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エピローグ 03
◆
アドアニア、中央病院。
少女がテレビ画面を眺めている。
その後ろ姿を、彼女の母親は心配そうに見つめている。
と、少女が口を開く。
「とんでもないことになったね」
感想。
無味感想。
少女は淡々とそう感想を述べた。
「あんた……」
「ん? 何、お母さん?」
少女は純真な瞳で母親を見る。
「個人が世界を相手に戦争を売るってね。物騒な世の中になったね」
「そうじゃなくて……」
「ふふ。変なお母さん」
少女は無垢な笑顔を見せる。
「魔王はジャスティスしか破壊しないんでしょ? ならば、普通に暮らしている私達には手を出さないよ。魔王を退治するのは、軍の人のお仕事だよ」
「あんた、まさか……覚えていないの?」
母親は信じられないという表情で彼女の眼を見る。
彼女は真っ直ぐに母親を見返すと、首を傾げて紅髪を揺らす。
生死を長い間彷徨い、つい先日に目覚めたばかりとは思えないような屈託のない笑顔を母親に向けて。
――マリーは答える。
「お母さん。この人と知り合いだったの?」