希望 03
◆
ルード本国。
とあるホテルの一室。
(……やはり、か)
携帯型のテレビを見ていたコンテニューは、眼を瞑った。
(見た者は気がついたのだろうか? あれは魔王に操られている訳ではなく、アリエッタが自分の意思でジェラス大佐を殺したってことに……いや、そもそも魔王に操られているということすら気が付いていないかもな)
ここまで上手くいっていたものだと、客観的に見て思った。
完全にアリエッタが裏切ったようにしか見えない。
ただ、ジェラス大佐は撃たれていた。
「あーあ。どうだろうね、これって。でも、あれだよなあ」
記憶の通り。
そのままだ。
少年は真正面を睨み付けるようにして呟く。
「……変わらないな」
客観的には、事柄は変わっていなかった。
ジェラスがアリエッタに撃たれ、アリエッタはクロードの配下で裏切ったかのように全世界に放送された。
それはクロードの記憶と同じ状態。
だが、重要なのはそこだけではない。
過去と同じ状態。
しかし、確認しなくてはいけないのだ。
そう。
――過去を変えずに未来を変えることが出来たのかどうか、を。
過去を変えられない。
それは誰の所為とも仕業とも知らない、条件も曖昧なまま過去に戻される事象があるから。
それはかなり厳しい条件で、制限されていて、先に進むこと――正解となる行為が自身の望んだ通りにならないこともあった。
だから表面上は何も変わらない。
だが――コンテニューは発想を転換させた。
彼は死んだのか?
彼女は死んだのか?
何故、そのように言えるのか?
心臓を拳銃で射抜かれたから?
ジャスティスを破壊されたことで命を吸い取られたから?
息をしていないから?
心臓が止まっているから?
体温が低かったから?
青い顔をして微動だにしなかったから?
――それがどうした?
心臓に辿り着く前に弾丸が何故か消滅したら?
息をしなくても酸素が全身に行き渡っていれば?
仮死状態として生命活動を密かに維持していたとしたら?
そのように――変化させたら?
クロードであり、コンテニューの能力で、そのように見せかけることが出来る。
表面上は。
赤い液体のように、コインに自身の一部を仕込めば、遠隔だって可能だ。
お守りに入れても。
――どんな形だって。
だって言っていたじゃないか。
出来る、と。
そう、彼が言っていたのだ。
コンテニューが言っていたのだ。
だからきっと――いや絶対、出来るはずだ。
自分が――コンテニューであるならば。