。
自分の力で。
その事実について、カズマは全く気にしていなかった。
彼の頭の中はただ一つ。
「コズエ!」
相手を真っ二つにした。
だが、コクピットは無事なはずだ。
落ちた上半身の方に駆け寄り、コクピットを開く。
操縦席にはブラッドの姿。
そしてその横に、両手を縛られているコズエの姿があった。
「コズエ!」
ジャスティスの力を使って、コズエにダメージを与えないように縛られている鎖を引きちぎる。
その後、カズマはジャスティスのコクピットから飛び出した。
そして、何度も転びそうになりながら、彼女の元へ駆け寄る。
「コズエ! 大丈夫か!? コズ――」
カズマは言葉を失った。
両手が縄で拘束されているコズエ。
顔面蒼白で唇も紫色になっている。
その両頬に手を当てる。
――冷たかった。
「待って……嘘でしょ……何で……?」
カズマの黒目が大きく揺れる。
目の前の事実を受け入れられていない。
「ねえ……嘘だと言ってよ……コズエ……?」
耳元を彼女の口元に寄せる。
……息をしていない。
「なあ……なあ……おかしいでしょ……こんなの……」
カズマはへたり込む。
受け止めなくてはいけない。
でも受け止められない。
抱えている彼女の身体はひどく軽かった。
こんなに軽かったのか、とカズマは思った。
まるで、魂が入っていないから軽いのだと、事実を突きつけているように。
抱きかかえている彼女から、徐々に体温が失われるのが分かる。
認めるしかない。
認めざるを得ない。
「何でだよ……コズエェェェェェェェェッ!」
カズマの慟哭が海上に響く。
コズエ。
幼い少女。
だが、とても賢い少女。
彼女はカズマの腕の中で、まるで眠っているかのような安らかな表情のまま――
息絶えていた。