希望 05
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「――どうしました?」
「すすすすみません! 今すぐに――」
「責任者を出しなさい! 今すぐに! 返してよ! あたしの娘を! 娘をどこにやったの!? 連れ去った娘を返して!」
「ああ、そういうことですか。――君、僕が対応しますから下がっていいですよ」
「あ、でも元帥の手を煩わせるわけには……」
「……元帥だって!?」
「ええ、そうですよお姉さん。自分がその責任者ですので、応接室で少しお話を――」
「あんた! あたしの娘をどうしたのよ!?」
「すみません、少しだけ静かにしてください。
――カルラ・ミュートさん」
「……あんた、どうしてあたしの名を?」
「えっと……この場所ではあまり大きな声では言えないので手短に断片的に……すみませんがマリーはどうしても助け出せませんでした。彼女があの場でもう一度俺と会う為には、このような形でなくてはいけないようです」
「何を言って……というかあんた一体……」
「ああ、すみません。明確に言えません。だけどこう言えば判りますかね?
――『お母さん』」
「っ!? あんた……まさか……っ!?」
「察しが良い女性はいいですね。でも貴方なら分かるでしょう。俺のお母さんを知っている『お母さん』ならば、こういうことも可能だ、ということも」
「そうだけど……でも……」
「――さて、その点も含めてお話ししましょう。
貴方もゆっくりと休むべきです。
静かな土地に旅行なんてどうですか?
まあ、旅行と言うには少し長すぎですけれどね――」