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Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第六章
227/292

ライトウ 06

 最初は目の前の光景について信じられなかった。

 弾かれた方向について目線を移動させてしまっただけだったのに。

 その目に映ったのは、振り下ろしたにも関わらずに上方向に浮いてきている、自身の右腕だった。

 右腕だけが持ち上げられている理由も視認できた。

 キングスレイ。

 真横から剣を当てて軌道を逸らした彼は、反発した勢いで残った剣を上に振り上げたのだ。その攻撃は弾かれて開いてしまったライトウの右肩に入り込み、斬り飛ばした。

 そこまで一瞬で理解した。

 理解出来てしまった。

 まるで他人事のように。


(――俺の負けなのか……?)


 興奮状態の為なのか、痛みはない。

 実感もない。

 だけど現実として、ライトウの右腕は自分から斬り離されている。

 何だか意識も遠くなってきた。

 結局。

 重きを置いた一撃は防がれてしまった。

 それだけは事実だ。

 防がれてしまって、これ以上の攻撃は出来ない。

 だから自分の負け――


 と、目を閉じそうになった――その時だった。


「!!」


 ライトウは気が付いた。

 目の端に移っていた、ある光景を。

 自分の右腕。

 飛来しそうになっている右腕。


 その右腕が――()()()()()()()()()()()()()()()



 ――まだ俺は負けちゃいない。



 そう右腕が伝えてきたような気がした。

 自分の腕なのに。

 自分の腕だったのに。

 だからこそ、それは自分の意志なのだ――とライトウは思い直す。

 まだ負けていない。

 右腕は吹き飛ばされた。

 ――いや、違う。

 吹き飛ばされている――途中、だ。

 ライトウはまだ刀を握っている。

 つまりはまだ、今、この瞬間には――



 ()()()()()()()()()()



 ――刹那とも言える数瞬の判断だった。

 ライトウは自身の身体を反時計回りに回転させる。

 反時計回り。

 すなわちそれは――『左手が上にあがる』ということだった。

 全神経を左手に集中させる。

 力も集中させる。

 失敗するわけにはいかない。

 一度だけ。

 一度だけしかないのだから。

 必ず掴み取る。

 文字通りに――勝機を。


「――あああああああああああっ!!」


 雄叫びを上げながら、一回転した彼の左手はしっかりと捉えた。

 離さない。

 絶対に離さない。

 薄れていきそうな意識を覚醒させるかのように歯を食いしばって、何とか左手の中に収める。


 そう。


 ――浮かび上がる途中であった自身の右腕を。


 掴んだ右腕。

 その先には刀。

 回転した勢いも加えて、上部からの叩きつけるような攻撃だ。

 その攻撃に、キングスレイも反応が出来なかったようだ。

 咄嗟に背部に回避行動をしようとする。

 だけども彼は直後――ハッと目を見開く。

 先と同じように回避しようとしたのだろう。

 だがしかし――ライトウの攻撃は先とは違う。

 だからあまりにも避けるまでが遅かった。

 間に合わなかった。


 ライトウの刀のリーチは――右腕の分だけ増えていたのだから。


 きっと予想だにしていなかったのだろう。

 まさか自分の右腕を持って斬るとは。

 正にその攻撃は、有言実行。


 ()()()()()()()()()()()()()()


 ――その刀がキングスレイに届く直前だった。

 叫んでいたから気のせいかもしれない。

 意識が途切れそうだから幻聴かもしれない。


 それでも。

 ライトウは確かに聞いた。



「――見事」



 ――次の瞬間。

 キングスレイの左胸から鮮やかな鮮血の花が咲いた。

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